月のきれいなある秋の夜、コリューンが交わした小さな会話たち。 その1.冒険者宿の一室 コリューン 「今日の月は明るいね!」 宿がえる 「そうケロね。きれいな満月だケロ」 コリューン 「見て、ランプを付けた部屋の中より表の方が明るいくらいだよ。こりゃ、屋根の下にいるのはもったいない」 宿がえる 「そう思う人は他にも結構いるみたいケロ。今夜の大通りは、人通りが多いケロ」 コリューン 「よし、僕も一つ出かけてくるかな。…君も、来るかい?」 宿がえる 「や、ぼくはここから外を見てる方がいいケロ」 コリューン 「そっか…。それじゃ、行ってくるよ」 宿がえる 「行ってらっしゃい。…その紙袋は何ケロ?」 コリューン 「うん、ちょっとね」 その2.大通り コリューン 「ほんとに明るい月だなぁ。本が読めそうだ」 …どんっ! コリューン 「わっ、す、すみません!」 アルター 「いや、こっちこそ…って、なんだ、コリューンか」 コリューン 「おや、アルターだったのか。君も、月に浮かれて出てきたクチかい?」 アルター 「いや、オレは夜回りのバイト」 コリューン 「へえ、ご苦労様。それじゃ、一緒に月見酒ってわけにはいかないか」 アルター 「ああ、残念だが。こんないい月夜になるって分かってりゃ、仕事なんか入れなかったのによ」 コリューン 「仕方ないね。…それじゃ、また」 アルター 「おう、気を付けてな!」 その3.広場の真ん中 ルー 「あら、コリューン。こんばんは。いい月ね」 コリューン 「やあ、こんばんは、ルー。今頃、どこに?」 ルー 「ギルドの用事でちょっと…ね。コリューンは、こんな所に突っ立ってどうしたの?」 コリューン 「噴水がきれいだから、見ていたんだよ」 ルー 「ほんと、月の下の噴水って、きれいね。でもどうしてもっと近くで見ないの?」 コリューン 「だってさ…噴水のすぐ横に、カップルが二組もいるんだもの」 ルー 「なるほどね…コリューンらしいわ。それじゃ、私、急ぐから」 コリューン 「うん。若い娘が月光を浴びすぎると良くないっていうから、早めに帰りなよ」 ルー 「…その話、どこで聞いたの? ちょっと年寄り臭いわよ、コリューン」 その4.広場の片隅 コリューン 「あ、リュッタ! いい月だね」 リュッタ 「やあ、コリューン! ほんと、きれいな月だね!」 コリューン 「リュッタもお月見?」 リュッタ 「うん! …コリューン、何食べてるの?」 コリューン 「焼き栗。こんな明るい月を見ているとね、僕はなぜだか、無性に栗が食べたくなるんだよ」 リュッタ 「変なの!…でも、もしかして、それって、かえるになる前の記憶のせいなのかな?」 コリューン 「そうかもね。…リュッタも食べる?」 リュッタ 「もちろんだよ!」 その5.…半刻後、再び広場の片隅 カリン 「こんばんは、コリューンさん、リュッタさん」 コリューン 「こんばんは。カリン」 リュッタ 「いい月だね!」 カリン 「ほんとにきれいな月ですね。こんなに明るい月は、初めてです」 コリューン 「僕は、2度目だな」 リュッタ 「へえ、1度目は?」 コリューン 「うん…いつだったのかな…うーんと高い山の上で見たんだ。 足下に雲海が広がってて、それが一面銀色に光って、そりゃあきれいだったよ」 リュッタ 「もしかしてさ、それも、かえるになる前の話じゃない?」 コリューン 「そういや、そうだ…今年は、そんな所には行ってないもんな…。 なのに、ふっと思い出せちゃったよ。月って、不思議だな…」 カリン 「そうですね。月には不思議な力があると、おばあさまも良くおっしゃいます」 リュッタ 「ところでさ、カリンも栗、食べない?」 カリン 「いいえ、私は結構です…。でも…」 コリューン 「でも?」 カリン 「食べた後、皮はちゃんと拾って持って帰って下さいね」 コリューン 「………ハ、ハイ…スミマセン」 今まで何度もきれいな月は見てきましたが、その中でも印象に残っているものの一つが、 月下の雲海です。 芋名月にサトイモを食べたことはあっても、栗名月に、栗を食べたことはないので… 一度やってみたいです。 …なんてことを色々思っていたときに、投稿図書館に素敵な月のお話が載ったので、触発されて 書いたお話が、これです。 |