「で、リョーマ。相談したいことって何?」
「うん、あのさ……」
「アノ人のこと?」
「っ!?」
ズバリと言い当てられ、リョーマは顔を真っ赤にしてうつ向いてしまった。
「リョーマ可愛いvv」
叫ぶと同時に杏はリョーマを抱きしめている。こうなると彼女の気が済むまで
どうにもならないことを実地体験で知っているリョーマは好きにさせる他なかっ
た……。
「……気がすんだ?」
「少しだけ、ねv」
少しだけかよ!!という突っ込みを何とか飲み込めた自分をリョーマはすごい
と思った。そして、杏のことを少し冷めた目で見てしまうのも仕方ないといえよ
う。
「……話聞いてくれないなら帰る」
「ダメよ! もう少ししたら桃城君も来るんだから」
「桃先輩? 何で? もしかして俺デートの邪魔した?」
杏と桃城は一月ほど前から付き合っている。仲を取り持ったのはリョーマなの
だから当然リョーマは知っている。しかし、今日二人が会うことは知らなかった
のだ。
「違うわよ」
「何が違うの?」
「今日デートだってこと。約束はリョーマの方が先だったもの」
「じゃあ何で?」
「電話してきた時のリョーマの声がいつもと違ったから。だから、桃城君に学校
でのリョーマの様子を聞いてみたのよ。そしたら、なんかおかしいって言ってた
から、呼んだのよ」
「俺、おかしかったんだ……」
自分ではいつも通り振る舞っていて、不自然な挙動はとっていないつもりだっ
たがそうではなかったことに驚きを隠せない。そして、それを桃城が気付いたこ
とにも。
常にデータを取ることに精を出している黒縁メガネと逆光の某先輩と常に微笑
みを浮かべ何を考えているか全く分からないうえ、影の支配者と全部員に恐れら
れている魔王と囁かれている某先輩は何も言ってこないのにだ。
桃城の観察眼は思ったよりも鋭かったようだ。
「桃城君にとってリョーマは妹みたいなものらしいからね」
「え?」
「気付いてなかったの? 彼はリョーマのこと凄く大事にしてるのよ。たまに私
が妬くぐらいにね」
「マジ?」
リョーマの言葉に杏はしっかりと頷いた。子供扱いされていることには気付い
ていた。が、そこまで大事に思われていたとはリョーマの思考の範疇にはなかっ
たため、驚きは大きかった。
ピーンポーン
タイミング良く玄関のチャイムが鳴った。
「来たみたいだね」
ちょっと行ってくると言って杏は部屋を後にした。
「大丈夫か?」
「…………クッ、フフ……」
「オイ……」
「や、俺そこまで弱くないっスよ。桃先輩に心配させるぐらいおかしかったみた
いだけど」
部屋に入るなりの桃城の自分を心配する言葉に驚きの後にすぐさま笑いがこみ
あげてきて抑えることができなかった。そんなリョーマを少しだけ憮然とした表
情で睨むのはいた仕方なかった。
「とにかく立ち話もなんだから、皆座る!」
杏の言葉で桃城も適当に腰を下ろした。
「で、相談したいことって何なんだ?」
「最近アノ人のコトが頭から離れなくてさ、夜もちゃんと眠れないんス……」
「「ようやく自覚したのね/したんだな」」
リョーマが恥ずかしそうに頬を紅く染めながら小さめの声で告白すると二人は
声を揃えた。
「どーせ俺は鈍いっスよ……」
「拗ねない。拗ねない。そこがリョーマの可愛いトコなんだからv」
そうなのかな?と再び首をコテンと傾げるリョーマに杏はやはり我慢出来ず、
先ほどと同じ行動をとっていたりする。話が進まないと桃城はリョーマから杏を
引き剥がし脇道にそれた話をもとに戻す。
「じゃあ、やっと告白すんだな?」
「え!?」
「え、じゃねーだろ。自分の気持ちに気付いたんだから、次は告白だろーが」
「でも……」
「何かあるの?」
言葉を濁すリョーマに杏の声のトーンも幾分か下がる。
「アノ人にはもう好きな子がいるって、桜乃と朋香が……」
(確かにアノ人には好きな人いるわよね)
(ああ)
(間違ってはいないけど、リョーマにとっては……)
(考えも及ばない……か?)
(というか、他人の恋愛には敏感なのに自分のこととなると、信じられないくら
い鈍感なのよねぇ)
(……あぁ、確かに)
(でしょ。どうしよっか?)
(簡単だろ。コイツの性格把握してたら)
(……それもそうね)
以上がアイコンタクトで交わされた二人の会話だった。
時間にして一分もかからなかっただろう。
「で、越前は自分の気持ち伝えずに、逃げるわけだ?」
「なっ!? 誰も逃げてなんか」
「そんなことでしないってんなら逃げたと一緒だぜ」
「…………」
「別に玉砕したっていいじゃねーか。てか、俺ん時にそう言ったのはお前だろー
が。自分だけ逃げるなよ。な?」
「っス。明日行ってきます」
「おう!頑張ってこい!」
「頑張ってね、リョーマ!」
((明日は荒れるな/わね……))
同時に励ましながら、心中も全く同じことを考えている二人は息ぴったりであ
る。
次の日の部活は二人の予想に違わず荒れた。それはもう部員がある人物が放つ
不機嫌最高潮のオーラに当てられ怯える者、意識を失う者、逃亡した者が続出し
たほどだった。そして、原因であるリョーマはその日の夜、相談にのって貰った
二人に結果を報告した。
その声は幸せに満ち溢れていたらしい。
room top
◆◆コメント◆◆
リョーマの相手は誰でしょう?
管理人にも分かりません(^_^;)
知っているのは、リョーマ・杏ちゃん・桃のみです♪
あ、あとはリョーマに告白された幸せ者の彼ですね(羨ましい……)
そして、何故この話のリョーマが女の子なのかというと
ただ単に、リョーマに抱きつく杏ちゃんを書きたかったからですvv
中一といえど、さすがに男の子に抱きつくのはどうかと思ったので
リョーマの性別を女の子にしたのです。
そして、妹を心配するいいお兄ちゃんの桃も書きたかったのです。
誕生日は全く関係ないのですが、取りあえず記念ということで!!
2005.07.29 如月水瀬