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十月の小さな話


その1.冒険者宿にて 宿がえる君と

「♪フン、フンフンフン〜♪フン♪フンフンフン〜♪」

「コリューン、ずいぶんご機嫌だケロね。何かいい事あったケロ?」

あ、分かるかい?
 ふふふ、今日、ラドゥ様の神殿にうかがったんだ。
そしたら、僕に呪いをかけたのは赤い竜だって、教えてくださったんだよ」

「それが、そんなに嬉しいことなのケロ?」

「そうとも。赤い竜ったら、凶暴な暴れ者だって事だからね」

「その竜と戦わなくちゃ、いけないケロよ?」

「うん、でもさ、そんな奴なら、理由もなく人を呪うことだってあるだろう。
 これが、気のいい青い竜とか、気高い白い竜とかに呪われたんだったら、 どうして呪われちゃったんだろう、なんて悩まなきゃならない所だよ。
 記憶が戻ってみたら、実は僕は大悪党でした! とか…、オークとかダークエルフみたいな邪悪な種族とか… 最悪の場合、モンスターでした!…なんて事だってありうるじゃないか。
 でももう、そんな心配は、全然、ちっとも、一切、全く、必要ないんだ!!」

「…コリューンの考え方って、時々変わってるケロね」



その2.トルテの実の冒険にて リュッタと

「ねえ、コリューン」

「なんだい、リュッタ?」

「コリューンって、この春までかえるだったんだろ?」

「『だった』じゃなくて、今でもそうだよ。臨時に、魔法で人間の姿になってるだけだからね」

「じゃさ、さっき出てきたうわばみ…怖くなかったの?」

「そりゃ、僕を一飲みにする程、でかくはなかったもの。
リュッタは知らないだろうけどね、かえるってのは、大きい蛇には食われちゃうけど、自分より小さい蛇は、獲物にしちゃうんだよ」

「げ、それじゃ…」

「なんて顔してんだよ。今は味覚も人間だぞ。…あんなの食べたくないよ!」


その後。リュッタとマーロと

「ねえ、リュッタ」

「なんだい、コリューン」

「君、トウガラシ嫌いだったんだね…残念だな」

「どうして? コリューンは、あんなものが好きなの?
 辛いばっかりで、ちっとも美味しくないじゃないか!


「辛いけど、ウマいんだよ。辛いから、ウマいんだよ!
 トウガラシたっぷりの料理を、一緒に食べにいけないなんて、残念だな。
 あの辛味の奥にあるウマさが分からないなんて、気の毒だなぁ…
 君、結構、味覚はお子様なんだね」

「ふんだ! わからなくったっていいよ、そんなモノ!
 かえるが、辛いのが好きだなんて、知らなかったよ!」


「あああ…そうか、かえるに戻っちゃったら、もうアレは味わえないんだなぁ。
…よし、燃えてきた! 意地でもドラゴンに勝つぞぉ!!」

「…思ってたより変だ、こいつ…」

「なんか言った、マーロ?」

「…いいや」



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