「ここどこだろ?」
気付いたらまたどこかの世界に飛ばされていた。しかも今回は跡部も千石
いない時だったため、たった一人だ。
見渡す景色は緑溢れる田舎の田園風景。
人もほとんど通ることがなく、遠くの丘の辺りに何軒かの家が見えるくら
いだ。道は舗装された道路ではなく自然な土のもの。それが太いものが一本
通り、後は数本の枝分かれのみだった。
「あ〜〜!? また失敗したぁ!!」
「誰かいるっスか?」
声のした方を覗くと緑の芝生の上に座り、頭をガシガシとかく少し長めの
髪を後ろで一本の三つ編みにしている金髪の少年が一人。その前には数冊の
分厚い本と地面には円に色々な文字と模様が描かれていた。そしてその円の
中心には黒い物体がプスプスと微かな煙をあげていた。
「誰だ!?」
「え〜っと、青学一年越前リョーマ」
「ふ〜ん。俺はエドワード・エルリック。国家錬金術師だ! ……って、ち
がぁーーう!!」
「何が違うわけ? エドが誰だって聞くから名乗っただけじゃん」
「だからって、素直に名乗るな!! しかも何俺のこと勝手に“エド”って
呼んでんだよ!!」
「長い。面倒」
「どこがだよ!!」
「で、何してたわけ? エドは」
「……人の話はちゃんと聞けよ」
「聞いてるよ。ただ答えてないだけ。そんなことよりも何してたわけ?」
「錬金術の研究」
「錬金術? 何スか?」
「お前そんなことも知らないのか!?」
「知らない」
「仕方ねぇな。簡単に説明するとだな、人は何かの犠牲無しに、何も得るこ
とは出来ない。何かを得るためには、同等の代価が必要だ。それが錬金術に
おける等価交換の原則だ。そしてその等価交換の原則と自然界の法則に従っ
た科学技術が錬金術だ。一の質量からは同じく一のものしか作れない」
「魔法とか術とは違うんスか?」
「違う。アレは無から有を生み出したり、この自然界にいる精霊とか神とか
の力を契約し、借りることにより使用できる力だ。よく似ているが異なるも
のだ」
「……面白そう(ボソッ)」
「あぁ?」
「俺にも出来る?」
「は?」
「だから、俺にその錬金術教えてvv ダメ?」
「うっ……仕方ねぇなぁ(昔のアルみてぇ……)」
「ありがとエド」
「俺は厳しいからな。容赦しねーぞ」
「望むところ!!」
こうしてリョーマの錬金術の修行が始まるのだった。