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8月の小さな話


スラムの酒場にて。マノンと

「ち、ちょっと、マノン!」

「なんだ、コリューン?」

「黙って見てていいのか? 年頃の一人娘が、「泳ぎに行こう」なんて、素性の知れない男を誘ってるんだぞ!」

「素性の知れないって…おまえのことじゃないか。
おまえなら、大丈夫に決まってるだろ。
いつぞや、ルーの猫がいなくなったときなぞ、ルーに向かって『親父にとって、娘はどれだけかわいいか』 について、一席ぶったそうじゃないか。
もっと親父を信頼しろとかなんとか言って…。
まるでおまえ自身が、娘とごたごたやってる親父みたいだったってな」


「あー、うん、あの時は…そんなことも言った…かな」

「そんな奴相手に心配してどうする」

「う…まあ、そりゃ、そうだけど…」

「ほら、とっとと行って来い。
若いくせにあまりオッサンくさい事を言ってると、嫌われるぞ」



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