現在の美容業界の店舗の過剰な乱立による
過当競争の中での美容室の繁栄要素とは何でしょうか。
一つの事例を取り上げ、その実態を見ていきたいと思います。
最初に美容経営研究会創設メンバーが美容室の経営のお手伝いさせて
もらうに当たって、この業界独自の問題点に注目しました。
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日本の美容室(美容所)総数:274,070店(過去最多、前年度比 +4,181店 / +1.5%)。(厚生労働省,
e-Stat)
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年間の新規開設数:14,304店。(理美容ニュース)
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年間の廃業(閉店)数:約10,123店(新規開設数と総数の増減からの推計値)。※厚労省公表データを基に業界紙が推計。(理美容ニュース)
年間1万4千の新規店舗の設立される中で年間 1万店舗の廃業という
現実を知らなければならない。登場する先から、ほぼ同数が消えて行く
現実をみるとこの業界は決して経営的に甘くない状態です。
何故この業界は個人商店が大半でその寿命は短く一般企業の様に
組織化がされていないのか。
その為に、創業100年を超えるサロンは数えるしか無い。
そこで、この業界で長く定着してきた経営戦略の内容に注目してみました。
美容業界は、カットやパーマなどの技術の提供を柱として成り立っています。
そのため、自然と「技術の習得と向上」が主役となりがちです。
そして、多くの場合、「技術さえあれば経営は成り立つ」という安易な考え方が
広がっています。
こうした状況の中、業界の美容材料メーカーなどの環境は、
「繁栄の三大要素=技術・接客・設備」という三本柱の推奨に集中して来ました。
そのため、カット講習や接客講習などが頻繁に開催され、多くの経営者が
従業員と共に参加しています。
左記の図は、美容業界に定着している経営理念を示したものですが、その基本はこの三大要素です。
まず技術が良くて迎える設備が整っていて」接客さえよければ美容室経営は完璧であるという
固定観念の定着です。
しかし、此処で一旦、実際にサロンを利用する顧客の立場になって考えてみましょう。
顧客からすると、「技術の良さ」も「接客」も「設備」も、サロンに訪れて初めて気づくものです。
つまり、この三大要素は、顧客が来店した時点での受け入れ態勢、
いわば守りの戦略に過ぎません。
ここで重要なのは、この三大要素にはある前提条件が存在しているということです。
その前提とは、「客は来るものだ」という考え方です。
つまり、「顧客は来店するのだから、最高の技術・接客・設備でおもてなしすればよい」という概念に基づいています。
この前提に立ち、設備を整え、接客を磨き、
もちろん技術の向上にも努める。客が一度来てくれさえすれば、その良さを理解してくれるはずだと期待しているわけです。 では、もしこの前提が「客が来るかどうかは分からない」であったらどうなるでしょうか。
来店しない顧客には、サロンの三大要素を永遠に知ってもらうことはできません。
世間でありがちな例として、「美容室を病院のように管理する」というものです。
病院は、患者が来院した時の準備(細かいカルテ管理など)は整えていますが、
来ない人に対しては無関心です。
なぜなら、「病気になれば自然と来院する」というのが一般的な概念だからです。
美容室も同じく、「髪が伸びれば自然と来る」と顧客任せの運営手法が多数を占めて
います。
しかし、過当競争にあって顧客は貴方の店に来店すると保証はできません。
美容室と病院は根本的に違います。美容室経営は、基本的に商売です。
商売には「生産」と「販売」が不可欠です。工場でいくら最高の商品を作っても、
それを外部に認知させ、購入してもらわなければ在庫のみが増えて行くという
状況になります。
従って、商品の宣伝を行い、顧客に購入してもらうための販売活動が必要です。
美容室における「販売」とは何でしょうか。
それは、集客という動員作業に他なりません。
下のグラフは、美容室がオープンした直後から、売上が変曲点まで一気に上昇していることを示しています。しかし、この変曲点を境に、売上は横ばいの状態が続きます。

この状況は何を意味しているのでしょうか。
「売上の向上が難しい」と言われる過当競争の中でも、新しい美容室がオープン時に
それなりの売上を上げています。
理由は、オープン当初はどの美容室も、チラシの配布や外部への宣伝など、
積極的に集客のための販売という取り組みを行っているからです。
不況下であっても、この攻めの姿勢が一定の成果を生み出しているのです。
しかし、ある程度の期間が経ち、「このくらいの客数なら大丈夫だろう」と
安心する時期に入ると、その攻めの姿勢が止まってしまいます。
その後は、業界でお決まりの口コミ依存に頼ってしまいます。
口コミ頼みの「待ち」の姿勢に変わり、集客活動(販売)をやめてしまうのです。
美容室経営は商売である以上、販売(集客)が常時不可欠なのです。
その意味で三大要素の前提は「客は来店させるもの」となるべきなのです。
美容室のオーナーは技術者である前に顧客を集客し、従業員を育て管理する
経営者であるべきなのです。
しかし、オープン当初にチラシを撒いても経費的に、そんなに何時もは出来ないよと
言う理由で集客活動を続けない場合がほとんどです。
常時集客活動するためにはどうすれば良いのでしょう。
この問題解決の為に、必勝の戦略を提案します。
集客活動は戦争でいえば攻めの形です。
攻めの形には外攻め(新規獲得作戦)と内攻め(既存客売上開発)の
2種類があります。
外攻めとは季節的に顧客がカットやパーマなどの施術に美容室の利用が活発化する
時(卒業就職・年末など)は新規の顧客を獲得する絶好の時期となります。
チラシ配布などの宣伝活動はこの時期に集中させるべきです。
時期に関係なく実施しても費用と効果のバランスが取れません。
それでは外攻めする以外時期は何もしなくて良いのでしょうか。
それでは外攻め活動以外は販売(集客活動)をしなくて良いのでしょうか。
いいえ、販売活動に休みはありません。
ここで登場するのが戦術の内攻めの行動です。
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