(前略)
…………
かくて、ついに両者、相対せり
こなた、街と己の運命を負うて、仲間とともに攻め来たり
かなた、偉大なる竜たる己が威信をかけて迎え撃つ
古のドワーフどもが、鍛えに鍛えた斧の刃は氷のごとく
歳古りた竜の鉤爪は磨きぬかれてさらに鋭し
彼方より、赤き竜嘲れど、勇者ども、答えず
三者ただ、つむじ風のごとく迫り来れば、
飛ぶがごときその勢いに、竜も驚きて身構えたり
先鞭をつけたるはルー、飛燕のごとく身軽く
仔らを守る狼のごとく獰猛に
竜の赤きあごの下にてトンボを切りたり
流星のごとく飛び込みしはレティル
宙を噛む竜のわき腹に、鋭き刃つきたてり
コリューンは、聖なる光に疾風の素早さを授かりければ
後ろより、竜の腰へと飛び乗れり
竜、振り向くより速く、その翼、斧に裂かれて咆哮せり
赤き竜、必殺の爪振り下ろせども
ただいたずらに岩をうがつのみ
勇者ども、勢いづくも
赤き竜、頑強なること岩山に勝りけり
戦いは、いつ果てるともなく続きたり
コリューンの斧、幾たびと無く竜を打ち
竜の爪、幾たびかコリューンを掠りたり
鱗はくだけ、鎧は破れ、血潮は流れて岩は染まりたり
無限と見えにし、竜の生命
その強きこと人の子には、及びもつかず
赤くそびえる生ける山の、果てる事なき岩の力に
聖なる守りもきたえし技も、幾たびも空しくならんとす
されど勇者には、頼もしき仲間有りき
仲間より投げられし神の薬の芳香に、コリューン再び奮い立つ
赤き竜の、最後の激しき怒りは、山の頂きを砂塵と化したり
されど、いかに狂おうともはや勇者を倒すあたわず
死と炎の運び手、赤き竜フレイスもついに力尽き
不意に地を震わせて倒れ、その体、長く横たえたり
…………
(後略)
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