コロナでは、一月一日だからと言って何かあるわけではないケロ。いつもと同じ日常が続くだけだケロ。 それでも、この日の朝が来ると、日の光さえなんとなく新鮮に見えるのだから不思議なものだケロ。 「あけましておめでとう! いい天気になったわね」 「おめでとう! ホント、一年の始まりにぴったりの気持ちいい天気だケロね。今年もよろしくケロ!」 今年の新年は、朝一番、寝巻きのままのティシアと新年の挨拶を交わしたケロ。 それから、ティシアは着替えもせずに部屋を横切って、隅に積んである少しばかりの家財… 物入れの木箱に向かったケロ。 ぼくは気になって、荷物をひっくり返しているティシアのそばに跳んで行ったケロ。 「何やってるケロ?」 ティシアは、底の方から布の包みを引っ張り出して、それを広げて見せたケロ。 真っ白な、真新しいシャツだったケロ。 「今日はね、行事も何もないっても、一応一年の節目だもん。 新しいシャツをおろそうと思ってとっといたんだ…あ!」 と、シャツの間からちっぽけな紙の包みが転がり出てきたのを、慌てて受け止めて、 「でさ、コレは、かえるクンに…かえるクンは、服は着ないけど、これ、寝るときにどうかなって」 「え?…あ、ありがとうケロ」 ぼくはびっくりして包みを受け取ったケロ。 広げると、中からはちっぽけな毛糸編みの靴下とナイトキャップが出てきたケロ。 「寝るとき、つま先が冷たいでしょ? これから、もっと寒くなるし、良かったら、使ってよ。 …ルー先輩に教わりながらやったんだけど、あんまり編物って得意じゃなくてね…」 ぼくはぼうっとなって、口をあけたまんま、目をしぱしぱさせるばかりだったケロ。 十二月に、長いことスラムの酒場に入り浸ってた理由は、コレだったんだケロ…。 「…ちょっと作りが荒いかも。…あ、でも、やっぱり、こんなものは使わない?」 ティシアが気がかりそうに覗き込んできて、ぼくはわれに帰ったケロ。 「よ、喜んで使うケロ! あ、ありがとうケロ!」 今年はいい年になりそうだケロ。 …願わくは、来年もティシアと明るく新年の挨拶が交わせますように… |