色に関する基礎知識


 デジタル画像を運用するなら色に関する知識はできるだけ覚えておきたいところです。それがよりよい作品作りへと、きっと繋がるはずです。このページでは、基本的な色の仕組みなどを簡単にまとめています。      


 1.色の生じる原理

 色の種類

 「色が見えるのはなぜか?」
 これは素朴な疑問ですが、色を操る上で重要なことです。この自然界し我々が見ることができる色は、光がないと見ることができません。真っ暗闇だと色は存在しないのです。人間が見ることができる色は、可視光線と呼ばれ、380nm〜780nmの波長の光がそれにあたります。それ以外にも赤外光、X線光など様々な光が存在しますが、人間の眼では感じることができません。
 また色は光の種類に応じて、光源色、物体色などにわけられます(上の図)。自然光は太陽が発する色。人工光は蛍光灯が発する色です。表面色は光が当たって反射してくる色(一般的な色)。フィルターなどを通してみる太陽の色などです。
こうして考えると一口に「色」と言っても色々な種類があり、人間が感じないものも多々あることがわかります(赤い星雲で有名なHα光も人間の眼では感じることができません)。

  2.色光と色料の三原色

 左は学校の美術の時間でよくお目にかかったRGBによる「光の三原色」です。右は学校では、絵の具の三原色という名で勉強したのではないでしょうか。「色料の三原色」といわれています。
 RGBの三原色では、色を混ぜれば混ぜるほど明るさが増します。そして最後には白色となり最高の明るさになります。その特性から「加法混色」と呼ばれています。光自らを色づける舞台照明などに使われる技法です。対して、シアン(藍)、マゼンダ(紅)、黄色(イエロー)からなる三原色は、混ぜれば混ぜるほど明度が下がり、最後には黒になってしまいます。こちらは「減法混色」と呼ばれています。一般的なカラー印刷はこの減法混色を使って表現しています。
この上の図は色を操作する上でとても役に立ちます。例えば、グリーン(G)とマゼンダ(G)は対向する位置にあります。この2色は「補色関係」にあると呼びます。もしマゼンダ寄りの画像をニュートラルにしたいのならグリーンを増せばよいというわけです。他の色にももちろん当てはまりますので、この図を頭に思い浮かべながら色補正すればよいのです。

※定量的な色について

 人間の目では1000万近い色を識別できると言われています。このような多くの色を名前で識別するために、JIS規格では系統色名というものを定義しています。これは一般的な基本色名(赤とか緑とか)に修飾語を二つつけて表示するというもので「明るい、赤みのある、緑」という具合に名を付けていきます。大変多くの種類があるのでとっつきにくいですが、イラスト関係の職場ではよく使われている言葉です。
カラーマネジメントの現場では、マンセルの表色系というのが有名です。アメリカの画家であるマンセルが、色を表現するために提唱したもので、色相、彩度、明度を立体的に表したマンセルの色立体(下図)は特に有名です。現在の画像処理ソフトの画像変換は、この立体図をもとにして色転換しているのが主です。

マンセルの色立体

  3.デジタルデータのビット数

 デジタルカメラが普及してきました。デジタルカメラはその名の通り、撮影からデータまですべてがデジタルと思われがちですが、実際はそうではありません。人間が住む自然界はすべてアナログです。ですので必ずアナログからデジタルへ変換する機構(A/Dコンバータ)が必要です。流れとしては下のような感じです。

 デジタルデータの流れ

ですのでCCDだけでなく、コンバータの性能アップもデジタル画像の品質向上においては大変重要になってきます。また、画像保存については階調数の違いからいろいろあります。下の表に列記してみます。

1ビット 2の1乗 2色
8ビット 2の8乗 256色
12ビット 2の12乗 4096色
16ビット 2の16乗 65536色
24ビット 2の24乗 約1670万色
32ビット 2の32乗 約43億色

 ビットという表現は少し馴染みにくいですが、元々のコンピューターが0と1しか判別できないので仕方ありません。我慢して使いましょう。
誰もが持っているとまで言われるコンパクトデジカメは、この表でいうと2段目。8ビットデータで保存されます。カメラファンに普及が激しい一眼レフデジカメでは12ビットで保存できます。単純に考えると8ビットよりも12ビットの方が良さそうですが、場合によってはそうではありません。8ビットに比べ12ビットデータは大きいためです。データが大きいと保存容量が必要ですし、今お使いのメディアだと数枚しか撮れないかもしれません。ハンドリングが非常に悪くなります。また、現在普及しているプリンターでは12ビットの色を正確に表現できません。最高のデジタルプリンターと呼ばれるピクトログラフィーも256階調です。ですので、データから直接プリントしたいだけなら8ビットでも十分なのです。
しかし「自分で撮った画像を使って画像処理を楽しみたい」というのでしたらデータ量が多い12ビットが有効でしょう。現在のハードウェア環境を考えると、画像処理には16ビットもあれば十分でしょう。

