梟の詩  
  思えば遠くへ来たもんだ      
 
 
 

                          034号     2004/4/24(土)

 
 
 
  <いちご>  
 
 
  3月末で退職してから、毎日時間がゆっくりと流れていく。
朝5時半目が覚めて、「昨日散歩途中、買えなかったいちごを今日こそ買ってこよう。」
自転車をとばして行くと、3月並の冷え込みで目から涙がしみ出てきた。6時半過ぎいちご畑についたがまだ誰も来ていなかった。しばらく待ったが誰か来そうな気配がないのでそのまま帰った。
三度目の正直と、9 時半過ぎ、散歩をかねて出かけた。
着いてみると、先客のおばさんが「もう売切れみたいですよ」と、うろうろしていた。 又だめかと思っているところへ、いちごをつくっているおばさんがやって来て、
「もう2パックしかないから、先客の人だけ。あんたの分はなし、明日来て。」
とつれない返事。
「せっかく買いに来たのに残念です。すみませんが2パックのうち1つをこちらに譲っていただけませんか。」
ともちかけて見た。じっと僕の顔をみて、先客のおばさんが、
「1つ譲ってあげるよ。あまりに悲しそうな顔をするしね。」
お礼を言った後、
「今朝も来たんだが誰もいなくて…。朝は何時ごろからやっていますか。」
「7時半ぐらいにならないと、ここには来ませんよ。いちごも最近取れる量が減ってきて私らももっとほしいと思っている。お客さんはどこから買いに来てくれたん。」
「滝ノ町から歩いてきたんですが。」
そんな会話を聞いていた先客のおばさんが 、
「もう1つのいちごも持って行っていいよ。お金だけはきちんと払ってや。」
ということで、採りたてのおいしいいちごを2パック買う事ができ、満足して帰った。