「…と、言うわけで、盗まれた歌も戻ってきて、めでたしめでたし」 冬の日。冒険から帰ったばかりだった僕は、いつものように宿のかえる君に、土産話をしていた。 「…で、そのとき、冒険中に作ったその歌を歌ったんだ。 大勢のプロの吟遊詩人の前で、赤っ恥って気がしたけど、ミーユが勧めるモンでね。思い切って歌ったんだよ。 …こんな歌なんだけどさ」 僕がそっとその歌を口ずさむと、宿がえる君は、ニコニコと耳を傾けた。 「聞いての通りで、歌詞はありきたりでこっぱずかしい代物だし、曲は、その辺から借りてきた節だろ? もう恥ずかしくって。 でも、それが、なぜか大受けに受けたんだ。 …たぶん、みんな気を使ってくれたってのも、あるだろうけどね」 「でも、コリューンは戦士だけに、肺活量があるケロ? 声もなかなかいいケロし、お世辞だけじゃないと思うケロよ」 僕は、首を振った。 「…そうかな? さっき、下の酒場でリュッタにも聞いてもらったんだけどね。『ヘタウマ』って、言われちゃったよ」 「リュッタ、遠慮が無いケロね。でも、聞いてとっても楽しくなるとも言ってたケロ?」 「なんだ、聞こえてたのか、恥ずかしいなぁ」 「…それに『曲が一風変わってて面白い』とも言ってたケロ」 「それが分かんないんだよなぁ…あのメロディー、すごく有名じゃないか。 僕なんか、どこで聞いたのか思い出せないくらいなのに」 と、僕は、首をひねった。 「あの曲なら、ぼくもよく知ってる曲ケロ。 でも、リュッタやミーユは知らないと思うケロ」 「え、どうして?」 「分からないケロ? あの曲の、元の歌詞はこうケロ…」 宿がえる君は、ニコニコして言って、かえる語で歌いだした。 「ケロ、ケロケロ、ケーロ♪ ケロ、ケロケロ、ケーロ♪ …これで、分かったケロ?」 「あ、そうか! 『好きだ、好きだ、君のことを愛してる』って… これ、春のかえるの恋歌じゃないか!」 「どうしたケロ、コリューン? 急に真っ赤になって」 「恋歌って分かったら、どうしようもなく恥ずかしくなっちゃったよ… かえるの姿では、一度も歌ったこと無かったのに!」 「やれやれ。変な所で、純情ケロね、コリューン」 |