青春グラフティ



   
13.未来は見えない壁のように

「カカシ、進路はどうするんだ?」
少しためらいがちなイルカの声に、机に突っ伏していた体を起こす。きっと、以前のやり取りを気にしているのだろう。
「…決めたよ。」
あれから少し真面目に考えたのだ。特に就きたい職業はない。けれどもちゃんと親父と話をして、自分なりに興味のある分野を学ぶと決めた。
「お前の希望してる大学の文学部なんだけど。」
イルカと同じ大学を受けるというのは単なる偶然だ。実家から通え、学費も安い。そもそもイルカならもっと難関の大学だって目指せたはずだ。 きっと、保護者代わりの親戚に迷惑や心配を掛けたくないのだろう。
「そっかぁー。じゃあ大学生になってもお前とつるめるな。」
あははと笑って、落ちなければだけど、と余計な一言を付け足すイルカの頭を叩いてやった。
「バーカ、落ちねえよ。」
大学生になってもイルカと友達でいられたら、きっと毎日楽しいだろう。



14.就職活動

珍しく余裕を持って登校できた朝。とあるクラスメイトの机の周りに人だかりが出来ていた。
「おはよう、カカシ。」
「…おはよう、イルカ。」
自分より少し早く来たらしく、鞄から荷物を取り出しているイルカに挨拶を返して、人だかりの理由を尋ねてみる。
「なぁ、何があったんだ。」
「あいつ、就職が決まったんだって。よかったよなー。」
「就職か…。」
同級生が一足先に社会を経験する。それはどんな感じなのだろう。自分がスーツを着て毎日通勤する姿なんてイメージが沸かない。
そんなことをイルカに話したら、俺もだ、という返事が返ってきた。



15.センター試験

とうとう来てしまった試験当日。学区内のとある大学まで試験を受けに行く。
イルカと受験番号は離れているので、別々の教室で受けることになった。自分の席を見つけて周りを見渡す。 他の学校の知らない奴らばかりだ。緊張した面持ちで参考書に目を通している。
(…頑張らないとなー。)
怠け者の自分にしては珍しく、そんなふうに思えた。
――隣で当たり前のように笑っているはずの存在が、今はいないのが少し心細い。





topへ