雲取越に沈む冬


雲取越に沈む冬


 「大雲取越」「小雲取越」の名で有名な「雲取越」は、熊野古道の中で一番の難所といわれている峠道です。この「雲取越」という呼び名は、那智から本宮へと向かう途中に「大雲取山」と「小雲取山」という大きな山があり、熊野詣でをする人がその峠を越えて歩いたのでその名がつけられたそうです。

 後鳥羽上皇のお供として、熊野詣でをしたことで有名な藤原定家もこの道を歩いています。彼は鳥羽を出発して山々を越えて熊野本宮を参拝し、熊野川を舟で下って那智に入り、その帰りにこの難所、雲取越を越えたそうです。普通は2日かけても大変な道ですが、夜も休まず歩き続け一日で越えたそうです。

 この雲取越の道は、昔から死者の魂が返る道とか、「ダル」と呼ばれる妖怪が出る道と呼ばれ、怖がられてきました。現在も夜歩くと鬱蒼と木が茂り真っ暗で怖い道です。あまり夜は歩きたくない道ですね(※安全上からも歩かない方がよいと思います)。

 この写真で雲取越の道は、左から右へと続く尾根筋として写っています。中央の少し小高い山が大雲取山です。その峰々にオリオンやシリウスが沈もうとしています。たくさんの一等星が輝く冬の空が、何もない真っ暗な古道を彩ってくれました。
 
 ところで十数年前に来たときには、撮影しているこの場所は砂利道でした。時間は流れて今現在は、綺麗に舗装されていてビックリ。世界遺産に登録されたためでしょうか。でも前と左右は、あの頃と変わらず切り立った崖です。気を付けないと奈落の底・・・この写真を撮って早々に山を下りました。

 撮影条件
Fisheyeタクマー35mmF4.5(F5.6)+ペンタ67にて撮影
露出40分 エクタロームE200(+1増感)
撮影地:和歌山県本宮町
2005年2月撮影

月刊天文入選作品

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