梟の詩  
  思えば遠くへ来たもんだ   
 
 
 
                          015号     2003/5/10 (土)
 
 
 
  <大坂湾をめざす(2)>  
 
 
  阪急地下鉄線の柴島駅でおり、5分ほど歩いて淀川堤防に出ると、そこが大阪湾まで10キロの地点。ちょうど正午に歩きはじめた。堤防には気持ちの良い川風が流れ体全体を吹きぬけていく。河川敷では、焼肉を楽しむ人達が連なり、うまそうな臭いがこちらまで漂ってくる。
草刈をすませたばかりの足元には、何百羽の丸々太った鳩たちが夢中になって虫か草の実を啄ばんでいて、通りすぎても気がつく気配もない。
川面では、モーターボートにひかれた水上スキーが走っているかと思えば、次の鉄橋をくぐると、色とりどりのウインドサーフィンが踊っていた。
川幅が広くなるにしたがい河川敷は狭くなり、あと6キロの標識を最後に 標識が見つからなくなった。堤防もコンクリートの壁になって、上は自動車専用みたいなので河原を歩かねばならなくなった。
草の生い茂る奥にホームレスの人達の住む小屋が何軒か立ち並んでいた。洪水で水かさが増したり、津波が海の方からやって来たらこの人達はどうなるのかと思いながら、小屋の前を通りかかると三匹の大きな犬が吠えながら飛びかかってきた。こんな所で犬に負けていられるかと、大きな声で「コラ!」と気合を入れ、いざのときには蹴りを入れるつもりで後ずさりをした。その時奥から人の声がかかって、犬は吠えるだけで動かなくなった。
最後の橋をすぎると、大阪湾を横切って車が行き来する大きな高速道路がかすんで見えてきた。2時近くになったし、あの近くまで行けば 淀川の終点に出るだろう、終点だと言うことがどの様に分かるのかなと思いながら、しばらくいくと、数人のハイカーに出会った。聞いてみようかどうしようかと思っているうちに、何人かの人達がくつろいでいるのが見える公園に近づいていた。
「ここが淀川の終点ですか。京都から歩いてきたんですが。」と言うと、「ちょっと、この人京都から歩いてきたんだって。えらいですね。」「ここは淀川と神崎川が流れ込んで出来た砂洲で、自然が残っている数少ない所の一つ。あそこに見えるのが大阪湾をひとまたぎする○○○○。歩きたいだろうがあれは車専用。向かいのヨットハーバーの見える所が此花区だ。」と親切に説明してくれる。
2時10分、ついに大阪湾に着いたことになった。
帰りは人の住むゼロメートル地帯を見て帰った。堤防の高さが家の三階に当たる。 雨が降ったら溜まった水をどう掻い出しているのか、堤防を越えて海水が入ってきたらほとんどの家が水面下になりそうだ、と気にしながら歩いた。西淀川区は工場とアパートが混在した町。食料を買いたいと思うのに店に全然出会わなかったのも不思議。どこに買い物に行っているのかな。
十三駅まで7キロひき返して電車に乗りかえった。