5月2〜6日  5月19日 5月25〜27日

*5月2〜6日*

5月2日(水曜日)

 仕事を終え、雨の中を鳳来湖に向け出発する。時刻はもう、22時に近かった。
途中、名神の渋滞もあって、滋賀県に入ったのは0時を過ぎていた。
突然、睡魔に襲われ草津PAで仮眠。

5月3日(木曜日)

アプローチは遠かった

 目が覚めると1時半だった。
起きてしばらく走るが、やはり疲れと眠気には勝てず、養老SAでシートを倒して寝る。

 目が覚めると、もう7時半。慌てて出発する。
しかし、名古屋の手前から大渋滞に突入。
ゆっくりでも動きつづけるならいいのだが、動いたり止まったりの繰り返しで、
かなり時間のかかりそうな渋滞だ。
思い切って、名古屋ICで降り、下道で鳳来湖を目指す。

 有料道から国道を走り、設楽町まで来た。
カーナビの誘導によると、鳳来湖キャンプ場へ山道を通って直接行ける
ハズだったのだが、これが大嘘。
その道の交差するあたりまで来たが、その道らしきものはヤブが被さり、
人が通るのもままならないほど荒れていた。
もちろん、車が通れるはずもない。
仕方なくそのまま大回りで、鳳来湖の北側を通り、やっと鳳来町に入った。
鳳来湖に近づくにつれ、山腹に岩肌が見える。
それまでの苦労のドライブも忘れ、いっそうアクセルを踏み込む。

 乳岩峡の駐車場には寄らず、小滝橋の駐車場に向かう。
すると、すでに車が2台止まっている。
これはもう、乳岩峡の駐車場が一杯なんだと思い、
ここに駐車し乳岩峡に歩いて向かう。
・・・しかし、遠い。
2キロはありそうだ。ザックを背負って歩くと20分近くかかった。
そして、乳岩峡に着いて唖然。。。
駐車スペースはガラガラだった。
クライマーの車は3台くらいしか止まっていない。
朝まで雨が降っていたせいだろう、観光客も少ない。
時刻はもう13時半。

まねき猫へ

 気を取り直して、岩場へ向かう。
とりあえず、近い「ひょうたん岩」へ向かう。
しかし、ここは11台の後半からしかないので、さらに上の「まねき猫」を目指す。
まぁ、まねき猫でも11bからなのだが・・・
トポに書いてあるアプローチにかかる時間は25分だったが、
なんの、たっぷり40分はかかった。
これなら「がんこ」に行けばよかった・・・

 あまり時間がないので、最初のルートに取り付く。
前述したようにアップのルートはないので、
いきなり「れまんさる 5.11b 」に取り付く。
トポを見るとボルトは5本だが、下から見ると少なくとも8本は確認できる。
それにかなりルートも長い。20M以上ありそうだ。5本のわけがない。。。
ヌンチャクを11本持って登り始める。
 出だしはけっこう大きいホールド。
そして、中間は細かいホールドとポケット。
ボルト間隔もけっして近くはなく、緊張する。
さらに緊張感を増してくれるのが、久しぶりに触れる凝灰岩。
石灰岩のエリアで登ることが多かったので、戸惑ってしまう。
そして、最後のハング下へ。
ハングは1M以上張り出していて、高度感もたっぷりだ。
ホールドを良く見極め、核心部に入る。
リップ部分のガバを掴んだところで、一瞬足ブラになる。
気分は「M:i−2」のイーサン・ハント♪
すぐに左足をヒールフックしハングを越える。
越えたところがすぐ終了点。
「鳳来」は初日の1本目からエキサイティングなムーヴで出迎えてくれた。

 ヒロコにトップロープする?と聞いたが、ムーヴを見て登る気が失せたようだ。
しばらくレストし、三ツ星の「御大家 5.11b 」にトライする。
核心の細かい部分はマジでやばかった。
完全に本気モードでなんとかオンサイト。

鳳来湖キャンプ場へ

 初日だし、時間も5時近かったので、あまり登っていないが、下山することにした。
薄暗い道を下り、乳岩峡へ。
私が一人で小滝橋まで車を取りに行き、荷物を積んでキャンプ場へ向かう。
キャンプ場の管理人は仙人みたいなおっちゃんだった。
何も聞いてないのに、
「あそこに東京のクライマー」、
「あれは島根のクライマー」と教えてくれた。
島根なら間違いなく阪井さん達だろうと思い、そのテントの横にテントを張る。
テントを設営し、買出し&風呂へ行く。
新しい風呂屋が、ちょうどこの日にオープンしていたが、値段が100円高かったので、
ヒロコにあっさり却下される。
こっちのほうがキャンプ場に近くかったのだが・・・
「ゆーゆーアリーナ」がもっと遠かったらこの風呂屋にしていただろう。

