7.先輩・後輩 「うみの先輩!こんにちは。」 「おう、元気か。」 廊下ですれ違った際に掛けられた、はじけるような声にイルカも笑顔で返す。声を掛けてきたのは少し日焼けした 下級生だった。 「何、部活の後輩?」 「そう、水泳部の。」 イルカの部活での実力は知らないが、イルカの性格から言えば、きっと後輩たちからも好かれるいい先輩だったんだろう。 「帰宅部だったオレから見たら、そんな風に引退しても声掛けてもらえるのは羨ましいなぁ。運動部って部員同士の結束も強い し。」 「そうかなあ…。カカシだって運動神経いいくせに。どこの運動部に入っても多分レギュラーになれたと思うぞ。」 「あ〜、無理無理、オレ協調性ないもん。多分続かなかったと思う。」 「そうだよな、それに大会当日に、寝坊して遅刻してそうだし。」 「コラコラ。それは今日とうとう遅刻して、ペナルティの窓拭きさせられるオレへのあてつけか?」 どうやら口ではイルカに敵わないらしい。 8.やきそばパン 「何食ってんの?」 「ん?やきそばパン。」 おいおい、まだ昼休みになってないだろうが…。突っ込んでやると、イルカは育ち盛りだからいいんだ、と 反論してきた。 「大体なんでやきそばがパンに入ってんだか…。考えたやつは凄いな。」 別にバラバラで食べても美味いものなのに…。今更だがしみじみと考えてしまう。 「カカシも食うか?」 ほらよ、と差し出されたやきそばパンを一口かじる。ソースの香りとパンの香ばしさ、麺の感触が交じり合って複雑な美味しさ が味わえた。 この複雑さって何だか学校そのものに似ていないだろうか?学校には色んなやつがいる。クラスメートとか色んな先生とか。 個性的なメンバーもたくさんいる。混ざり合えば、何だかいい雰囲気になるのかもしれない。 第一、個性的なやつらが多いほど学校って楽しいだろ? 9.放課後恋愛相談室 告白された。 「…好きです。」 「それはどーも。でもオレは今のところ誰とも付き合う気はないから。」 さすがにこの言葉だけじゃあ泣かせてしまうだろうと思って、ごめんね、と優しく囁いておいた。…結局泣かれてしまったけれど。 女の子が泣くのを見るのは苦手だ。上手くあしらえるほど大人でもないし。 電気が消えた薄暗い教室に鞄を取りに戻ると、窓に見慣れた影がシルエットを作っている。 「あれ、イルカまだいたんだ。」 「…だって気になるだろ?放課後に女の子に呼び出されたら、それは愛の告白っで相場が決まってるんだよ。」 どうだった?といわんばかりに野次馬精神を発揮してニヤニヤ笑うイルカが腹立たしい。 「断った。他のクラスのあんまり知らない子だったし。泣かしちゃったけど。」 自慢じゃないが、今まで告白されることは結構あったし、実際付き合ったりすることもあった。だけど長く持つことはなかった。 「そういうイルカは?」 「う…、何度か…告白されたことは…」 確かにイルカはモテる。こんな風にうぶな感じがするけれど、それがまたいいらしい。性格柄誰からも人気があるイルカなら、きっと 女の子を傷つけないような言葉を知っているのだろう。 「…今は男友達同士でうだうだやってるのが楽しいんだよ。」 「…わー、それって寂しいな。」 カカシは呆れたようなイルカの言葉に、フン、と鼻を鳴らした。 だって、オレかイルカにもし彼女が出来たとしたら、今のイルカとの心地よい空間が壊れてしまう気がしたんだ。 |