白龍編・目次にもどる


晩秋の紅茶


ドーソン「今夜は、静かだな」

かえる「ケロ…」

ドーソン「どうやら、秋祭りも一段落か…」

かえる「ケロ。昨夜までは、あっちでもこっちでも、何かやってて、賑やかだったケロ。人間って、ほんとにお祭りが大好きケロ」

ドーソン「そういうおぬしも、毎日あっちに行き、こっちに行きで、結構たのしんでいたろうが」

かえる「ケロ」

ドーソン「祭りが終われば、いよいよ冬支度も大詰めだな」

かえる「ケロ。人間は、いつもせわしないケロ」

ドーソン「まったくな。だが、おぬしも冬の支度は大変なのだろ?」

かえる「ぼくは、ここに住んでれば、それほどでもないケロ。ドーソンは、忙しいケロ?」

ドーソン「ああ、冬服と冬の装備を一通りそろえておかねばならんからな。面倒でたまらん」

かえる「なんだ、その程度ケロ…」

ドーソン「言ってくれるな。
…しかし、俺の冬支度はもう半分終わってるからな。それに今日、冬にあらま欲しきモノも一つ、見つけることが出来た」

かえる「あらま欲しきモノ? 何ケロ?」

ドーソン「紅茶の友、だ」

かえる「ケロ?」

ドーソン「寒くなると、香りのいい熱い紅茶は実にいい物だ。だが、茶は、一人で飲んでもつまらんものだからな…紅茶飲み友が、ぜひとも欲しかったのだ」

かえる「ケロ。で、誰なんだケロ?」

ドーソン「うむ。今日、研究所に寄ったら、レラが茶をご馳走してくれてな。
これが、香りのよいいい葉を使っているし、入れ方もなかなか上手い」

かえる「ケロ。そう言えば、レラも紅茶好きみたいだケロね。休憩するときは、よくお茶を飲んでるケロ」

ドーソン「しかも、とことんシンプルな白いカップで出してくれるセンスがいいし、何より、アルコールランプとフラスコで湯を沸かすのが、実に風情があっていい。
それに、ストレートに茶だけ出してくれたのも、実に気に入った。ゆったり茶を楽しむのに、ごてごてと余計な甘い菓子なぞ、いらんからな」

かえる「ケ、ケロ…」

ドーソン「そんなわけで、すっかり嬉しくなってしまってな。また、茶をご馳走してもらう約束を取り付けた。今度は、ビスケットなぞつけてくれるそうでな…シンプルな菓子も、またよいものだ。
これからは、研究所には、ちょいちょい茶を飲みに寄るつもりだ」

かえる「ケロ…。寄りすぎて、迷惑がられないように気をつけるケロよ」

ドーソン「うむ。おぬしに言われるまでもない。その辺はおぬしより心得ている。心配はいらん…なに、茶を一人で飲んでもつまらんのは、先方も同じだ」

かえる「…ケロ…」


ドーソンは年齢不詳…にしといた方が、レラとお茶を飲むシーンなど、様になる… と、思うのは私だけでしょうか?
秋の夜。かえるくんを相手に、大きなマグで熱い紅茶を… というのも、ちょっとやってみたいべに龍です。



白龍編・目次にもどる
このページの先頭にもどる