 買い物をし、「ゆーゆーアリーナ」に行くと脱衣場で島根グループと会った。
これから味噌カツ定食を食い、キャンプ場に戻ると言う。
彼らと別れて、ゆっくり湯船につかる。
やっぱり広い風呂は気持ちイイ。
 長風呂のヒロコを待ち、キャンプ場に戻る。
飯のしたくをしてると、島根グループが戻ってきた。
しかし、手に手にコンビニ弁当を持っている。
飯屋が閉まっていて味噌カツ定食にはありつけなかったそうだ。

 明日は一緒に「鬼岩」に行くことにし、床につく。
長い一日だった。。。

<今日のまとめ>
・れまんさる   / 5.11b ・・・OS(M)
・御大家   / 5.11b ・・・OS(M)


5月4日(金曜日)

鬼岩も遠かった・・・

 7時半に起床。
みんなで朝食を摂り、乳岩峡へ向けて車で出発。

 小滝橋の駐車場がすでに車であふれていたので、上には行かずここに駐車する。
全員が歩くのもばからしいので、下っ端の横ちゃんが犠牲になり、
皆を乳岩峡の入り口までピストン輸送してもらう。
当然、横ちゃんは最後に一人で小滝橋まで車を駐車しに行き、戻りは徒歩・・・
ごくろうさんでした。

 さて、鬼岩までの歩き。コースタイムでは60分だったが、たっぷり80分はかかった。
荷物が多すぎる・・・次回はもっと軽くしなければ。

岩場に到着したのは11時半ころ。
近づくにつれ、鬼のツノのような岩塔が見えてきた。
想像以上にスケールのある岩だった。
きついアプローチでも来る価値はある!

 最初はアップに「あんこ 5.10b 」。ぐんぐん左上していくルートだ。OS。
ヒロコもトライするが、久しぶりのリードで調子がでないようだ。
途中でテンションして降りてきた。

次は「鬼岩入門 5.11a 」。
最初のボルトがかなり遠いが、プリクリップなしで登る。
快適な中間部だったが、核心は最後。
最後は真剣モードになり、OS。

 少しレストして「留年 5.11c 」にトライ。
スタートは「鬼岩入門」と同じだが、まっすぐ直上する。
核心は中間の左に移る部分。ライン取りが初見ではわかりづらい。
5、6回行きつ戻りつし、なんとか突破。
後はパンプをこらえて慎重に登り、完登。
ここまでは順調に登れた♪

 ヒロコが「あんこ」にトライし、あっさりRP。
怖がりさえしなければ、実力どうりもっと高グレードが登れるんだけどなぁ。

 レストを兼ねて、「ハイカラ岩」を見学に行く。
基部にギアはあるが、クライマーはいない。
傾斜は150〜160度くらいだろうか。
見る人を圧倒的する傾斜だ。
しかも、ルーフ部分の長さは想像以上だった。

暗がりの大洪水・・・

 戻ってきて、岩崎さんと一緒に「大洪水 5.11d 」をトライすることにした。
しかし、時刻はすでに5時近くなり、「がっかりエリア」はかなり暗くなっていた。
でも、ここまで来てやらないのももったいない。
 私が先にトライする。阪井さんや亮ちゃんも見に来た。
このルート、阪井さんですら2撃だったらしい。
「トポのグレーディングは5.11dだが、阪井さんは5.12aあるかも。
  これを一撃したらたいしたものですよ」、と言うので少し気合いが入る。
暗いから上部のホールドやスタンスは、はっきりと見えない。
登り始める・・・
 出だしからなんてパワフルなムーヴやねん!
赤本ではキョンを多用する、と書いてあるがそんなムーヴを考える余裕はない。
とにかくダイアゴナルで体を振り、登る。
そして登り始めて2本目のボルト・・・
の少し上であっさりテンション。
近くに、右手でガチっとかかるポケットや、大きなホールドがあるのに、
全然気が付かなかった。
 後はハングドッグで終了点までなんとか抜ける。
ロワーダウンすると、取り付きから7mくらい離れてる。
短いルートなのにスゴイ傾斜だ。取り付きから見上げるとよくわかる。
 岩崎さんも私とほとんど同じような登りだった。
ヌンチャクを回収してもらう。
次回は岩崎さんにヌンチャクを掛けてもらおう♪

