何故かイーストシティにいるべきはずのエドワードの上司ロイ・マスタ
ング大佐までもがエルリック家に居座りついてしまった。半分はリョーマ
がナンパしたためだが、半分は彼の意思というか欲望だ。そして、それは
家の主人であるエドワードを綺麗に無視した結果だった。なのでエドワー
ドの機嫌が良いはずがない。
天敵と言っても過言ではない大佐をなんとか追い出そうとリョーマの指
導そっちのけで日々を過ごしていたある日の出来事……
「エド、こんな感じでどう?」
「まあまあだな」
「……」
「なんだよ。その目は。俺は正直なことしか言ってねーぞ」
「そうかな? 私には良く出来ていると思うが?」
「ウッセー、大佐!! コイツは俺の弟子なんだ。後から来た分際で横か
ら余計な口出しすんな!! てか、早く帰りやがれ。一体いつまでいるつ
もりだぁ!!」
「何を言ってるんだい。私の家はここだよ。リョーマから許可は貰ったか
らね。ねぇ?」
「俺は許可してねぇーーーー!! ここの主は俺だ! なんでリョーマに
許可求めてんだこのクソ大佐!!」
「……君は相変わらず上司を上司とも思わないみたいだね。一度お灸を据
えなければいけないみたいだね」
「おう、望むところだ!! 受けて立ってやらぁ!!」
二人はリョーマを置いて外に飛び出して行ってしまった。
当然リョーマは面白くない。一応師匠である二人が弟子である自分を放
って二人で錬金術で楽しもうとしてるのだから(注:リョーマにはそう見
えている)
「……」
「ほあら〜」
「ね、カルvv どうしてやろうか?」
「ほ、ほあら〜(汗)」
「大丈夫だよ。カルには何もしないからvv」
「ほあら〜(安堵)」
「そうだ!」
ポンッと手を叩くとリョーマは電話に手を伸ばし、どこかにかけた。
「エド! ロイ!」
「今、取り込み中だ。後にしろ!!」
「もう少しだけ待っててくれないかい? 後で見てあげるから」
「エドもロイも俺なんかどうでもいいんスね……っ…ふぇ」
「「えっ!!」」
振り返ると泣き出しそうなリョーマの顔があり、戦闘真っ最中だったが
二人ともピタッと止めてリョーマに駆け寄る。
「わ、悪い。大人げなかったよ」
「私もつい調子に乗ってしまった……」
「「謝るから泣きやんでくれ(泣きやみなさい)!!」」
「……じゃあ、ちゃんと見ててっス」
「「ああ」」
(かかった!)
「えいっ!!」
叫びとともに、いつものようにエドの真似をして地面に手のひらをつく。
「何をやってるんですか二人とも!! こんな小さい子泣かして。そこに
正座しなさい!!」
「「ホ、ホークアイ中尉っ!?」」
「聞こえなかったんですか?」
ガチャリ
「「き、聞こえてました!!」」
「大佐。仕事をサボって何をやってらっしゃるんですか? この数日間で
どれだけ仕事が溜まってると思ってらっしゃるんですか? 覚悟のうえで
ここで、エドワード君と遊んで、小さい子泣かせていたんですよね?」
「い、いや……」
「エドワード君。お母さんに教えて貰わなかったのかしら? 自分より小
さい子をいじめてはいけないと。しかも大佐と一緒になって……」
「い、いじめてなん……」
「言い訳しない!!」
「「すいません。すいませんっ」」
二人は仲良く同じタイミングで何度も何度も地面に頭がつくほど深く土
下座している。
「いいですか……(以下略)」
「成功だね、カルvv」
「ほあら〜」
こうしてリョーマはエドとロイの弱点を握った。二人の弱点をリョーマ
に教えたのは一体誰なのか?
リョーマは着実に最強への道を歩んでいる。何せホークアイ中尉を味方
につけたのだから……
二人は夕食の時刻まで正座させられ、長々とホークアイ中尉のお説教を
受けたらしい(合掌)