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大寒の雲間


「マスター、開けてくれ、俺だ」

「マーロ? 帰ったんじゃなかったのか?」

「帰るったって、寮の門限はとっくに過ぎてるんだ。 出来れば、こっちで一泊したいんだけど」

「そうか、それじゃ、泊まっていけ。ティシアに追い出されて災難だったな。 『夜も遅いから早く帰んなさいよ』って、戸口から押し出されて」

「ああ、『何なら送っていってあげるわよ』なんて。街の女の子じゃあるまいし。
まあ、あれで気を遣ったつもりなんだろうから、いいけど。
…ティシアは、部屋に帰ったのか?」


「ああ」

「えらく静かだな…大丈夫かな」

「心配か?」

「…まあな」

「もしかして、ティシアの様子を見に戻ったのか? なら気にしないで上にあがって…」

「違う違う、寮の門限過ぎてるって言ったろ!  今頃、管理人は、鍵掛けて眠ってるから、起こすのも面倒じゃないか。
それに、俺はまだ冒険中って事になってるんだから、外泊したって問題はないしな」


「なにムキになってるんだ」

「別にムキになってるわけじゃ…!」

「(語るに落ちてるな…)顔色もアレだし…酔ってるのか、マーロ?」

「…あ、ああ、多分。…酔ってる、絶対に酔ってる。 アレだけ飲んだら、酔うに決まってる」

「そりゃな…それでも、ティシア四分の一も飲んではいないがな」

「ああ、あいつには驚いたな、あれだけ飲んで、顔色一つ変えないんだから」

「全くだな。火竜並の胃袋だ」

「けど、あの騒ぎ方はすごかったよな…やっぱりちょっとは、酔ってたのかな」

「そりゃ、あれだけ飲めばな…。おれは、あんまり飲ませないようにって、かなり気を使ってたのに、 お前ら平気で飲ませおって」

「俺だって飲ませないようにしてたぜ。アルターとロッドが無神経なんだ。
…ティシア、もう、眠ったかな」


「多分な」

「悪酔いしてないだろうな…でなきゃ、騒いだ反動で落ち込んでたりとか…」

「そんなに気になるんなら、上がって、確かめてみるか?」

「この時間に? 女の子1人の部屋へ行けってか? 
アルターじゃあるまいし、そんなデリカシーの無いこと出来るかよ!」



これも改題しました。「大寒の幕間」…も、気に入っていたのですが、天候で統一しました。
どちらにしても、幕間的エピソードです。
内容も加筆しました。…あっさり書きすぎて、書きたいことが分からなくなってしまっていたので…。
ここのマーロは、女の子友達のことなど、死んでもクラスメートや寮の男連中には知られたくないんです。


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