 この日はこれで終わり、下山する。
スーパーで買い物をし、「ゆーゆーアリーナ」で一風呂浴び、キャンプ場へ。
この日は、ローストチキン、サラダスパ他豪勢な食事だった。
7人もいると食費も安い。一人300円くらいですんだ。
我が家の大蔵大臣・ヒロコは大喜びだ。
 明日は島根グループはレスト日。
私たちは「パラダイス」に行くことにした。

<今日のまとめ>
・あんこ   / 5.10b ・・・OS
・鬼岩入門   / 5.11a ・・・OS
・留年   / 5.11c ・・・OS
・大洪水   / 5.11d ・・・HD


5月5日(土曜日)

ロスト イン パラダイス・・・

 今日はツアー3日目。
さすがに疲れが出始めたので、軽めに登ることにする。
朝食は全員で。しかし、島根グループはレスト日にするそうで、
トランプを買ってきて、河原で「大富豪」をやるという。
夕食の買出しをお願いして、2人で出発する。

 栃の木沢の車止めの駐車スペースに車を止め、林道を終点まで歩く。
終点からまっすぐ山道に入り、そのままどんどん登る。
阪井さんの説明では、パラダイスに向かう踏み跡の分かれ道に
小さなケルンが積んであると聞いたので、ケルンに注意し歩く。
 歩き始めて「狛犬岩」はすぐに判った。まさに狛犬の形をしている。
そしてその先の「あねご岩」。 これがまったくわからんかった。
そのまま進むと、腐った木橋があり、新しく植林され、風景が開けてきた。
まわりにけっこう岩峰が見える。
 さらに進んだが、時間は登り始めて、もう1時間を過ぎていた。
アプローチ時間は40分。
これはいくらなんでも間違ってる。。。
振り返って、遠くに見える岩峰をミニ双眼鏡で覗いてみると・・・
クライマーがテンションしてる姿が見えた。
ショック!!
 仕方ないので、来た道を戻る。
植林帯を過ぎ、木橋を越えたところで、木に結ばれた小さな赤テープを発見。
ケルンは崩れてしまったようで、なかった。
後で聞くと、阪井さんは「樹林帯まで行くと行き過ぎ」と行ったそうだが、
「行き過ぎ」という言葉を覚えてなかった。。。
 そこから、岩まじりの急な稜線を登る。
道は踏み跡程度だが、なんとか判明できる。
途中、体長30センチほどのリスが私の前に現れた。
一瞬目が合ったがすぐにブッシュへと消えてしまった。
野生のリスを見るのは初めてだ。ホンドリスだろうか。
色は薄緑がかった茶色をしていた。
ヒロコに話すと、「今日はイイコトがあるよ」と言ってくれた。
 そして、駐車場から歩き始めて、2時間後、やっとのことでパラダイスに到着した。

 岩場にはすでに3パーティーがいた。
開拓者には失礼だが、最初の印象は「チンケ」。
高さもないし、ルートがいやに接近している。派生ルートも多い。
右端のルート2本は、上部の浮石のため登れず、ハンガーははずされている。
ちょっとモチベーションが下がった・・・

 最初は「ジャストミート 5.10b 」でアップ。
5.10a くらいに感じた。
ヒロコもつづいて登り、フラッシュ。

 次は「シャムロック 5.11a 」。特問題なくオンサイト。
 
 3本目は「花鳥山水 5.11b 」を登る。
核心は中間部の遠いホールドを左手で取るあたり。
左足のキョンが完璧に決まり、届くことができた。
上部は易しい。
体感グレードは5.11b/c くらいに感じた。

 この日、最後のルート「ポケット・ア・ゴー・ゴー 5.11c 」にトライ。
下部はたくさんあるポケットから有効なムーヴを探って登る。
核心はハング手前の一連のムーヴ。
正解のムーヴを見つけられず、フォールしてしまった。
HDでムーヴを固めて、ハングをのっこす。
最後はガバの連続だった。

 下山時刻もせまってきたので、10分だけレストしてすぐにトライ。
さっきやったばかりだったので、ムーヴは完璧。
あっさり2撃。
1回目でもっと粘れば、OSも可能だったと思うと悔しい。

 上がってきた道を戻り、15分で赤テープの分かれ道へ。
次に来る人のためにと、ヒロコと2人で小さくケルンを積む。
ここから10分強で林道、5分で駐車場まで戻る。

It's Show Time!

