あれは、「正義」の花言葉を持つホタルブクロが、薄紫のやさしい花を吊り下げる、7月半ばのことだったケロ。
「かえるクン、見つけたよ!」
冒険から帰ってくるなり、ティシアはそういったケロ。
「うん、下の酒場で言ってたの、聞いたケロ。竜の手がかりを見つけたんだケロ?」
ぼくはそういいながら出迎えたケロ。
「そうなの! ま、ただの噂だけどね。…あー、暑い」
ティシアはそう答えながら、窓を全開にしたケロ。
「夕方の風は、気持ち良いケロね」
ぼくは、吹き込んでくる風に思わずコロコロとのどを鳴らしたケロ。すると、ティシアは遠くを見ながら、
「冒険先の村は水もきれいで冷たくて、風ももっとずっと気持ちよかったんだけどなぁ…」
「幻の渓流魚が棲んでるくらいだケロ、夏はさぞ気持ち良い所ケロね」
ティシアは今回、その幻の魚を探しに行っていたんだケロ。
「でもね、竜が棲んでいるって噂の湖は、もっともっと水がきれいなんだって。
あれ以上きれいな水なんて、ちょっと想像できないけど」
「すごくいい所みたいケロね…」
ぼくは一生懸命その湖を思い浮かべながら言ったケロ。
するとティシアは、突然窓から空を見上げて、独り言のように言ったケロ。
「…そんなきれいなところにいる、やさしいって言う青い竜が…何であたしにのろいなんかかけたのかな?」
「え? ティシアをのろったのは、その竜なんだケロ?」
「だって、ラドゥがそう言ってたもん。あたしに関係あるのは、青い竜なんだって」
「…そうケロか…でも、ティシアは、のろわれるような子じゃないケロ。きっと何か深いわけがあったんだケロよ」
「うん。あたしもそう思う。あたし、すごく善良で正義感あふれるタイプだし」
…自分で言うと、すごくうそっぽく聞こえるケロ…。
「でも、ひょっとしたら、あたし、うっかり何かとんでもないことやらかしちゃってたのかもしれないわね」
「うーん…そうかもケロ」
「わざと」じゃなくて「つい」何かやったって事ならありえるかも…と、ぼくも思ってたケロ。
「でもね…もし、かえるにされたのは仕方なかったとしても…それでも、アレだけは許せないな」
ティシアは、ぐいっとこぶしを握ったケロ。
「アレ…ケロ?」
「あたしの記憶を消したこと…それと、あたしを、かえるの姿のあたしじゃ無くて、
全然別の何も知らない大ボケがえるにしちゃったって事よ…
あたしが何したか知らないけど…そんな酷いことしていいわけ、無いわよ!」
ティシアは、握ったこぶしを宙高く振り回したケロ。
「ああ、早く竜に会いたい! 会ったら、絶対文句言ってやるんだから!」
そう叫ぶティシアのよく澄んだ薄い青の瞳が、なんだか妙に必死に見えたケロ。
誰かに怒ってでもいないと、不安なのかもしれないケロ。…ふっと、そんな気がして、ぼくは
「早く竜に会えるといいケロね」
心から、そういったケロ。
なぜ、主人公が気のいい青い竜に呪われる羽目になったのか…プレイ中、私自身がずっと気になっていました。
で、早めに竜と出会い、過去のおのれを知った結果、呪いを解くべきかどうか悩む羽目になる主人公
…なんて展開を予想してみたり。
だから、この先の展開は予想外で楽しめました。
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