アジア・アウトリーチ・AR229

香港に平和があるように

アジア・アウトリーチ・香港 主事 ジェームズ・チャック

 「いと高き所に、栄光が、神にあるように。地の上に、
平和が、御心にかなう人々にあるように。」
(ルカ2:14))

  「地の上に平和があるように」という願いの深い意味について、私は今まで十分に理解していなかった。しかし、 香港におけるここ数か月間にもおよぶ不安の中、今、私たちはこの願いの意味を理解している。
 ある日曜日の午後7 時ごろ、私は帰宅するためにバスに乗っていた。バスは香港で最も忙しい商店街であるコー ズウェイ・ベイを通っていた。商店街といえば、道を挟んだ両側の通りが人でいっぱいになっている様子をご想像い ただけるだろう。ところが今回は違っていた。数えることのできるほどの人しか見当たらなかったのだ。終わりの見 えない不安の中で、香港の経済や商業活動は大きな打撃を受けている。最近香港で起こっていることについて、世界 中の人々がテレビやメディアを通して知っていることだろう。だが、メディアで取り上げられていることがすべてで はない。不安や緊張や敵対やデモがもたらしている影響は、大学、高校、専門学校や家庭、また教会にまで及んでいる。

家族に平和があるように

 一般的に、通りに出てデモをする人々は若い学生だ。彼らの両親は家に残り、自分たちの子どもの様子を見守って いる。普通、西洋の家族に比べると、中国系やアジア系の家族の方がお互いの関係が強い。両親はその子どもたちに 保護的に接する傾向がある。このような親子関係は子どもが十代になっても変わらず、子どもが結婚した後にも続く。 政治的な立ち位置や意見の違い、そして政治的意見を主張する様々な活動は家族間の人間関係に亀裂をもたらしてい る。親たちは政治的な問題を横に置いてでも、自分たちの子どもたちが下校してから外出することを制限している。 また、いうまでもなくデモへの参加など賛成している親は一人もいない。一方、若い人たちはSNSなどによって友 達に誘われて、社会的な重圧の中でも、友達と一緒にデモに参加しようとする。だが、これらの行為の終着点は、さ らなる争い、恨み、心配、涙、そして壊れた人間関係なのである。私たちは今、家庭や家族における平和を必要とし ている。

教会に平和があるように

 すべての言葉、すべての行動、また、あえて「行動しない」ことまでもが政治的に捉えられてしまう状況の中で、 牧師たちはどのようにして異なる政治的立場を支持する人々に神様のみことばを伝えているのだろうか。香港の教 会は長い期間にわたって政教分離を保ってきた。ところが昨今、会衆は自分たちの牧師がどの政治的立場を取るのか を明確にすることを求めている。「あなたが私と同じ立場でなければ、私は出て行きます!」ということだ。牧師の メッセージが最近の状況に合わないこと、また、メッセージが特定の政治的立場を示唆するかのような内容であった りすることから、香港における教会出席率は減少し続けている。特に、高齢者や若いファミリー世代は教会に行くこ とためらっている。それは、駅の近くで騒動が起こり、帰りに何かが起こって地下鉄(MTR)が動かなくなるかも 知れないという不安があるからだ。私たちは教会における平和を必要としている。

ピース・メーカー/ 平和をつくる者

 クリスチャンは平和をつくる者である。2019 年6 月、香港でのデモがまだ激しくなる前に、クリスチャンたちは デモイベントの近くに立って「主にハレルヤ」と賛美して平和の雰囲気をつくっていた。その後、いくつかの教会 団体や教派によって都市のための祈り会が開かれるようになった。最近では、クリスチャン・カウンセラーによる無 料の相談室や、助けを必要としている人々のためにカウンセリング・センターが開設されている。
 不安な社会情勢の中に希望を与えているのがボランティアたちだ。彼らは大理石を清掃し、壊れたガードレールやフェ ンスを修理し、道に落ちている大量のごみを拾っている。ボランティアたちはほかにも、見えない所で多くのことをして いる。彼らがクリスチャンなのかどうかは分からないが、彼らこそ平和をつくっている者たちであると言える。
 私は月に2度、日曜日に、神様のみことばによって励ますために、タガログ語の教会とインドネシア語の教会で奉 仕をさせていただいている。彼らは香港の家族の中で「家政婦」的な存在として働いており、日曜日は貴重な休みの 日である。ところが、暴動や騒動は週末に起こっているうえ、彼らは中国系の人々による接し方で不安を覚えていて、 神様の恵みを必要としている。旺角(モンコック)以外で開催されているデモは、コーズウェイ・ベイや都市の中心 部にて行われているが、そこに滞在している彼らの友達のためにも、私はお詫びをして、神様の恵みを 求めた。香港に平和があるように。

 より多くの人々は分 岐点を捜している。香港のこのような状況はいつ終息するのか。誰もその答えを 出せない。しかし、私たちは、いと高き所におられる神様が御座についておられることを知っている。神様だけが答 えをもっておられる。神様だけが地の上に平和をもたらすことができるのだ。私たちの考えにまさる平和が香港に訪 れるように。みなさんの祈りに感謝したい。





アジア・アウトリーチ・ジャパン・・・アジア・リポート No.229

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OCTOBER - DECEMBER   2019.