 テント場に誰もいなかったので、風呂に行く。
ゆーゆーアリーナで島根グループ発見。
これから買い物をして帰るという。
今日のメインディッシュは「なめこ汁」だそうだ。
 風呂からあがってヒロコを待っていると、ロビーではたくさんのクライマーを見かける。
なぜクライマーと一目で判るかというと、
来ている服がプラナやロープガンのシャツばかりだからだ。
つまり、ゆーゆーアリーナのロビーは、
クライマーのファッションショー状態なのである。
 多いのはやはりプラナ。続いてロープガン。ノースフェース、パタゴニアもたまにいる。
フランクリンは少数派。
ズボンはグラミチ。あるいはプラナ。ジャージもいなくはない。
私も、人のことは言えず、前日までプラナ、ロープガンだったが、
この日は日本人らしく「モンベラー」と化していた。。。

 キャンプ場に戻り、しこたま食いまくる。
鳳来湖最後の夜は怪談で盛り上がった。
寝る前のトイレはちと怖かったぞ。。。

<今日のまとめ>
・ジャストミート   / 5.10b ・・・OS(M)
・シャムロック   / 5.11a ・・・OS(M)
・花鳥山水   / 5.11b ・・・OS(M)
・ポケット・ア・ゴー・ゴー   / 5.11c ・・・HD
・    〃   /  〃 ・・・RP(2撃)


5月6日(日曜日)

最終日・・・

 今日で鳳来ツアーも終わる。
いつものように、みなで朝食を食べ、私たちだけテントを撤収する。
周りのキャンパーも、もういない。今夜は島根グループだけになりそうだ。
怪談をすれば、いっそう盛り上がることだろう。

 片づけを終了し、鬼岩へ向かう。
今日は駐車スペースがあったので、乳岩峡の入り口に止める。
 アプローチをボチボチ歩き、鬼岩に到着は11時頃。
岩場のメンバーも2日前とほぼ同じ顔ぶれだ。

 まず、アップに「姫のウォームアップ 5.10b/c 」を登る。
出だしは遠いがガバ。中間部までは良かったが、最後のほうがかなり悪い。
ちょっとやばかったが、なんとかOS。
5.10+くらいに感じた。

 今のでかなり張ったし、あまり時間もないので、「大洪水」をトライしに行く。
前回より明るさはマシだが、それでも暗い。
マスターで登り始める。
1本、2本と掛けて登り、3本目のクリップ。
今日はクリップホールドを変えてみる。
クリップは成功したが、そのあとの左へ移っていくムーヴで詰まってしまいフォール。
やっぱりマスターで登る負担は大きい。。。
後はHDで登り、ヌンチャクをセット。
レストして次のRPを狙おう。

 阪井さんは「ドント・ストップ・ザ・カーニバル 5.13a 」にトライ中。
核心手前のレストポイントまできれいなムーヴで登る。
 阪井さんのムーヴ、特にフットワークは素晴らしいの一語に尽きる。
私も彼のようなムーヴができるよう意識しているのだが・・・これがなかなか。
さて、登りに余裕があるのかなと思ったが、呼吸は荒い。
そして最後の核心部・・・
いけるかと思ったが残念、フォールした。
何度かムーヴを探り、降りてきた。5.13b以上あるのではと言う。
どっちにしても、私にはわからん世界だが・・・

 今日はもう帰る日なので、あまり時間がない。
30分だけレストし「大洪水」に再トライ。
 ムーヴはほぼ完璧に固めたので、 もう一度おさらいし登り始める。
問題の3本目のクリップもこなし、左へ移る。
ここで少しレストし、ガバからガバへ豪快に登る。
あいかわらず、キョンなんか出ない。
そして最後のレストポイント。右手のリング状のホールドでよく休み、最後のムーヴ。
右手の高い位置のアンダーから左奥の最終ホールドをガッチリ掴む。
体勢を安定させクリップ。
3度目のトライだった。
気分良くヌンチャクを回収する。

 メインエリアに戻る。
もう下山する時間が近づいてきた。ゆっくりレストしてるヒマはない。
15分ほどしか休んでないが、阪井さんが「卒業 5.12a 」登りますか?
と聞いてきたので、今から登ると答えた。
すると阪井さん、「藤城さんもそうとう(クライミングに)イカレテルなぁ」。
最終日でヨレヨレなのに、飢えたように登ってるから、そう見えたのだろうか。
まさか阪井教の教祖にそんな言葉を言われるとは・・・
自分では気付かないうちに重症になっているのだろうか?

