4.昼休みは戦場
「あれ、カカシ、弁当ないの?今日は食堂?」 イルカに尋ねられ頷くと、イルカは一緒に行かないか、と誘ってきた。 「俺も今日は弁当作る時間がなくてさ。」 両親を早くに亡くし、現在一人暮らしをしているイルカは、普段自炊しているという。 「すげーな。オレんとこは親父と二人暮らしだけど、どっちも料理できないからな〜」 感心して呟くと、イルカはちょっと驚いていた。うちが二人暮らしだと知らなかったらしい。 「だめだぞー、食べ盛りはきちんと食べなくちゃ。」 だからこんなに細いんだな、と揶揄するイルカに、お前も細いだろうが、と突っ込みを入れてやった。 …気にしてんだよ、こっちは。 連れ立って歩いていくと、食堂からカレーの匂いが漂ってくる。食堂内は生徒たちでごった返していた。 「…俺、場所取りしてるから、注文よろしく!」 「あっ、待てコラ!」 さっさと逃亡しやがった優等生に、がくり、と脱力して、カカシは仕方なく行列に並んだ。 あいつの嫌いな混ぜご飯頼んでやる、と誓いながら。 5.テスト期間 「頑張るねえ、イルカちゃんっ」 「うっさい!ちゃんをつけるな、カカシちゃん。」 自分だってつけてるくせに。 テスト期間中は学校は午前まで。放課後教室に入り浸ることは許されず、さっさと帰るように強要される。 多くの生徒たちが一斉に下校するために、道路はごった返す。そんな中、器用にイルカは教科書を広げ、勉強しながら歩いていく。 隣で自転車を押して歩くカカシから見ると、危なくてしょうがない。 (こいつの成績の良さは想像がつくな。) そのひたむきさは、進路をはっきりと描けていないカカシには少し羨ましかった。 6.部室 体育館と運動場に挟まれるようにして、部室は存在する。ところどころ剥がれかけたコンクリートが哀愁を誘う みすぼらしい造りのそれは、もう3年生が足を踏み入れることのない場所だ。 時々イルカはその前に立ち止まる。懐かしそうに、少し寂しそうに。 「イルカって何部だったんだ?」 尋ねると、水泳部、と答えが返ってきた。 「さすが、イルカならではの答えだな〜」 茶化してやると、みぞおちに回し蹴りが入った。…嘘だ、本当は空手部じゃないのか? 「お前は園芸部がお似合いだっ!」 真っ赤になって怒るイルカが面白くて、大声で笑っていたら、マラソン中のどこかの部の女子部員に笑われた。 |