数日前にリョーマの召喚によりホークアイ中尉に説教された二人は今な
おリョーマに頭が上がらない。いつ彼女を召喚されるか分からない恐怖に
怯えながら毎日を過ごしている。
解決策はそれはもう簡単なこと。ロイ・マスタング大佐がセントラルに
帰って、早急に机に溢れかえっている仕事を片付ければいいことなのに彼
は帰ろうとしない。日々を愛し……いえいえ、大事な部下のエドワードと
過ごすために命を張っているのだから……。
そして、そんなある日の出来事。
「なんだコレ?」
リョーマとロイを置き去りにして一人で買い物に出ていたエド。帰り道
エドの目の前には……
「あれ? コレってどっかで見たような…………。あぁ! アレか。仕方
ない拾ってくか」
「ねぇ、ロイ」
「何かな?」
「錬金……」
「鋼のに禁止されてるだろう?」
「……むぅぅ」
「拗ねても駄目だよ。君は錬金術といいながら、すぐ召喚術を使うのだか
ら。鋼のに禁止令を出されても仕方ない」
「……どケチ。ヘタレ。変態佐。ストーカー。年中無能」
「な、な、な、なんてこと言うんだ。私は雨の日は無能だがそれ以外は無
能ではない!! 一体誰にそんなウソを教えられたんだい!!」
「エドがいつも喚いてる。この前来たお姉さんも言ってたっスよ? 違う
の? まぁ、俺には全く関係ないっスけどねvv」
「……(絶対に確信犯だ/泣)」
「……カル〜、一緒に寝よっかvv 大佐で遊ぶのも飽きたし」(やはり確
信犯……)
「ほあら〜」
「眠っていれば、間違いなく鋼のの次に可愛いのに……」
「“誰”が“何”だって? この無能!!」
「き、君まで……(泣)」
「あぁ、何ウソ泣きしてんだ? 変態佐。ってリョーマ寝てんのか……。
仕方ねぇな、起きるまで待つか」
「少し前にね。退屈だったみたいで……何だねソレは?」
「あぁ、拾った」
「捨ててきなさい!!」
「いや〜、なんかアルの気持ちがよく分かるってゆーかさぁ。なぁ?」
「今更分からなくてもいい。しかもそれは猫とか犬とかの類ではないだろ
う!!」
「いや、変わんないって」
「それは人だろう。一応人権というものがある」
「じゃあ、尚更捨てるのはどうかと思うけど?」
「いや、しかしだね……」
「まあ、最初から大佐の意見なんて聞く気はないけどな。だってコイツ等
リョーマの関係者だ」
「何故分かるんだね?」
「着てる服の材質が一緒だし、雰囲気っていうかオーラって言や〜いいの
か? ソレが一緒だからな」
「しかし、そっちの彼はともかくこっちの彼は駄目だ!!」
「はぁ? 何だよソレ……」
「私の第六感が叫んでいる。そいつとは関わるなと」
「やっぱり無能……」
「んぅ……何? ウルサイ……」
「起きたのか?」
「……起こされた」
「コイツ等リョーマの知り合いだろ?」
「……………………景吾! キヨ!!」
「あぁ?」「んぁ?」
「何で? どこで拾ったわけ?」
「その辺」
「そう。……で、二人はどうして来たんスか?」
「「お前が(リョーマ君が)消えるからだろーが(でしょ)!?」」
「俺のせいじゃない……」
「……まぁ、無事で何よりだ」
「そうだねぇ」
「鋼の、私たちは……」
「それ以上言うんじゃねぇ。今すぐ追い出すぞ」
「「……」」
漸くリョーマは保護者(?)と再会することが出来た。しかし、エドは
ともかく、ロイはどうやらどちらかに何かを感じているようだ。それは一
体何なのか? ロイ自身にも分からない。しかし、決して良いものではな
いことは確かであった。
今回は一気に二人も新たな仲間が増えた。しかし、再会にのみ意識が向
いているリョーマはエドたちに紹介どころか、エドたちの存在自体を忘れ
ていることに未だ気付いていない。
こんな彼等はこれから先上手くやっていけるのか。
先行きは途轍もなく不安である。