プリクリップとは・・・

 下部は当然(1本目)プリクリップなしで登る。
慎重に登れば問題ない。
トポで「1本目は木でクリップ」と書いていれば、
そういうルートの設定なので問題ないが、
トポにその旨を書いてなければ、それはプリクリ不可ということだ。
この岩場で見ていたら、安易にプリクリする人が多い。
このエリアでは「鬼岩入門」、「留年」、「卒業」などが該当する。
もしこれらのルートで、プリクリで登り、RP(OSも)したとしても、
「完登」とは認められない。
これは初登者のスタイルが基本というフリークライミングの「ルール」の一つだ。
 話がそれたが、結局中間の小核心でフォール。
一段上がってレストし上部を登るが上の核心でもテンション。
最後は左上し、ガバのカンテを登って終わり。
ムーヴは一度やれば憶えるほどシンプルだが、ストレニなルートだ。
しかし、5.12a にしては登りやすいルートだと思う。
次回、またトライしてみよう。

 急いで荷物をまとめ、皆にあいさつする。
5月末の三倉岳での再会を約束して別れる。
ハイキング道を下り、乳岩峡に着いたのは16時45分。
17時に大阪に向けて出発する。
 今日はGWの最終日。
高速の渋滞は昨日がピークだったようで、
名神の吹田で降りるまで、一度も渋滞につかまることはなかった。
伊丹の自宅着は21時20分。

 晴天に恵まれた4日間だった。
鳳来は初めてだったが、さすがに岩のクオリティーは高い。
ただ、アプローチと生活の不便さ費用の点で、
そう何度も通える場所ではないと感じた。
その点では備中に軍配が上がる。
しかし、「今年中にもう一、二度は来てみたい」と思わせてくれる鳳来の岩だった。

<今日のまとめ>
・姫のウォームアップ   / 5.10b/c ・・・OS
・大洪水   / 5.11d ・・・HD
・ 〃   /  〃 ・・・RP (3撃)
・卒業   / 5.12a ・・・HD

 





*5月19日*

5月19日(土曜日)

笠形山の壁岩・・・

 今日は来週の三倉岳にそなえ、クラックの練習に「笠形山・壁岩」へ来た。
エリアは兵庫県の神崎町の「グリーンエコー笠形」という野外施設の上部の山腹にある。
敷地の一番上の駐車場に止め、テニスコートのすぐ横の杉林から登り始める。
 杉林に入ると、いきなり「マムシに注意!」の看板があり、いきなりビビらされる。
しかも、杉の枯れ枝がマムシみたいな色をしている。
さらにビビりながら、足元をよく見て歩く。

駐車場から見た壁岩
駐車場から見た壁岩

 道は明瞭ではないが、白とピンクのテープが
道しるべとなり、迷うことはなかった。
駐車場から約40分で岩場に到着。
壁の傾斜は・・・

「ねている・・・」

 駐車場から見上げる壁はかなり、立っているように
見えたが、実際は緩いところで60度、
上部のきつい部分で80度くらいだろうか。
岩はおそらく凝灰岩で、柱状摂理だが、
名張の「MCの岩場」ほど発達してはいない。
MCからクラックを減らして、ぐっと”寝かせた”感じだ。
岩場は南西向きで日当たりがいいが、
風がよく通るので気持ちがいい。

 まず、1本目に「マンモス 5.10b 」を登る。
象の鼻」と「象のひたい」をつなげて登ったら、
このルート名になる。

クラック・・・

 2本目は「象のしわ 5.9 」と「もだえ 5.11c 」をつなげるつもりで取り付く。
出だしはバランスのいる凹角。途中からフィンガークラックになるが、
ステミングで傾斜を殺せるので、それほど腕に負担がない。
セットの練習も兼ねてキャメロット、ロックスを多めに使って登る。
「象のしわ」をOSし、「もだえ」に向かう。
 「象のしわ」の終了点から「もだえ」の1本目のボルトは少しランナウトしている。
慎重に登りクリップ。そして、いきなりハング越え。
遠い両手のカチからハング上に立ち込む。
さらに上の小ハング。この辺りがバランシーなムーヴだ。
ハング上で足を入れ替え、次のホールドを探ってるときに、左足がスリップ。
そのままフォールしてしまった。
チクショー!
HDしてもう一度やると、あっさりクリア。
残念ながら、ワンテンでOSを逃してしまった。

