きずな

 

             日自協第12−9号

             平成245月28日

 

奈良県警察本部

本部長 原 山   進 殿

 

                     社団法人 日本自閉症協会

                       会長 山 崎 晃 資

 

        西和警察署管内で生じた事案について(抗議)

 

 

平成231126日、西和警察署管内で生じた事案について添付資料のとおり、署員の対応、

および警察署長の質問文への平成24416日の回答について当協会として抗議を行います。

西和警察署長の回答をお待ちしていたため、時間が経過してしまったことを追記します。

 当協会関係者は、常日頃社会からの偏見に曝され、時には一方的な非難を浴びることがあ

ります。警察に対しては、我々の味方であって欲しい、少なくとも健常者と同等に扱って欲

しいという願いがあります。今回の件についても、当事者および保護者は世間からの偏見だ

けでなく、頼みの綱であるはずの警察からも見放されたと感じています。今後とも是非自閉

症について、適切な対応をお願いしたいと考えています。このためには当協会としても、警

察官の自閉症理解をより進めるために協力できることがあれば、是非お手伝いしたいと考え

ています。本部長としてもこの件について是非ご検討下さい。

 

 

 

          資料1: 西和警察署署員の対応について

          資料2: 西和警察署署長の回答について

 

 

 

 

          連絡先

            住所 〒104-0044 東京都中央区明石町622 築地622

               電話 0335453380

             社団法人 日本自閉症協会

 

資料1

            西和警察署署員の対応について

 

 平成231116日、奈良県警西和署管内において、奈良県自閉症協会の会員およびその家族

に対して、以下のような重大な人権侵害があったと考えます。

 

 第1に、自閉症者は、じっと1点を見つめるとか、特定の物に対するこだわりが強いといっ

た障害特性があることから、不審者や犯罪者と誤解されることがあります。本件も被害者の一

方的な偏見に基づく証言に引きずられて事実認定をした上で、何の弁明もできない会員を一方

的に悪いと決めつけるなど、障害者の特性を正しく理解し、これに配意した警察活動が行われ

なかったことが誠に遺憾です。

 

第2に、仮にたとえ犯罪行為があったとしても、自閉症者に対する差別発言が許されていい

はずはありませんし、まして、その家族にまで謝罪をさせる理由にはなりません。しかも、公

衆の面前で土下座をさせるなどという個人の尊厳を踏みにじる行為を強要しているのを黙認す

るなどというのは言語道断です。目の前で重大な人権侵害行為が行われているのに、正義を守

るべき警察官がそれを止めなかったことに対して、強い憤りを禁じ得ません。

 

第3に、視覚障害があり夜間は一人では外出ができない者に対して、事情を説明して翌日伺

うと述べているにもかかわらず、タクシーに乗ってでもすぐ来いと呼びつけた点についても、

障害に対する理解も配慮もまったくなく、不適切だと考えます。

 

 本年8月に施行された改正障害者基本法に照らしても、自閉症のある者及びその家族に対す

る非常に問題のある行為と考えます。

当協会は、奈良県警察本部に対して、ここに厳重に抗議するとともに、今後同様な人権侵害行

為を起こさないための再発防止策を求めます。

 

 

当方が把握している事件の概要

平成23年11月6日、大和高田市在住の自閉症者Aさん(37歳)が祖父(88歳)とともに

行った温泉施設で、4歳女児の手を自分の体に触らせたとして、同児の母親から通報がなされ、A

さんは祖父とともに西和警察署へ連行されました。Aさんは、自閉症と重度の知的障害(療育手帳A

を有しており、親愛の情を示すために自分のお腹をポンッと触らせる癖があります。

そして、西和警察署の警察官からAさんの母親のところに、相手の保護者がとても怒っているの

で、母親に来て謝るようにとの電話がありました。Aさんの母親は視覚障害(身体障害者手帳2級)

