慢性疲労性症候群そのA 子供編 | |
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現代社会においては、あらゆるストレスが氾濫しており、これは大人だけに限ることではありません。子供を取り巻く環境もストレッサーが増大しています。現代人が抱える病気のうち70%は、理学的検査において陽性にならず原因をつかむことが出来ません。なぜなら、自律神経系の機能によるからです。 | |
睡眠障害 | |
熊本大学の三池輝久教授(小児発達学)は、最近の子供が疲れている共通の要因として、 1,夜型生活 2,パソコンやインターネット、ゲームなどを通じた豊富な情報で頭を使いすぎている。 3,周囲に気を遣いすぎて自己抑制している。 などの点を上げています。 これらに、いじめや引っ越し、受験勉強、家族の不和、病気などのストレスが加わり、睡眠と覚醒、体の深部体温、ホルモンのリズムが崩れると、病的な疲労状態に陥ることがあるという。 平成十五年から翌年にかけて、熊本大学付属病院で慢性疲労性症候群と診断された子供309人のうち、273人に睡眠障害があった。そのほとんどが浅い眠りのまま一日十時間近く寝ていて、朝起きても学校に行く意欲がでず、体もついて行かない、いわば生命力が低下した状態だった。これらの子供はその前段階において、睡眠時間が短縮されていることが多い。 三池教授は、「もし、眠れない原因がいじめにあるならば、無理をして学校に行かせる事は絶対にやめ、転校させる事などを考える。眠れない段階で環境を改善し、睡眠がとれるような治療をする。それでよくなるケースは多い。慢性疲労性症候群の状態までいってしまうとなかなか良くならないのです。」と話す。 |
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メディア環境 | |
子供の慢性疲労につながる環境として、注目されているのがテレビ、テレビゲーム、インターネット、メールといったメディアだ。国立病院機構仙台医療センター(仙台市)小児科の田澤雄作医長は「心身の疲労があっても、睡眠をとって休息すれば回復しますが、インターネットやメールにのめり込むと、睡眠時間を削ることになり、テレビゲームなどは興奮して眠りにくくなって、脳の疲労が残るのです」と指摘する。 仙台市に住む男子高校一年生のB君は不登校になって二ヶ月が経過していた。なぜ不登校になったのか、きっかけとなるようなことは分からなかったが、真夜中も未明もメールに反応して「メール中毒」というような状態で睡眠障害もみられた。田澤医長は母親と本人に、メールをやめ、他のメディアからも離れるよう指導。その結果。B君は約三ヶ月後、高校に行けるようになった。田澤医長は「メディアと他の原因がいっしょになって、慢性疲労の状態を作り出しもするし、悪化させもします」と警鐘を鳴らす。 |
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兆 候 | |
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国立病院機構仙台医療センター小児科の田澤医長がかつて、秋田市内の小学校2カ所で1143人を診たところ、大なり小なりの肩こりを認めたのが全体の約20%、目のくまがみられたのが約15% 肩甲骨のずれがみられたケースが約5%に及んだという。田澤医長は「このほか、背中が丸くなっている子供もよくみられます。こうした所見があれば、慢性疲労があることを疑った方がいいかもしれません」と話す。 |
睡眠不足による脳の疲労 | |
熊本大学の三池教授がかつて診断した14歳の女子中学生の睡眠の状況。「眠れない」と訴えて受診に来た時は、睡眠時間が4,5時間と短く、全く眠れない日もある。慢性疲労性症候群の状態になったときは、一日に10時間以上眠っていることがあるが、浅い睡眠状態が続いていて、能の疲労はとれないと言う。 | |
産経新聞2006年1月16日付 | |