「像のしわ」をTRで登るヒロコ
「像のしわ」をTRで登るヒロコ
 ラペルで「像のしわ」の終了点まで下降。
トップロープの支点をセットし、ヒロコが登る。
馴れないクラックに泣いていた・・・

 少しレストして、右隣の
さよならシティライフ 5.10a 」
にトライする。出だしはいやらしいスラブ。
左手でカンテを掴んで登る。非常にバランシーだ。
少し登ってクラックに入る。
左の側壁にフィンガーサイズのクラックが伸びる。
このルートもステミングで傾斜を殺せるので、
腕への負担は少ない。
登っていくと、ハングに頭をふさがれた。
ハングの左にオフハンドのクラックが走っている。
登る前、下から見て、キャメロットの2番が
合いそうだったので、1と2番を1個ずつ持って
いったのだが・・・そのクラック、実はフレーク状で
キャメのカムが2つしか効いていない。
残り二つは浮いた状態だ。
 フレンズの2番とキャメの1番をあーでもない、
こーでもないとセットしてたら、
フレークを掴む左手がんだんパンプしてきた。。。

「うわ、ちょっとやば。ムーヴは難しくはなさそうやけど、プロテクションなしで
   ここを越えるのは・・・」

 さらにしつこくカムをこねくり回す。
しかし、「クソッ、 カムが決まらん・・・」

もう、行くしかない。
グラグラのキャメロットを足元に残し、レイバックに入った。
左手でフレークを掴み、右手をカンテに伸ばす。
けっこう効きがイイ。
そのまま思い切ってロープを伸ばす。
数手登ると終了点にたどり着いた。
核心はハング下の部分だったが、精神的に辛かったのは上部だった。
「さよならシティライフ」をリードする筆者
「さよならシティ・・・」をリードする筆者

スラブの12a・・・

 次に取り付いたのは、誘惑 5.12a 」。
このルートは「アプローチ 5.8 」を登って、その先の
2ピッチ目になる。
通して登ろうかと思ったが、ヒロコにリードしてもらい、
「ツルベ」でやることにした。
しかし、ヒロコが馴れないスラブ登りに、
マジで泣きが入る。
レイバックのコツやムーヴを少し教えて、
なんとか登りきった。
これをフォローし、「誘惑」に取り付く。
フリーファンのコメントでは、「一手一手が核心、
辛くて涙が出る」とあったが、果たしてその通りだった。
2本目から上は各駅停車。
アナサジレースアップがルートに向いてなかったのか、
足にジンジンきて、痛みでモチ切れしてしまった。
ルートの後半はあきらめて、右の「不惑 5.11b/c 」に
逃げ込む。
 ここもワンテン入ったが、ムーヴは面白かった。
こんなことなら「誘惑」でなく、
中年クライシス 5.10c/d 」、「不惑」、「悟り 5.10b 」を
つなげた「人生航路 5.11c 」 をやればよかった。
45Mと長いルートなので、充実したことだろう。

 時刻が6時をまわったので、急いで荷物をまとめ下山する。
薄暗い踏み跡は、行きにもまして歩きにくかったが、30分で駐車場に到着。

 来週の三倉に向けての、クラックの練習をメインにするつもりで来たのだが、
どちらかというと、バランスクライミングのエリアだった。
今風の前腕がパンプするような傾斜ではなかったが、
久々に「足で登るクライミング」を堪能できた。

<今日のまとめ>
・マンモス(象の鼻+像のひたい)   / 5.10b ・・・OS (M)
・像のしわ   / 5.9 ・・・OS (M)
・もだえ   / 5.11c ・・・HD
・さよならシティライフ   / 5.10a ・・・OS (M)
・アプローチ   / 5.8 ・・・フォロー
・誘惑   / 5.12a ・・・×


参考資料・・・
フリーファン 29号・笠形山「壁岩」公開
「はりま山岳会のHP」の中のここ
パンプ大阪にもトポが貼ってあります。

 



*5月25〜27日*

5月25日(金曜日)

広島へ・・・

 週末のあわただしい仕事を片付け、定時に退社。
帰宅し、荷物を車に放り込む。
出発は20時30分。
阪神高速、第二神明、姫路バイパスと乗り継ぎ、国道2号線を倉敷の先まで走る。
山陽道の鴨方ICから高速に乗り、八幡PAで寝る。

