「……誰?」
「……ハァ」
振り返った二人の反応はそれぞれの心情。
リョーマのは当然。鳳は邪魔されたのと、厄介な人達が来たことへの諦めである。
そう、氷帝と青学のレギュラー陣が勢揃いしていた。
「誰っすか?」
「僕は青学3年の不二周助だよ。リョーマ君だっけ? 氷帝なんかより絶対に青学に来るべきだよ。
氷帝なんかに行くと大変なことになるし、何より君の身体が危ないから」
「? 何で俺が危ないの??」
不二の言葉の意味を全く理解出来ていないリョーマは疑問が増えるばかり。
不二は自分から勝手に自己紹介したが後の鳳以外は未だ分からない。その上不二の言葉で固まって
いる者が8割ほど。どうしようもない。
「おい、不二今のはどーゆー意味だ。俺たちが街中にごろごろいやがるヤツラと同じだとでも言いた
いのか。ア〜ン?」
「良く分かってるみたいだね。伊達にサル山の大将やってるわけじゃないみたいだね」
「てめぇ! てめぇが俺様のこととやかく言えんのか! むしろ一番危ねーのはてめぇだろ、不二」
「僕のどこが危ないっていうのさ。リョーマ君が君の言葉まにうけでもしたらどうしてくれるのさ。
リョーマ君、あんなヤツの言う事は聞いちゃ駄目だよ! 僕弟欲しかったから、青学に来てくれたら
何でも手取り足取り教えてあげる。だから、ね!」
跡部の言葉も軽くかわし、嘘八百でリョーマを落としにかかる。
不二には正真正銘血の繋がった弟がいる。
ほんの少しの間だが確かに青学に席を置いていたので青学3年は全員知っている。なので弟が欲し
かったと言った瞬間全員の心はいつになく一つになったのだ。
(裕太をどうした!?)
と……。
けれど余計な事をして不二の恨みを買えば明日を無事迎えられるかの保証がない。
上手くいけばリョーマというらしい(きちんと自己紹介をしたわけではないので)可愛い少年と同
じ学校に通えるのだ。そして鳳の言葉が本当ならテニスも上手いという三拍子揃っている。少し悔し
いが邪魔をする理由がないのである。
「アンタ青学のヒトなんだ」
「そうだよ。だから、ね」
「黙って聞いてりゃ、不二いいかげんにしろよ! 鳳の知り合いみたいじゃねーか。だったら氷帝に
来るのが普通だろーが」
おさまったと思った途端に跡部と不二の低レベルな言い争いが再度開始される。
「ちょた。この二人ウルサイ!!」
「すいません。あれでも氷帝の部長なんで、俺では……」
何気に酷いコトを言っているが誰も追求する者はいない。密かに鳳も腹黒だったりする。
「でも、本当にリョーマ君はどこがいいんですか? 俺の希望としては一緒に通いたいですけど、無
理強いは出来ませんし……」
リョーマに対してだけは無条件に優しい鳳に、いや、普段も特に何かをしなければ別段問題はない
のだが、いつにましてもいい人ですオーラと笑顔を出しているため、氷帝レギュラー陣はひいていた。
跡部を除いて。
「ちょた、俺決めた。青学に入る」
「本当に!?」
「何でだ(や)!?」
リョーマの宣言に学校別で綺麗に揃った。言い争いをしていた二人も当然含めて。
氷帝のものたちは何でだと詰め寄るが、鳳によって阻まれる。
「邪魔するんじゃねぇ、鳳!」
「お前は気にならへんのか?」
「そーだぜ鳳。むしろ、お前が一番焦んじゃねーの? 何でそんな落ち着いてんだよ!」
「先輩たちウルサイです。リョーマ君の機嫌がまた悪くなるじゃないですか。少し静かにしてて下さ
い」
笑っているが実際には笑っていない。鳳の顔を見た青学の者(一人を除く)はこの時思った。
どこかの誰かにそっくりだと……。
「理由聞いてもいいですか? もちろん差し支えなければですけど」
いつになく真剣な眼差しでリョーマを見つめる。
「ちょたと一緒に登校したり下校したりテニスしたりはすごい魅力的なんだけど、俺としてはちょた
と試合をしたいっていうのが一番の理由かな? さっき少しだけ青学の人のプレイ見たけど、この人
たちとやるのもすごい楽しみ! でもやっぱりちょたと戦いたいのが一番だから、俺青学に行く!