があり、夜盲症のため夜間は、誘導者がいないと歩けないし、急に言われても、また休日の夜間では

ガイドヘルパーの手配もできない旨を告げて、翌日相手宅に謝罪に行くからと述べたにもかかわらず、

警察官は、「相手が騒いでいて、こちらとしても、対応出来ないので、タクシーででも来てください。」

との対応でした。さらに「どうするねん。とさわいではるので、早く来てください」との催促の電話が

ありました。途方に暮れた母親は、方々へ電話をして、やっとひとりついてきてもらう知り合いを見つ

けて、警察に駆けつけ、その人に手引きお願いして、署内へと入りました。

西和警察署には3人の警官がいて、一人はAさんが入所している施設へ電話をし、施設長に障害の程度

や特徴を聴いていました。その前に、祖父からも「自閉症という障害について」聞き取りをしたそうです。

しかし、警察官が相手にいくら伝えても、「逮捕しないのなら、両親があやまらなくては許さない」と言

ったとのことで、警察官から相手に謝るようにと促されました。そこで、Aさんの母親は相手に申し訳あ

りませんでしたと何度もあやまりましたが、相手方はいくらあやまっても、あやまっても、「あんな奴、

施設から出すな」とか、Aさんのように施設に入っている者はクズのように言いました。そして、「絶対

ゆるさへん」「ネットに書いたろ」「新聞社に言おう」等々言われ、さらに相手から、「あやまり方が悪

い」と「土下座をしろ」と強要されました。Aさんの母親は土下座をして、警察署の窓口の前の冷たい床

に頭をすりつけて、ひたすらお詫びの言葉を続けました。その間、警察官は止めようともせず、離れたと

ころで冷ややかに見ていました。母親は、その後も相手が帰るまで、ひどい侮蔑的な言葉を浴びせられま

した。母親は涙が次々とこぼれて情けなかったとのことです。母親に付き添ってきた人が、警察官に対し

て、あまりにひどい相手方の物言いに止めてくれるよう要請しましたが、警察官は、別室へ促すこともな

く、ただ、やりとりを傍観していました。

 

資料2

  西和警察署長の回答について

 

平成24416日付西和警察署長の回答によりますと、会員の母は自ら土下座をして謝罪をしたとあります。

しかし、同人が警察署に到着してからのやり取りは後述のとおりです。確かに、4歳女児の祖母は会員の母の

頭を押さえつけて土下座をさせたわけではありませんが、「土下座はこないするんや」と自らが土下座の格好

を見せたからといって、強要していることに何ら変わりはありません。会員の母は自主的に土下座したのでは

なく、4歳女児の祖母や母からの誹謗中傷や脅迫に耐え切れず、かつ、それに何の救いの手も差し伸べようと

しない警察官らの態度に絶望し、泣きながら土下座をしたのです。

問題の所在は、警察官らが女児の祖母や母による偏見に基づく差別行為が行われているのを制止しなかった

ことです。しかも、付添の人が「ひどすぎるから止めてくれて」と言っているにもかかわらず、女児の祖父が

見るに見かねて止めてくれるまで、放置したことです。さらに、視覚障害があり、夜間目が見えない会員の母

が、「付添の手配がつかないから、警察にはいけないが、翌朝謝罪に訪れる」と言っているにもかかわらず、

一切配慮をせず、何度も電話をして謝罪をしに来るようにと警察に呼びつけたことです。

障害者基本法は、“何人も障害者に対して障害を理由として差別することを禁止”しています。そして、

“社会的障壁の除去を怠ることによって差別とならないよう、その実施について必要かつ合理的な配慮”を求

めています。障害による直接差別とは、障害があることによる特異的取扱をいいます。自閉症者を「一生施設

に閉じ込めておけ」というのは明らかな差別発言です。

また、もし仮に37歳の健常者が痴漢をした場合、その親に謝罪を求めるでしょうか。土下座までさせるのでし

ょうか。警察は夜間目の見えない母を呼び出すのでしょうか。明らかに会員の障害を理由とした差別です。

障害者基本法は、“全ての国民が、障害の有無にかかわらず、等しく基本的人権を享有するかけがえのない

個人として尊重されるものである”との理念に則り、“全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられるこ

となく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会を実現する”ことを目的として制定されました。

そして、“国及び地方公共団体は、その社会の実現を図るため、障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策を総合的

かつ計画的に実施する責務”を有しています。

したがって、警察官は、市民が障害者への偏見に基づき差別を行っていたらそれを正し、導いてしかるべき

です。それを、「警察官の面前で違法な行為があったとの認識がない」と回答すること自体、人権意識のなさ

を露呈しているといえ、誠に遺憾です。

改めて、各警察官に対する障害理解や人権啓発の研修等の再発防止策を速やかに実施するとともに、会員およ

びその母への謝罪を求めます

 

当方が把握している西和警察署に到着してからの概要

1. 会員の母は、女児の家族のところへ行き、すぐ「ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。」と

何度も謝った。

すると、女児の母や祖母は、会員のことを「あんなもん、外へ出すな。」と、まるでクズやけだもののように言い、

「絶対ゆるさへんからな。ネットに書いたるからな。新聞社にも言うたる。」と怒号を浴びせ続けた。揚句に、女

児の祖母が、「そんなんで、謝ってるんか、あやまってないやないか、あやまるっていうのはこないするんや。」

と言って、土下座をする真似をした。

視覚障害のある会員の母のために一緒に付き添ってくれた人が「そこまですることないんちゃいますか。」と言っ

たところ、女児の祖母から「あんたは関係ない。」と怒鳴られた。そこで、その付添の人は、警察署の奥に行き、

遠巻きに見ている警察官らに「やりすぎやから、とめてちょうだい」と言ったところ、警察官は「しゃあない。

しゃあない。」と言い、「民事不介入やから」とまったく取り合おうとしなかった。

 会員の母は、だれも助けてくれないと思い、土下座をして額を地べたにこすりつけて謝った。しかし、それでも、

女児の祖母や母は許してくれず、「障害があるからって、許されると思うたら大間違いや。」「ホンマに悪いと思

ったら私やったら泣いてあやまるわ」と大声で言い続けた。会員の母は土下座したまま涙を流してずっとその状態

で「すみません」と言い続けた。すると、横で児童を抱いてあやしていた女児の祖父と思われる人が、「もうその

くらいでええやないか」と言ってくれ、ようやく解放された。

 

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