バス




     きゅうに訳もなくただ寂しくって切なくってたまらなくなちゃうよ。
     どうしてこんなに時間だけが急ぎ足なんだろう..

     帰りのバスだって慌しく走っていくのに、
     追いかけてきた雨に先を越されて窓に滴が溜まりだしてしまう。

     流れ落ちる雨の滴のひとすじが、
     たとえば夜空に輝く星達からこぼれ落ちた流れ星だとしても
     おかしくないぐらいの早さで...
     指で窓越しになぞっていくことすら出来ない早さで...
     こぼれ落ちていくんだもの。

     こんなにも早い時間の流れのなかで
     バスはどんどん加速していく。
     だけど行きを焦る気持ちとは裏腹に
     停まらない、存在しないバスストップに幾度となく停まる。
     たどり着けない時間の悪戯。

     バスを降りる頃にはきっとこの雨も小雨になって
     やさしく私に降りそそいでくれるだろうか
     だとしたらこの冷たさだってたまには悪くないのに                2001年 3月