木漏れ日


  


 5月5日は子どもの日。

 日本では国民の休日で世間一般は休みである。

 リョーマも学校自体は休校だったのだが、所属している部活は如何せん名門の

男子テニス部。部活が休みのはずがなかった。しかし、顧問である竜崎スミレに

用事があったため、部活は午前中のみとなっていた。

 レギュラー陣のアイドル的存在のリョーマは当然ながら、お昼を食べて帰らな

いかと誘われた。けれど、これまでの経験上すぐに開放されるとは雀の涙ほど思

っていなかったので、なんとか彼等の誘いをかわし、恋人の元へ急いでいるのだ

った。









「もう終わってるかな?」

 ケータイの時刻を気にしながら、恋人の通う学校氷帝学園を目指してひた走る。

「……まぁ、待ってればいいよね?」

 自己完結すると頭の中を綺麗にして、全速力でひた走った。





「やっぱりまだやってる。どこで時間潰そう……」

 コートでは予想通りまだ氷帝のレギュラーたちは練習に励んでいる。

 リョーマはコートが見える距離で且つ、ゆっくり出来る場所はないかと、大き

な瞳をキョロキョロさせる。

「あっ」

 太陽の光がふんだんに当たり、ぽかぽかしているだろうと予測出来る大きな木

の根元。小さいリョーマが寝っ転がるには十分な広さ。リョーマは嬉々としてか

けて行く。

「あっ……」

 今度の声は先ほどと比べると、酷く落胆したもの。先客がいたのだ。

「せっかく見つけたのに……」

「んぁ……?」

 リョーマが呟いた瞬間、今まで気持ち良さそうに睡眠を貪っていた先客、金に

近い薄い茶色のクルクルした天然パーマの少年が微かに瞳を開けた。双眸は焦点

を結んでおらず、覚醒にはまだ遠いことを告げている。が、自身の前に誰かいる

ことだけは朧げながらも分かるらしく、その人物リョーマに声をかけた。

「気持ちいいよぉ。一緒に昼寝しよ〜」

「ぅわっ!?」

 寝言のような言葉とともにジローに腕を引かれ、リョーマはスッポリと彼の腕

の中に収まっていた。

「ちょ、ちょっとアンタ!」

 当然焦るリョーマだが、ジローはせっかく手にした適度な温もり、最高な抱き

心地の人物を手放すはずがなかった。むしろ、逃がすまいと抱きしめる腕により

一層力を込めるのだった。無意識に。







「ん! ……くっ! ……このっ!!」

 なんとか腕の中から抜け出そうと試みるも、無駄に体力が削られるだけだった。

その内、強制的に抱きしめられているのだが、ジローの温もりが伝わってきて、

元々部活が終わるまで昼寝でもして待つつもりだったため、次第にリョーマの意

識はトロンとしてきた。

 先に気持ち良さそうな夢の世界に旅立っているジローに一度目を向けると、

「まあ、いっか」

 と寄り添うようにしてリョーマも旅立っていった。











「……んぅ?」

 リョーマが寝入って少しすると、ジローが再び寝惚け眼を開けたのだった。

「アレ〜。このコ誰だっけ? どっかで見たことある気がするんだけどな〜。…

………ま、いっか。気持ちイイC〜♪」

 一人呟くとジローはもう一度しっかり抱きしめ直すと三度目の眠りに入ってい

った。









 二人の幸せな時間は部長である跡部景吾の終了の声により打ち切られた。

 そして、自分の恋人をある意味寝取られた(笑)リョーマの恋人鳳長太郎は黒

い、くろぉいオーラを一週間ほど纏い続けたという。




















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   ◆◆コメント◆◆       取りあえず終わっときます(^_^;)       誕生日全然関係ないんですが、ジローが幸せなんで良し!       ということで…………       そして、リョーマの恋人がちょたなのは、       ちょたのシリーズの番外編という管理人の勝手な設定のためです(死)       裏話として、この後一週間氷帝はまともな部活出来ていません。はい。       ちょたのオーラのおかげで(笑)       だって、練習すると必然的に寝取られた(←だから意味が違います!)       ことを思い出すからです!       ちょたはブラックで独占欲強いのです。もちろん嫉妬深くもある!(笑)       ということでジロー、誕生日おめでとう♪         2005.05.08 如月水瀬