師匠'sと保護者'sから見事逃走を果たしたリョーマ。それはどうやら計
画的なものらしい。かばん一つといつの間にか合流したカルピンをお供に
リョーマの逃走旅行は始まったのだった。
「リョーマ〜。上手くいったみたいね」
「当然♪」
「はい、じゃあコレ。約束のお弁当。気をつけて行ってらっしゃい」
「ありがとvv じゃあ行ってくるね、ウィンリィ」
汽車に乗り込んだリョーマとカルピンを見送るのはエドの幼馴染み。ど
うやらウィンリィもこの逃走劇に協力していたようだ。
目的の駅に到着し、汽車から降りるとそこには……
「よぉ! お疲れ、リョーマ」
「ハボック少尉!! 迎えに来てくれたんスか?」
「おぉ、ホークアイ中尉に頼まれたからな。っと、荷物はそれだけか?」
「特に必要ないでしょ?」
「まあな。じゃ、行くぞ」
「っス」
車の後部座席に座るとリョーマは珍しそうに車内を観察し出す。
「……なんか違う」
「ん〜?」
「俺たちの世界の車と違うなって」
「そうなのか? まぁ、どうでもいいが。それより先ずはどこ行くんだ?」
「少尉は仕事いいんスか?」
「俺の今日の仕事はリョーマの運転手だ♪ ちゃんと中尉から指令書を貰
ってるぞ。見るか?」
「そ。どこ行こ……。ここから一番近いのって」
「軍部だな」
「ん〜。じゃあ軍部でいいっス。おねーさんにも会いたいしvv それにあ
の人もいるんでしょ?」
「あ〜。今日は無理かもなぁ……」
「忙しいの?」
「あぁ中尉は大丈夫だろうが、あの人はなぁ。明日だったら大丈夫だとは
思うんだが……。アポ入れとけ、アポ」
「じゃあ、そうするっス」
「で、どうなんだ修行の成果は?」
「基本は出来たんだけどさ。応用はまだ早いって……。しかも、以前にお
ねーさん呼んだから当分の間禁止令くらってさっぱりっス」
「ははは。まぁ、中尉はキツイはな。大将と大佐にとっては……」
「おねーさん、いい人なのに?」
「それはリョーマ限定だ。まぁ、大将もバカなことさえしなけりゃリョー
マと一緒なんだがな」
「ふ〜ん」
「おっ、着いたぞ」
「先に行っても大丈夫っスか?」
「あぁ。たぶん入ってすぐに中尉がいると思うから。勝手に探検するんじ
ゃねーぞ」
「……ちっ」
「するつもりだったんだな……。大人しくしてろよ」
「……仕方ないっスね。釘刺されちゃったし。おねーさんとこ行こっか、
カルvv」
「ほあら〜」
「そうそう、大人しく頼むぜ」
「待ってたわリョーマ君」
「どもっス」
「あの人たちにはバレてない?」
「当然!!」
「そう。じゃあ、まずはお茶にしましょうか? リョーマ君用にファンタ
を取り寄せてあるから」
「えっ!? ホント?」
「ええ」
「ありがと、おねーさんvv 大好きvv」
「ありがとう。私もリョーマ君のこと大好きよ。さぁ、行きましょ。実は
彼も来ているの」
「!? そうなんだ」
「そろそろ来る頃だろうって、待ってるわ」
「うん。俺も会うの楽しみ♪」
リョーマの逃走先はどうやらセントラル。それも軍本部ときた。しかも
リョーマが来ることを軍部の人間は当然のように受け入れている。一体い
つの間に連絡を取ったというのだろう?
しかもどうやって顔を知ったというのか……。ホークアイ中尉に関して
は以前のことがあるのだが、それだけで済むものではない。そして、あの
人とは? 彼とは? 次回を待て!!