5月26日(土曜日)

伝説の岩雪・・・

 6時30分起床。
洗顔をし、走り出す。
広島県の五日市ICで高速を降り、2号線を大竹市までひた走る。
大竹に入ったのが8時ころ。
休憩がてら、ヒロコのリクエストでNHKの朝ドラ、「ちゅらさん」を車のTVで見る。

 さて、もう一走りし、三倉岳県立公園に到着したのはジャスト9時。
島根グループとの待ち合わせ時間の10時まで、まだ1時間ある。
ギアの準備や写真を撮って時間をつぶす。
三倉岳休憩所のロッジで並んでいる「岩と雪」を見てたら、
なんと、あの72号があった。
表紙でジョン・バーカーがミッドナイト・ライトニングを登っている、あの号だ。
実際に見るのは初めてである。
中の連続写真も迫力があった。
これは1980年の発行、つまり今から21年も前になる。
そんな昔にV9、級段式でいうところの二段を登っていたのだ。
おれはまだ初段でさえ登れないというのに・・・

三倉のボルダー・・・

 10時過ぎにまず阪井さんが到着。
しばらくして、続々とメンバーが集まってきた。
まず、Bコース沿いにあるボルダーへ行く。
ここで、6級の課題でアップし、執拗なトライで3級の課題「目カンテ」を登る。
数日前の雨で岩が濡れていて、かなり苦労した。

 次は「胴乱岩」周辺のボルダーへ移動。
たくさんの課題で遊ぶ。
ここでは私が2本の課題を初登した。
どちらも4級くらいで、ルート名は「」と「鬼嫁」とした。
「丘」は一撃。「鬼嫁」は二撃だった。

 阪井さんは「」という初段の課題に執拗にトライ。
しかし、ホールドが濡れていて、なかなか完登できない。
チョークをまぶしたり、タオルで拭いたりして、状態を少しでも良くし、
何度も何度もトライする。
もちろん、私をはじめマスモッチや水ッチらもトライするが、歯が立たない。。。
そして、何度目かのトライだったろうか、私が少し離れたところで
他の課題をやってたら、「腰」のほうから大きな歓声が聞こえた。
慌てて駆けつけると、ボルダーの上に阪井さんが立っていた。
よく、こんな状態の悪い岩で登ったものだ。
まさに執念のなせる登りだった。

まさにモルモット・・・

 阪井さんとルートをやろうということになり、 2人で「源助」へ行く。
阪井さんは「ジャイアント・ステップ 5.12c 」をやるらしい。
私は無謀にも「モルモット・クラック 5.11a 」をやってみることにした。
「モルモット」の取り付きからルートを見る。
左上するフレアーぎみのオフハンドだ。
ギアを慎重に選択し、登り始める。
出だしにキャメの0.5を一つセット。
右手を高い位置でジャムし、足を上げる。
二、三手進みキャメの2番をセットする。
この辺からフレアーが大きくなり、ジャムが決めづらい。
懸命にジャムの効く場所をクラックの中に探す。
しかし、ぜんぜん効かん!
やはり、いきなりイレブンのクラックを登ろうなどと、無謀な考えだったのか。
自分の意志と無関係に両手のジャムが外れていく。
次の瞬間、キャメロットの岩に食い込む音が聞こえた気がした・・・
 自分でセットしたカムでフォールするのは初めてだった。
落ちそうになって、じんわりとテンションをかけたことはあった。
キャメロットは意外なほどすんなり、墜落を止めてくれた。
 このあともハングドッグしながら登ったが、もう少し上の核心部を越えることができず、
キャメロットを3個残置して、一度ロワーダウンした。

 このあと阪井さんの「ジャイアント・ステップ」のビレイをする。
ホールドが湿っていてかなり登りにくそうだ。
RPはできずに、HDで上部まで登り、降りてきた。

 「モルモット」はとてもリードできる代物ではないと悟ったので、
裏から終了点にまわり、TRでやることにした。
阪井さんでさえ、RPするまで10回以上トライしたそうだ。
しかし彼が言うには、「このクラックにはいろんなことを学んだ」そうだ。
三倉を代表するルートの一本だけのことはある。
いつかこいつをリードしたいものだ。
まず先に阪井さんがTRで登る。
さすがにノーテンできれいに登ってしまった。
次に私がトライする。
しかし、HDしまくりで、なんとか終了点までは行き着いた。
抜けるまで1時間近くかかったのではないだろうか。
時間も遅くなったので、「ジャイアント・・・」は明日回収する予定で、急いで下山する。
 今日はボルダーとクラックを2回登っただけなのに、体中がヘロヘロになった。
クラックの疲れ方は、やはりボルトルートとまったく異質のものだ。

