10.追試地獄 「馬鹿だな。」 「うるさい!自分でも分かってるんだって。」 期末で悪かったグラマーの再テストを受けるはめになった。テスト勉強をサボっていた自分が悪いことは分かっている。 「カカシは勉強やらないのに結構成績いいんだな。グラマー以外は上位なんだろ?」 「誰だって得意な教科、不得意な教科はあんだよ。というか、優等生のお前に言われたくない!」 「要領が大事なんだよ。」 こともなげにそうのたまうイルカに、がくりと脱力した。 そんな要領のよさを活かせるのはお前くらいだ。本当に、敵わない。 11.最後の文化祭 いつもは授業授業とうるさい先生も、今日だけは大目に見てくれる。 地域の高校の中では珍しく、生徒会が計画して、生徒が運営する、うちの学校の文化祭。 先生たちはあまり口出しをしない。 文化部の展示や舞台発表があり、初日はとても盛り上がった。2日目は各クラスでの出し物。3年生は食べ物の模擬店の出店をしている。 ちなみにうちのクラスのメニューはカツサンドだ。 「2人分追加ー!」 「イルカ、パン粉ってどこにあったっけ?」 「うみの君、キャベツの予備どこにしまったっけ?」 騒がしい調理ブースの中、やっぱりイルカは頼られている。それでも、調理を担当している女子たち(男子も多少はいる) はテキパキと分担して料理している。案外うちのクラスの女子は、家庭的な子が多いのかもしれない。 「ほら、カカシ、無駄に顔だけはいいんだから接客しやがれ!」 「うわっ、酷いな〜」 イルカの暴言に傷ついたふりをしながら、それでもおとなしく、カツサンドの乗ったトレーを持ってイルカについていく。 「午後からは体育館で有志ライブがあるんだっけ?カカシも行くだろ?」 「あー、うん。」 行くのがめんどくさいと思っていたライブだが、振り向きざまに掛けられたイルカの言葉に、反射的に頷いてしまう。 いつもはおとなしい生徒たちが騒いで、いつもは厳しい先生たちが笑って、学校全体が喧騒に満ちて。 ――そんな空気は実は苦手で。それでも、イルカといれば楽しいんだ。 12.進路相談 「カカシ、もう進路決めた?」 「いや、まだ。」 来週担任との面談があるのだ。当然話題は受験について。 「もうそんな時期なんだよなぁ…。そういうイルカは、進路決めたの?」 「一応は。」 「そういや、教育学部に行きたいって言ってたな〜。」 人望に篤く、面倒見のよいイルカには、教師なんてぴったりだろう。ついでに学力も申し分ない。 「カカシは?もう進路決めてるんだろ?」 「い〜や、全然決まってないね。」 正直、自分が何に向いているのか、何を学びたいのかわからない。進学したいという気持ちだけは はっきりとあるのだけれど。 「早く決めろよ〜。中途半端な気持ちで進学しようなんて思うなよ。学費出してくれる親父さんにも申し訳ないだろ。」 「…そうだな。」 進学っていうことは、イルカと離れるってことだ。将来に向かって別々の道を歩むということ。寂しいと思っているのはオレだけなんだろうか? |