月人男(つきひとおとこ)


    夕星も通ふ天道を何時までか 仰ぎて待たむ月人男
   (ゆうづつもかよふあまぢをいつまでか あふぎてまたむつきひとをとこ)



   
綺麗な月の出てる夜は、一人で酒をちびちび楽しむのがイイ。一人なら、わずらわしい上忍の奴らに悩まされることも なければ、恐怖の大酒飲みの某くのいちにどつかれることもねえ。
辛口の酒を引っ掛けながら、窓越しにお月様を見るのもなかなか風流なもんだ。あとは多少のつまみがあれば良し。
他の奴らもこんな風に月を見上げて一杯やってんのかねえ。
…―――ああ、今夜は満月か。


つまんなーい。今夜は誰も晩酌の相手がいないんだもの。アンコは任務だっていうし。アスマは姿が見えないし…
あら、今日は満月なのね。ふふ、とてもキレイ。
たまにはあたしも忍服なんかじゃなくて、上品な着物でも着こなしてみたいものよねえ。でもやっぱり一人はつまんない でしょ?アスマと一緒に飲むのがやっぱり一番楽しいんだけど…何よりストレス解消になるしね。
今からアスマんちにでも酒瓶持って押しかけようかしら。


今日はキレイな満月だからイルカ先生を誘おうと思ってたのに、子供たちの任務にてこずって遅くなり受付所で会えなかった。
仕方なーいよね。アノ人も忙しい人だし。まあたまには慰霊碑に宿る親友たちと杯を交わすのもありかなーって。
あの時にはわかんなかった酒のおいしさも今ならもう十分すぎるほど分かるようになっちゃって。時が経つのは早いのは早い よね、オビト。結局先生と一緒に酒を飲むなんてことも出来なかった。
またいつか、オレが彼岸に行ったら三人で…リンも入れて四人で飲もう。とはいってもヨボヨボになるまでそっちに逝く気は ないんだけどね。あー、しんみりしてきちゃった。オレももう年なのかなあ…。
―――アノ人今何してるんだろ。


今日は活きのいい魚が入ったと魚屋のおじさんに呼び止められたので、酒の肴に刺身にしようと思って購入した。折角だからカカシ さんを誘おうと思ったのに、シフト違いで会えなかった。ま、久しぶりに一人で飲むのもいいか。一日の疲れも酒を一杯煽ると 流されていくような気がするから不思議だ。
…今日は満月なのか、すごく綺麗だ。冴え冴えとした月はカカシさんを思い出させる。――色も、気配も、輝きも本当にそっくりで、 なんだか一人で飲んでる気がしない。そういえばカカシさんもどこかで飲んでいるのかな。そう考えると心がほんわかとして幸せになる。
…たまには月にカカシさんをなぞらえて、しんみり飲むのもいい。



   月を見てお酒を飲むというネタを思いついたのはチャリに乗った帰り道でした(笑)次の日の模試で余った20分で書き上げました。
   マークシートだったのに必死で何か書いていた陸城はかなり怪しい人だったに違いありません(爆)
   このような形で書いたのは初めてでしたが楽しかったです。テーマは、アスマを狙う紅姉さんとどこか年寄り臭いカカシ(笑)
   月人男とは、月を男性に見立てた言葉です。冒頭の和歌は万葉集から。
   2005 11 13 陸城水輝


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