黄道光と冬の天の川


The Zodiacal light


 春の夕刻の西空、すばるに向かって上る黄道光と、沈んでゆく冬の天の川が天空上で交わりそうです。

「黄道光」とは、天球上の太陽の通り道である「黄道」に沿って、東西に広がる淡い光のことです。日の出前や日の入り後にその両端が見えるので、空の暗いところでは”ボーっ”と地平線の境が淡く光り、その存在がよくわかります。
 ただし、黄道は地平線に対して傾いているので、いつも見えるとは限りません。北緯35度に位置する日本では、黄道と地平線のなす角度は32度〜78度まで変化します。なるべく垂直に近い方が見えやすいので、その時期(秋の明け方の東空、春の日暮れの西空)に観望するのがよいでしょう(赤道近くに行けば、傾きがほとんど一定なのでいつでも見れるはずです)。

 銀河鉄道の夜で有名な、宮沢賢治の戯曲の中にこんなフレーズがあります。
 「天の川はよくは知らないが 何でもXという字の形になって しらじらとそらにかかっている・・」
 この節にある「Xという字の形」というのが、黄道光と天の川がクロスした様子だと言われています。宮沢賢治が生きていた時代には、黄道光が見える空がまだまだ残っていたのでしょうね。
 また、仏教の発祥の地であるインドでは、浄土の世界は西方にあり、西空の黄道光は極楽浄土を表す光だとも言われています。

 この話を昔聞いた私は、この黄道光と天の川が、西空にクロスする様を見たいと思ってきました。しかし、秋の明け方の黄道光は、明け方の透明度のよい空にも助けられよく見えるのですが、春の夕方西空の黄道光は、まだ光害も強い時間帯で、なかなか見ることができませんでした。見るチャンスも少なく、月齢を考えると一年の間でほんのわずかのことでした。
 この日は天候などの条件が良さそうだったので山中まで遠征し、やっと見ることができました。

 夕暮れが終わった後、紀伊山脈から白々と立ち上っている黄道光はとても綺麗で、じぃーっと見とれてしまいました。

※写真中央の「すばる」に向かって、下から延びている淡い三角の光が黄道光です。ポジ原板ですとよくわかるのですが、Webではわかりにくいかもしれません。なお中央から右の山際が明るいのは、大阪の光害のためです。すごい明るさですよね。

 撮影条
Fisheyeタクマー35mmF4.5+ペンタ67にて撮影
露出35分 エクタロームE200(+1増感)
撮影地:奈良県十津川村
2005年3月撮影

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