Destiny 1



  



 コバルトブルーの青空が地平線の彼方まで続いている三月某日。

 何機もの飛行機が無事にフライトを終えて、待機場所に並んでいる。もちろんその中に

は、これから出発する便も含まれているのだが……。

 入国審査を終えた人々が世話しなくゲートから出てくる。

 殆んどがスーツを着用していることから、ビジネスマンだと推測出来る。他には中年の

夫婦や友人といった感じの人々であった。

 その中に外見からは小学生としか見えない少年が一人でゲートを潜った。その少年を視

界の片隅に入れてしまった者は、彼から視線を外すことは出来なくなった。誰もが一瞬に

して彼に魅了され、釘付けにされている。そう誰も、どう見てもまだ義務教育を終了して

いないだろう少年に対し怪訝に思うことなく、あまりにも人を惹き付ける彼の容姿に全身

の神経が集中していたのだった。

 その容姿はというと、漆黒のサラサラヘアーで太陽の光を浴びれば、天使の輪が出るだ

ろうことは容易く予想出来る。特に特徴的だったのは、意志の強そうな大きなアーモンド

型の瞳だった。その瞳は少しの迷いも曇りもなく、一際澄んだ色をしている。視点を全体

に移すと、スポーツでもしているのだろう全身に適度な筋肉がついており、余分な脂肪な

どは一切ついておらず、全体的に非常に整った体型である。容姿とも合わせると、これぞ

神が丹誠込めて作りたもうた芸術作品的な人間であろうと彼を目にしたその場の誰もが心

の中で感じたことだった。

 いつものことで慣れているのか、少年・越前リョーマは特に気にしたふうもなくその場

に銅像のように佇む人々を置き去りにして、手に持っていた多少大きめのテニスバックを

右肩に背負うと空港を出るために歩き出した。







 空港を出ると、飛行機から見た以上の綺麗なコバルトブルーの青空が広がっていた。雲

の白と空の青さが絶妙なコントラストを形成しており、見る者の心の疲れを取り払うかの

ような効力を発揮している。リョーマの心も何時間も飛行機という狭い空間に閉じ込めら

れていて、少々疲れが見え始め、それにより気分が少し下降していたのだが、この空を見

て多少は気分が晴れたのだろう。親しい人なら分かる程度でリョーマは口元を綻ばせてい

た。

 リョーマは周りをキョロキョロと見回し、前もって聞いていたリョーマの従姉妹である

菜々子の車を探すが、道路事情で遅れているのか見当たらなかった。

『まだまだだね』

 何がまだまだなのか分からないが、リョーマは車を探すことを止めるとある所に向かっ

て歩き出した。そこには小さな自然があった。木と芝生だけの自然と呼べるのか?という

程度の規模であったが、リョーマの目的を果たすのには十分だった。脇目も振らずその場

所へ行くと、リョーマはテニスバッグを乱暴とまではいかないが無造作に放り出し、太陽

の陽光が一番良く当たっている場所に自身も寝転がる。

『気持ちいーvv』

 芝生の上でゴロゴロと転がり、最高の自然の絨毯に顔をすり寄せ幸せそうな笑みを零す。

誰も見ている者はいなかったが、見ていれば間違いなく、天使の微笑みだと運良く目撃し

た人物もとてもとても幸せな気分になったことだろう。そうしてリョーマはそのまま気持

ちの良い眠りへと誘われた。







「どうした? 柳生」

 ふと立ち止まったノンフレームの眼鏡をかけた高校生くらいの少年に、一房ほどだけを

伸ばし後ろでまとめているこちらも高校生くらいの少年が不思議そうに声をかける。

「…………」

 しかし、届いていないのか返事は無言。柳生と呼ばれた彼はひたすら同じ方向を向いて

いる。

「何かあるのか?」

 今度は返事を期待していないというよりは自身に問いかけるように呟き、柳生と同じ方

向に視線を移動させる。そして彼も思わず固まってしまった。

「…………しかし、気持ち良さそうじゃの〜」

「そうですね。しかし、いくらもう春だといえどもまだまだ風は冷たい。風邪を引きそう

ですね」

「否定はできんのぅ。かといって赤の他人になぁ?」

「でも、小学生を見捨てるというのもどうかと思いますが? 親らしい方はいないみたい

ですし……」

「迷子か?」

「それも少し違う気がします」

「そうじゃのう。堂々と寝とるし……って、おい! どこ行くんしゃい」

 突然歩き出した柳生に向かって待てと叫べども、綺麗に無視され仁王は仕方ないと頭を

ガシガシとかきながら、思いの他軽い足取りで彼の後を追う。

















   ◆◆コメント◆◆        かれこれ2、3年前のプロットを発掘して、        それに少し修正をかけて、始まりました。この話。        無事終われるのでしょうか?(死)        そして、CP。まだどうなるか分かりません。        一応管理人の心の中では決まっているつもりですが、        まだどうなるのか本当に分からないので保留ということで……        そう、まだ最後まで書いていないのです(死)        たぶん3話くらいで終わる予定です。        では、次もお付き合い宜しくお願いします。                  2005.11.18 如月水瀬