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決戦は近日


その1・アルター

「おい、コリューン。もう三月も下旬だぞ」

「ああ、そうだね、アルター」

「そうだねって…お前、他人事みたいに。赤いドラゴンと戦うんだろ!?」

「うん。ロンダキオンが直ったら、ぼちぼちと…ね」

「おいおい、のんきだな…とにかく、その時には絶対、オレを呼んでくれよ!」

「んー…それなんだけど…」

「おい、まさかオレを連れてかないなんてことは、ないだろうな?
オレとお前の仲じゃねぇか!」


「…ごめんよ。正面切って戦うときに、君がすごく頼りになるのは分かってるんだけど… 前回は、正攻法だけでやって失敗したからさ、今回は、搦め手からの攻撃もいれようと思ってるんだ。
 だから、君にはもしものときに備えて…」

「なに言ってんだよ! またの機会は、もうないんだぜ!」

「それだからこそ、君に後を頼みたいんだよ。君になら、安心して背後を任せられるんだから。
…そりゃ、こんな機会は二度とないかもしれないけど…そこのところを頼むよ、僕と君の仲じゃないか」


その2・リュッタ

「赤いドラゴンだって…なんか、すごいことになっちゃった…」

「まったくだね、リュッタ。半年前には、夢にも思ってなかったのに」

「コリューン、ロンダキオンが直ったら、赤いドラゴンをやっつけに行くんだろ?」

「ああ、そうだよ」

「ドラゴンなんて、なんだかおっかないけど、コリューンならきっと、絶対、負けないよ!」

「ありがとう、リュッタ。君がそう言ってくれると、間違いなく勝てそうな気がするよ」

「…ねぇ、コリューン」

「ん?」

「おいらも、コリューンの手伝いがしたいなぁ…」

「ありがとう、気持ちはうれしいよ。
 もし、赤いドラゴンと『話をつけに』行くんだったら、僕のほうからお願いしてるところさ。 君の、機転と技を貸して欲しいって…でもね」

「でも?」

「今回のは、もっと野蛮な仕事だからね。奴を殴り倒すのが目的なんだもの。
だから、君は、街で吉報を待っててくれないかな」

「うん、分かった…。でも、みんなのために、おいら、おーえんしてるからね!」


その3・ルーとマノン

「…でさ、ロッドが言うには、三月の末の日に、ロンダキオンが仕上がるって。
だから、僕はその日に、ドラゴンと決着つけるつもりなんだ」

「そうなんだ…ねぇ、コリューン、あたし、思うんだけどさ」

「なんだい?」

「あたしも手伝ったげよっかなって。 …足手まといかも、知れないけどさ…ねえ、ついて行っても、いいよね?」

「もちろん。実は僕のほうからからお願いしようと思ってたんだ。ぜひ君の、盗賊の力を貸して欲しい」

「ほんとーにいいの?  あたし、みんなの足を引っ張ってるんじゃないかって、いつも心配だったんだ」

「とんでもない! 今までだって、君がいてくれて、どれだけ助かったことか。
なんせ、僕は馬鹿力だけが取り得の戦士だろ? 正直、器用に何でもこなせる君がうらやましいよ」

「ほんと? あたしがんばるねー!」

「赤いドラゴンねぇ。やっぱり、お前なんかじゃ、足手まといじゃないのか、ルー?
コリューン、本当にいいのか?」


「もう! あたしだって、パパが思っているほど子供じゃないよ!」

「そうとも。赤いドラゴンは、でかいくせにかなり敏捷だけど、ルーなら決して遅れをとったりしない。 他の誰よりも、助けになってくれると思うよ」

「そうか…
だが、くれぐれも、おれを悲しませるようなマネは、してくれるなよ。
コリューン、頼む」


「うん。心配させることになって、すまない。最善を尽くす。誓うよ。マノン」

「そんな、真剣な顔して深々と頭下げなくってもいいよ、コリューン。 あたしが自分でついて行くって決めたんだから!」


その4・宿がえる君

「もうすぐケロね…」

「ああ」

「ぼくは、ここで応援することしか出来ないケロも…がんばるケロよ。 でないと、のろいが解けなくなっちゃうケロ」

「大丈夫さ。負けたら、ドラゴンの餌だもの。呪いなんかどうだってよくなってるよ」

「…冗談じゃないケロ」

「冗談だよ。…でもさ、のろいが解けたら、僕の歳は、どうなるのかなぁ?」

「歳…? やっぱり、気になるケロ?」

「そりゃ、もちろん。やっぱり、十年分老けてるのかなぁ…うれしくないなぁ。でも、老けてないのも、やっぱりちょっと…」

「何か問題があるケロ?」

「その間が、『無かった事』になったらさ、折角憶えたかえる語も忘れちゃって、君と話が出来なくなるかも…それは、嫌だもんなぁ」

「そうケロね…でも、それは、無いものねだりというものかも知れないケロ。 でも、どうしても気になるんなら、ラドゥに相談してみたらどうケロ?」

「知りたいけど…知りたくないんだよね。どーでもいいちゃあ、どーでもいいことだし。
それにラドゥ様は、クライマックスに向けて何だか盛り上がっちゃってるし…」



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