その1.冒険者宿にて 宿がえる君と
「♪フン、フンフンフン〜♪フン♪フンフンフン〜♪」
「コリューン、ずいぶんご機嫌だケロね。何かいい事あったケロ?」
あ、分かるかい?
ふふふ、今日、ラドゥ様の神殿にうかがったんだ。
そしたら、僕に呪いをかけたのは赤い竜だって、教えてくださったんだよ」
「それが、そんなに嬉しいことなのケロ?」
「そうとも。赤い竜ったら、凶暴な暴れ者だって事だからね」
「その竜と戦わなくちゃ、いけないケロよ?」
「うん、でもさ、そんな奴なら、理由もなく人を呪うことだってあるだろう。
これが、気のいい青い竜とか、気高い白い竜とかに呪われたんだったら、
どうして呪われちゃったんだろう、なんて悩まなきゃならない所だよ。
記憶が戻ってみたら、実は僕は大悪党でした! とか…、オークとかダークエルフみたいな邪悪な種族とか…
最悪の場合、モンスターでした!…なんて事だってありうるじゃないか。
でももう、そんな心配は、全然、ちっとも、一切、全く、必要ないんだ!!」
「…コリューンの考え方って、時々変わってるケロね」
その2.トルテの実の冒険にて リュッタと
「ねえ、コリューン」
「なんだい、リュッタ?」
「コリューンって、この春までかえるだったんだろ?」
「『だった』じゃなくて、今でもそうだよ。臨時に、魔法で人間の姿になってるだけだからね」
「じゃさ、さっき出てきたうわばみ…怖くなかったの?」
「そりゃ、僕を一飲みにする程、でかくはなかったもの。
リュッタは知らないだろうけどね、かえるってのは、大きい蛇には食われちゃうけど、自分より小さい蛇は、獲物にしちゃうんだよ」
「げ、それじゃ…」
「なんて顔してんだよ。今は味覚も人間だぞ。…あんなの食べたくないよ!」
その後。リュッタとマーロと
「ねえ、リュッタ」
「なんだい、コリューン」
「君、トウガラシ嫌いだったんだね…残念だな」
「どうして? コリューンは、あんなものが好きなの?
辛いばっかりで、ちっとも美味しくないじゃないか!」
「辛いけど、ウマいんだよ。辛いから、ウマいんだよ!
トウガラシたっぷりの料理を、一緒に食べにいけないなんて、残念だな。
あの辛味の奥にあるウマさが分からないなんて、気の毒だなぁ…
君、結構、味覚はお子様なんだね」
「ふんだ! わからなくったっていいよ、そんなモノ!
かえるが、辛いのが好きだなんて、知らなかったよ!」
「あああ…そうか、かえるに戻っちゃったら、もうアレは味わえないんだなぁ。
…よし、燃えてきた! 意地でもドラゴンに勝つぞぉ!!」
「…思ってたより変だ、こいつ…」
「なんか言った、マーロ?」
「…いいや」
|