ごめん、ちょた」
二人の身長差では当然リョーマが見上げる形となる。
美少年と言っても過言ではないリョーマに上目使いで言われた言葉に従わない者などいないだろう。
もちろん鳳はそんなことをされずとも、自分が叶えられることは無条件で叶えるだろうが。
「分かりました。一緒に全国は目指せませんが、都大会や関東大会で戦えるのを楽しみにしてます。
それまで負けないで下さいね」
「何ソレ! ちょたは俺が負けると思ってるわけ?」
鳳の発言にリョーマの機嫌が急降下した。
頬を軽く膨らませた状態は周りの視線を一気に集めたが、本人は自覚などあるはずもなく全く気付
いていない。
「リョーマ君が負けるなんてみじんも思ってないですよ。さっきはリョーマ君に言ったんではなく、
青学の皆さんに言ったんですよ」
「へぇ〜。君は僕らが関東なんかで負けると思ってるんだ。心外だなぁ。これでも全国目指してるん
だけど。昨年はちょっと油断して氷帝なんかに負けたけど、今年はリョーマ君も入ってきてくれるし、
青学の勝利は明らかだよ。なんなら今ここで試してみるかい? 僕は全然構わないよ」
「遠慮しておきます」
「逃げるの?」
「いいえ。リョーマ君がいるのに貴方に構ってなどいられないからです」
毒舌の応酬である。
周りは一歩ひいた所で、震えてたり、青ざめていたり、必死にメモを取っていたり、面白そうに観
戦したり、無視を決めこんでいたりと様々だった。さすがのリョーマもここにいるのはまずいと感じ、
避難しようとしたが遅かった。
「リョーマ君。鳳君なんかと一緒にいたら、純粋な君まで真っ黒になってしまよ。だから、青学に来
るんだから、この際彼との縁を切ったらどうかな?」
「何をふざけたことを。僕らは親が親友同士なんです! 仕事も一緒ですし、俺たちも小さい頃から
いっぱい遊んだんです。貴方にとやかく言われる筋合いはありません! って、どうしたんですか?
リョーマ君」
「ちょたと俺、縁切られちゃうの?」
ジャージの袖をクイクイと引っ張られ振り向くと、悲しそうなリョーマの顔があった。
「絶対にありえませんから! アノ人の言葉は聞いちゃダメです。俺はリョーマ君が大好きですよ」
「俺も……好き」
「えっ!?」
今まで自分からは何度も言った覚えはあったが、リョーマからは小さい頃は数回あったが、最近は
全くなかった。その上、周りに人がいる所では皆無だったため、鳳は自分の耳を疑った。
「だから、俺もちょたが好きって言ったの!! 言っとくけど、友達の好きじゃないからね!!」
顔真っ赤にして叫ぶと、全力疾走で来た道を戻っていく。
「///」
告白された鳳も見事に顔が熟れたトマトのように真っ赤になっていた。
暫く予想外のことに呆然と佇んでいたが、リョーマが視界から消える直前に我に返る。
「すいません。早退します!」
叫ぶと同時に返事も聞かず、リョーマの後を追っていく。
「いい度胸だね。僕を無視したうえに、僕のリョーマ君に告白するなんて。どうしてくれようか……」
「鳳のヤツ、俺様の返事も聞かず帰るとはいい度胸だ……」
一番リョーマに興味を持ったというか、一目惚れし勝手に自分のモノと考えている二人は鳳を排除
するための策をそれぞれ自分の世界に入り考え始めた。
(頑張れ、鳳/長太郎)
二人以外の氷帝と青学の全員が鳳に激励の言葉を送ったとか。
「リョーマ君!」
「っ!? ///」
足の長さの違いにより、無事リョーマに追いついた鳳は強引に腕の中に閉じ込めた。
公衆の面前で告白し、次には抱き締められリョーマは鳳の顔をまともに見ることが出来ず、恥ずか
しさからうつむいてしまう。耳まで真っ赤になっているため鳳にはバレバレであるが。
「リョーマ君。改めて言います。俺はリョーマ君が好きです。何よりも大事な存在です。俺と付き合
って下さい」
「……少し屈んで」
「こうですか?」
訳がわからないままリョーマのお願いに従う。内心は返事が気になって仕方なかったのだが。
「ちょたは俺がいないとダメだから、付き合ってあげる」
同時に桜色のツヤツヤの唇で鳳の頬に風が撫でるかのように軽くキスをするのだった。
そして、鳳もリョーマにお返しすると、先程の生意気さはどこにいったのか更に顔を真っ赤にする
リョーマがいた。
再び鳳が抱き締めたのは言うまでもない。
END
◆◆コメント◆◆
はい、またまたすみません(-_-;)
昨日中にきちんと仕上がってはいたのですが、力尽きて寝てしまいました(死)
なので、本日UPになりました。
取りあえず、無事完結出来て良かったです!!
この話は20.5巻が発売して、鳳の親が弁護士だと知った時に考えついた話です。
なのに何故今頃?とかのツッコミはなしですよ(笑)
そして、この鳳リョは続きます。ハイ(←完結じゃねーよ!!)
不定期で、シリーズとして書きます。どこで終わるかは分かりません(死)
管理人の妄想次第ですm(_)m
2005.2.13 如月 水瀬