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ドーソンの毒舌


「待っていたぞ、この瞬間を…」
滑らかな低い声が、広間に滑り込んできました。

荒れ果てたお城の大広間…かつて神竜おわせし国、フロスティの王城の鏡の間であった場所。
そこに、遠い昔に砕け散り、世界中に散った鏡のカケラ…白い神竜の偉大な力を司る鏡のかけらが、 ようやく全て集まったところでした。

鏡のカケラがそろえば、神竜は蘇り…そして、ドーソンから呪いを解いてくれるかもしれないのです。
ドーソン・トードとその仲間たちは、3月最後の日になって、ようやく失われた神竜の鏡の最後のカケラを手に入れ、ここまで来たのでした。

やっとのことで全てそろった新竜の鏡に、フロスティの過去の情景が映っていました。
それを、一同が一心に見入っていた…その背後から不意に、宿敵…神竜の鏡を狙う男・リザリアが入ってきたのです。
両脇には、2人の忠実な手下…ダークエルフのジェフとゾーラを従えて。
その声には、誰もがすくみあがってしまうような迫力がこもっていました。

…が、ドーソン達は、その声を聞くより早く、完全な臨戦体制をとってリザリア達に向き合っていました。
最後の鏡を手に入れたときからすでに、奇襲を予測して、ずっと警戒を続けていたのです。
その油断ない様子に、さすがのリザリアも広間に入ったところでぴたりと歩みを止めざるを得ませんでした。

「やっと来たか」
ドーソンが、ヤレヤレ、と言わんばかりの様子で口を開きました。
「待ちくたびれたぞ、まったく…。
全てのカケラがそろったところで、俺たちを倒して神竜の鏡を手に入れようというのだろう?」

言うべきせりふを先回りされて、リザリア達は一瞬言葉を失いました。
ドーソンは言葉をついで、
「お前にしては上出来の策ではあるな…だが、襲い掛かるタイミングが悪すぎる」
と、馬鹿にしたように肩をすくめました。
「おまけに、わざわざ声までかけてくれるとは。親切なのか馬鹿なのか…
いっそこのまま鏡を渡してしまって、お前らにどの程度の事が出来るか見てみたい気がするな」

ドーソンの二人の仲間…吟遊詩人のミーユと神官のレラは、顔を見合わせました。
しかしドーソンはそのまま言葉を続けて、

「鏡が復活するまでのこの数十年、お前は何をしていた? 
資金源の一つに、それなりの組織と魔物の軍団くらいは配下に収めていてもよさそうなものを…
お前にあるのは、単純な戦闘力しかない手下がたった2人だけではないか?
その程度のおつむに、神竜の力が加わったところで、世界の覇者なぞ夢のまた夢だな」

「ええい、言わせておけば…!」
ジェフが、ダークエルフの黒い肌を通してもわかるくらい顔を赤くしてどなりました。
ゾーラも、目を真っ赤に怒らせて詰め寄ってきます。
「騒ぐな」
その2人を制して、リザリアがゆらりと進み出ました。
その全身から、陽炎のような闘気が吹き上がって、鎧に覆われた巨体が何倍にも大きく見えました
。 「自らの格を心得ぬがゆえの虫けらの戯言など、気に留める必要はない」
…そういうリザリアの声も、押さえきれないマグマのような怒気を含んで、地響きのように震えていました。

ドーソン達は、思わず後ずさりしかけて…鏡に背中をぶつけそうになりました。
「怒らせてどうするんですか」
「あなたのおつむなら、うろたえたふりをして油断を誘うくらいできそうなものだけど?」
ミーユとレラの、鋭い囁きに、ドーソンが、
「その、なんだ…怒りに我を忘れている方が、せこい手はききやすかろう…」
と、何とか平静を装った声を返しかけたとき…

「無駄口を叩いているヒマはない。
神竜が現れるとやっかいなのでな。早速、カケラを頂くとしようか…!」
リザリアは、不気味なほど無表情な口調でそう宣言すると、2人の手下と共に一気に襲い掛かってきました。


白龍編のラストシナリオで感じたツッコミを、ドーソンに代弁させてみました。
まあ、最後のシナリオまで他のルートと同じ形で進めざるを得ないので、ストーリーが不自然になるのは致し方ないとは思いますが…。
申し訳ないけど、私にはリザリアさんラスボスと言うにはせこい小悪党のイメージです。
せめて天下を揺るがす反乱軍か暗躍する秘密結社のボスぐらいにはなってて欲しかった…。



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