  4.ガンマカーブ

 デジタルカメラを使っていると、たまに目にするのが「ガンマ(γ)」という言葉です。銀塩写真の頃から用いられてきましたが、最近画像処理が一般化するにつれて注目されるようになりました。

γカーブ

 入力に対する出力の階調再現特性をγといい、この値が大きいほどコントラストが高くなり硬調になります。反対に小さいと軟調で低コントラストになります。上の図では、黒の曲線で表されているのがγカーブでαがその角度。γ値はそれをタンジェントで表記したものです(α=45度ですとγ=1です)。ネガフィルムは低γ値の代表的な感剤です。パソコンのモニタの表示にもγが用いられています。私の使っているMacのモニタは1.8、Winマシンは2.2を伝統的に使っています。どちらが良い悪いということではありませんが、Winマシンの方がγ値が高いので高コントラストの表示となります(私のHP画像もWinで見ると硬調に見えると思います)。

 5.印刷機の色

 プリンタの発達によって、家庭でも手軽にできるようになったカラー印刷。インクを交換した経験がある人なら「カラー印刷といえばCMYKインク」と連想しますが、全く興味がない人は「肌色なら肌色インクを使って・・・」と考えてしまうのではないでしょうか。実際にこのような特別色インクを100色以上使って印刷する「原色版印刷」という機械もあるそうですが、今ではとても特殊な機械です。今では、人間の眼の特性である3原色を使ってカラー印刷するCMYKプロセスがほとんどの印刷現場を占めています。

 CMYK印刷に使われるインクは、理想的な特性が求められます。理想的な特性とは、Cインクならば約400nm〜600nm付近の色は完全反射する特性を持ち、逆にそれ以外の波長色は吸収してしまうという特性です(Cインクならシアンだけが正確に出るということです)。しかし、実際のインクは理想とはかなり違ってしまっており、この辺りの特性改善がインクメーカーの今後の課題となっています。

 インク特性が理想像と異なっているため、実際の印刷ではインキ量補正が必要になります。本来CMYを混色すればグレーになるところなのですが、実際にはR味が出てきてしまうのです。これではいけないので印刷時にグレーバランスを取ったり、マスキング処理を行います。

 マスキングと言うと、なんとなく難しく聞こえますが原理は簡単です。例えばMインクにYインクを重ねて色を再現するとき、理想インクと比べてMインクはY色が含まれているので、その分、Yインクを重ねる量を減らして印刷するというものです。こうやって印刷すれば、正しい色になって印刷物が出来上がるというわけです。一般のプリンタドライバもこの辺りを調整しつつプリントを行っています。私達の知らないところでソフトウェアが調整してくれているのです。

 現在の印刷物は、網点技術の開発により安定して作成できるようになりました。「網点(あみてん)」とは、その名の通り小さな点です。この小さな点を細かく打つことによって印刷物は生成されています。印刷物をルーペで見るとこの網点の様子がよくわかると思います。
 網点印刷によって出てきた問題に「ドットゲイン」があります。ドットゲインとは、簡単に喩えると印鑑を押したときにはみ出す量のことです(印鑑を強く押すと、印鑑本体より少し大きな印が紙にできますよね。そのはみ出す量のことです)。
 ドットゲインが大きいと、本来点であるべき像が滲んだように印刷されてしまいます。これはどちらかというと、プリンタ本体よりも使うペーパーの質による影響の方が大きいものです。ですので天体写真などをプリントするときには、インク滲みの少ないペーパーを用いるのがよいでしょう。

 また業務用のプリンタでは、高精度に網点を制御して印刷する機械もあります。一般的に網点を使った印刷では、モアレなどの現象が起きやすい欠点があったのですが、最近では網点を打つ配列を無規則にしてモアレなどを防いだものもあります。写真の内容によっては(細かい規則性を持った衣服などの写真など)、このような機種を選んでプリントする方がよいと思います。

 印刷技術はこれからも発展していく技術です。家庭用インクジェットプリンタも高性能化しているので、今後印刷技術がどのように変わっていくのか興味が尽きない分野です。

トップページへ

このページは天体写真の世界に移動しました
天体写真 販売天体写真の撮影方法天体望遠鏡の選び方天体写真とデジカメ