Review No.A-009
最終兵器彼女
原作:高橋しん
製作:東映ビデオ、東北新社、小学館、中部日本放送
毎日テレビ(2002/11〜2003/02)放映終了
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THE LAST LOVE SONG ON THIS LITTLE PLANET
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「AP_HoP」
が
5周年
を迎えるにあたり、私が最近出会った、忘れられないアニメ作品のレビューを掲載したいと思う。
愛する彼女の身体が軍の手により兵器、しかも誰にも決して破壊することのできない最終兵器に改造されてしまうなどという、これほどの悲劇があろうか。・・・彼女の名前は
「ちせ」
。
最初は、無敵の兵器であることを自分の長所と考えようとする「ちせ」であったが、戦闘で幾度となく敵兵を抹殺し、街を消滅させるうちに、最終兵器とはどういうものかを悟り、恐怖におののくようになる。
次第に「兵器」の部分に、心も体も蝕まれていくにつれて、逆に「人間」であり続けたい、「人間」の心を持ち続けたい
という気持ちが強まっていく「ちせ」。そして、敵の攻撃があるたびに、誰にも止めることのできない美しくも恐ろしい最終兵器に姿を変える「ちせ」を正面から受け止めようとする
「シュウジ」
。二人の悲痛な叫びは、見る者の心をわしづかみにして離さない。
映画でいうところの
「R指定」レベルのラブシーンを含む
本作品だが、女性監督らしい美しい描写でまとめている。その一方で、最終兵器であることを自覚した「ちせ」が何気なく発する
「殺す」
という言葉
が、どれだけ恐ろしく聞こえることか。日常から逸脱した極端な体験も、繰り返すうちに何でもないことになってしまうのかと思うと、身の毛がよだつ思いである。
『新世紀エヴァンゲリオン』
以降、心の内面を描いた作品がいくつか出ており、私が知っているだけでも、
『無限のリヴァイアス』
『地球少女アルジュナ』
そしてこの
『最終兵器彼女』
がある。(
『地球少女アルジュナ』
は少し違うような気もするが、雰囲気が似ているので)
『エヴァ』
を除いては、その描写の一種残酷な面からか、ヒット作は出ていない。しかし、この
『最終兵器彼女』
のような、
悲しみに覆われながらも美しい光を放つようなストーリーの作品は、もっと評価されてもいいのではないか
と思う。
攻撃ではなく、自国防衛のために改造された
最終兵器「彼女」
。しかし、「彼女」の活躍が自国の勝利につながることはなかった。最後にはすべてが破壊され、何も残らず、勝者はいない。
「守る」ためには何をしてもいいのか
、という質問の答えがここにあるような気がする。
それでは、真の意味で「守る」ためにはどうすればいいのか?その答えは少々難しいので、これから考えていかなければならない。それが、今生きているすべての人に課せられた重い課題なのかもしれない。
(2003/08/31)
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