ウィンリィに見送られ、一人セントラルにやって来たリョーマ。そこで
は初対面なはずのハボック少尉と仲良く兄弟のように談笑する姿が見られ
た。謎は深まるばかり、そして更にホークアイ中尉は誰かがリョーマを待
っていると言う。軍部でリョーマを待つという人物とリョーマが会いたい
人物とは別人なのか同一人物なのか……。
「アルフォンスさん、初めましてっス!!」
「こちらこそ初めまして、リョーマ君。兄さんがお世話かけました」
「楽しかったっスよ?」
「それなら良かった。でも、さすがにあの時の突然の電話には驚いたよ」
「すいません。だってエドとロイをなんとかするにはアルフォンスさんに
聞くのが一番だと思ったっス」
「それは賢明な判断ね。でも、私もあの時は驚いたわ。アルフォンス君か
ら直前に連絡はあったけれど、呼び出されたと思ったらリョーマ君が泣い
ているのだもの。思わず本気で怒鳴ってしまったわ」
「「……」」(←その時の光景を一人は思い出し、もう一人は想像してい
る……)
「ということで、世間話はこのくらいにして私は仕事があるからもう行く
わね。この部屋は好きに使ってくれて構わないから。主は長い間出奔して
いるし……」
「ありがと、おねーさんvv」
「ありがとうございます中尉」
「そうそう、あの方は明日の午前中に約束を入れてあるから。今日の宿は
アルフォンス君のところで大丈夫よね?」
「「っス(はい)!!」」
「ホントいいおねーさんだよねvv」
「うん。中尉みたいなおねーさん欲しかったよ。兄さんもいいけどね」
「エド? いたら楽しいとは思うけど、毎日はいいかな?」
「でもリョーマ君もそんなに変わんないでしょ? 跡部さんと千石さんが
いるんだから。それに来てるんでしょ?」
「っス。エドが拾ってきた」
「兄さん……。僕が子猫拾ってくると無茶苦茶怒るくせに」
「そうなんスか?」
「昔、良く内緒で身体の中で飼ってたりしたんだけど、バレるともの凄く
怒られたんだよ。元の場所に捨てて来い!! ってね。それなのに自分は
人間を拾ってくるなんて……」
「仕方ないよ。エドだし」
「そうだよね。錬金術の上達具合はどうなの? 兄さんと大佐に教えても
らってたんでしょ?」
「……少尉にも同じこと聞かれたっス」
「そうなんだ。で?」
「基本は出来た。でも、応用はまだ早いって……。しかも、あの時おねー
さん呼んだからその後禁止令くらってさっぱりっス。大人気ないよね二人
とも!!」
「よりにもよって中尉だからね」
「って、アルフォンスさんが助言してくれたんじゃん」
「あはは。そうだね、ごめん。僕がリョーマ君の修行の邪魔しちゃったん
だね」
「そうっスよ。だから今夜いろいろと教えて下さいね」
「うん、分かった。兄さんが知らないとっておきを教えてあげる」
「約束っスよ!!」
「うん」
「うわぁ〜、楽しみvv あっ、そうだ。アルフォンスさんはもうあの人に
会ったんスか?」
「僕もまだだよ。だから明日一緒に会おうね。あの人も忙しい人だから、
一緒の方がいいだろうし」
「そうっスね。エドたちちゃんと来るかな?」
「来るでしょ? というか来てもらわないと困るよね。二人は兄さんたち
と一緒にいるんだから。それにリョーマ君が行くところなんて限られてる
んだからこれぐらい推理してもらわないと国家錬金術師の名が廃るよ。二
人とも。特に大佐は階級ももらってるいい大人だしね。これぐらいで“ヘ
タレ”の名前は拭えないけど、ここに辿りつけなかったら更に名前が増え
るだけだということを覚えてもらわないとね♪」
「次はどんなのになるんスか?」
「秘密だよ♪ でも、大佐を見ていればすぐに想像つくと思うけどね」
「あ〜。うん。そんな感じ」
「どんな感じなのかな?」
「「えっ!?」」
「初めまして、というべきなんだろうね。リョーマ。君のウワサはいろい
ろと聞いているが実際会うのは初めてだからね」
「初めましてキング・ブラッドレイさん」
「お久しぶりです。大総統」
「アルフォンス・エルリックも久しぶりだね。元気そうで何よりだ。君の
活躍も聞いているよ」
「ありがとうございます」
「でも、いいんスか? 忙しいってハボック少尉とか言ってたけど。おね
ーさんも明日の朝にアポ入れてるって……」
「何、どーせただ大総統印をつくだけの仕事だ。私ではなくても出来る。
影武者を置いてきたから大丈夫だろう。それよりも君たちと会談すること
の方が大事だからね。特にリョーマとは会ってみたかった。そしてやっと
納得がいった」
「??」
「奴は話すたびに君のことを自慢するのだよ。それも君に会ったことのな
い私に嬉しそうにだ。会わせろと思うのは当然だとは思わんかね? なの
に奴は言うんだ。嫌だと。この目の力を使って本気で殺そうかと思ってし
まったよ。わはははは」
「……すいません」
「君が謝ることはない。悪いのは奴だ。そうそう、彼等は一緒ではないの
かね?」
「兄さんたちと一緒らしいです」
「鋼の錬金術師と?」
「くだらないケンカばかりするから置いて来たんス♪」
「そうか。ならば待たねばなるまいな。彼等がいなければどうにもならん」
「っス」
「では、これから夕食でも食べに行くかね? 私のとっておきの店を紹介
しよう」
「ほんとっスか?」
「もちろんだとも。君も一緒に行くだろう? アルフォンス」
「ご一緒していいのでしたら」
「では、決まりだね」
リョーマが会いたかった人物とはなんと大総統だった。しかも大総統自
身もリョーマに会いたかったという。二人の間には一体どんな関係がある
のだろうか? そして何かをするためにはどうやら置いて来たはずの彼等
が必要という。ではリョーマのしたことの意味は!? ただの嫌がらせで
穏便に済むのだろうか……。
とにかく全ては彼等がきちんとここセントラルに辿り着いてからである。