やっぱり変人?・・・

 駐車場に戻り、全員で風呂と買出しに行く。
風呂に入って体を見ると、あちこち傷だらけで、赤く腫れていた。
特に手の甲はひどい状態で、ジャミングの下手さを物語っている。
しかし、不思議とそんな傷ついた体を見て、
今、自分はクライミングをしているんだと、ほくそえんでしまう。
クライマーとは、やはり変な人種だ・・・

 今回のメンバーは全部で13人。
キャンプ場で賑やかに飯を食い、ビールを流し込む。
就寝は何時だったろうか?時計をしてなかったので、何時だかわからない。
疲れから睡魔に襲われ、いつしかテントにもぐりこんだ。

 夜中、雨がテントを叩く音で目が覚めた。
「明日は天気が快復するんやろうか。
阪井さん、回収大変やろうなー。横ちゃんにさせるんかなー。
明日登るクラック、濡れてたらいややなー」
などと、頭の中でごちゃごちゃ考えながら、いつしか眠りについた。

<今日のまとめ>
・ボルダー   / 六級〜初段 ・・・初段以外は登れた
・モルモット・クラック   / 5.11a ・・・×
・  〃   /  〃 ・・・TR


5月27日(日曜日)

 朝起きると、雨はやんでいた。
薄日も差しているので、朝食を摂りつつテントを撤収する。

 今日は2パーティーに分かれ、阪井さんらは源助へ、
私たちは中の岳フランケへ向かう。  
青白ハングのすぐ上から左にトラバースし、かなり悪いアプローチをたどって
エリアの取り付きに着いた。

 今日は無理せず、5.9のクラックからやることにした。
右のほうの「入門クラック 5.9 」。岩崎さんがOS。
続いて私がフラッシュ。終了点はなく、岩角を利用してスリングを巻き、
TRの支点とした。

 次は「への字ハング 5.10c 」。
岩崎さんがリードで取り付くが、ハング越え部分でフォール。
けっこう派手に落ちた。
キャメロット1個で、あのフォールはかなり怖そうだ。。。
あとは、数度のテンションまじりで抜ける。
私は、自分の実力ではまだ無理と判断し、TRのセットをお願いする。

 下部はフィンガークラックを登る。
一応、ナッツとカムをぶら下げ、セットの練習を兼ねて登ることにした。
最初はフィンガーサイズのクラック。ややコーナー状を登る。
ハング手前まで、3つのキャメをセットした。
核心のハング下にはキャメの2番がバッチリ決まる。
思い切って越えようとしたが、抜け口でフォール。
リードするときはハング下で、プロテクションの固めどりをしたいところだ。
後は何度かテンションし終了点へ抜ける。

ダブルクラックを一撃する阪井さん
ダブルクラックを一撃する阪井さん


 阪井さんらがやってきて、
クラック初心者は「入門クラック」へ。
阪井さんは「ダブルクラック 5.10d 」に
初見で取り付き、オンサイト!
スゴイの一語に尽きる

 午後2時半を過ぎたころだったろうか、
急に雨が降り出した。
しかもかなり激しく。
私たちはロープやギア、支点を回収する間に
ずぶ濡れになってしまった。
岩も濡れてしまい、今日のクライミングは無理と判断し、
降りることにした。

 駐車場で荷をまとめ、皆で温泉に入って帰ろうと言う。
濡れて体も冷えたし、早めに終わったので行くことにした。
風呂は街中のおおきな銭湯といったかんじだった。

 皆と別れ五日市ICから、山陽道を備前ICまで走る。
あとは備中ツアーと同じように第二神明で神戸へ。
自宅の到着は午後11過ぎになった。

 今回は、クラックの厳しさを痛感した。
フェイスのボルトルートの力も上げたいが、クラックの魅力も捨て難い。
同じようにレベルアップするのは難しいかもしれないが、イレブンのクラックは
いつか登りたいものだ。
最近は、昔の本(岩雪?)にあった、「三倉の石を持って眠れ!」という一文が
頭から離れない。 この秋には、またここの「われめ」に手足をつっこみに来よう!

<今日のまとめ>
・入門クラック   / 5.9 ・・・フラッシュ
・への字ハング   / 5.10c ・・・TR

 



 

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