アジア・アウトリーチ・AR212

災害の中にある人々に
助けの手を差しのべる

AO マレーシア主事:エリック・ファン



 私は妻と5 月14 日にフィリピンに飛びました。2013年に台風「ハイヤン」によって壊された、東サモールのタ クロバン市にある、グラッド・タイディングズ・チャーチの献堂式に、参加するためでした。この教会に起きたたく さんの奇跡が、彼らとともにこの教会をもう一度立て直す気持ちを起こさせました。台風が吹き荒れ、屋根がはがれ る中、ローリー牧師の6 人家族は教会へと避難したのです。
 教会の講壇として用いられていた大きな木箱の中に、7 時間隠れたのち、嵐が去っていくと、そこに残されていたのは この講壇だけだったのです。この運命的な日に、なぜ家族全員が木箱に入ることが出来たのかは説明できませんでした。 しかし、私たちは偉大で力強い神に仕えており、神にとっては何一つ不可能なことがないことを知っています。
 新しく立てられた会堂を見て、私は喜びに満たされました。それはみなさんの愛と支援が、この日を実現させ、み なさんの協力によってこの教会の壁が再建されたからです。この日は大きな喜びの日となり、集まった人々は再建 されたばかりの教会を、誇らしげに見ていました。会堂は以前よりも良くなっていて、みなに希望を与えるきっかけ となりました。
   彼らの喜びを一緒に分かち合えて、私は幸せでした。同時に私の思いは、遠く離れたネパールにもありました。4 月25 日に起きたマグニチュード7.9 の地震がそびえ立つ山々を裂き、この小さな王国とそこに住む人々を、大混乱 の中に追いやったからです。何の前兆も警告もなく、突如、破壊的にやってきた大地震は、多くの人々の人生をあっと いう間に変えてしまったのです。報告によれば、死者は9千人、けが人は2万3千人以上、さらに45 万戸もの家が 崩れてしまったのです。ネパールはこの状況を乗り越えていくために、たくさんの課題を克服しなければなりません。
 地震による混乱とちりが落ち着く前に、自然はその恐ろしい牙をもう一度むき、ネパールにもう一つの大きな地震 を5 月12 日に及ぼしました。2回目にも多くの人々は通りへと避難し、子どもたちは心に大きな衝撃を再度受けた のです。私は昨年の12 月にミッションチームとカトマンズに滞在しました。私が実際に歩きこの目で見たところを 地震のニュースで見ると、すべては無残な姿になっていたのです。このような悲惨な状態は私の心に大きな衝撃を与 えました。主に、どうにかしてアジア・アウトリーチ(AO)を用いてこの人々を助けることができないかと祈りました。 ネパールの必要は非常なものですが、ネパール現地にいる数名の忠実な協力者たちの手を借りることにしたのです。 支援を呼びかける手紙を送り始めると、震災被害者たちへの支援が多く与えられたことを神に感謝したいのです。
 AO の現地スタッフは自分たちの問題をいったん横において、ほとんど助けが届いてない僻地へと向かいました。 食料や飲み水といった支援物資を届けることは大変でしたが、スタッフたちは神の恵みによってトラック・ローリー 一台分を届けることができたのです。トラックと共に警察が出動し、村人たちがトラックから物を盗むことを止めま した。ある村人は、もはやだれも助けに来てくれないだろうとあきらめていたところにAO のスタッフが初めて来 てくれたと話しています。また違った村人によると、クリスチャンはいつでも伝道をして回心させようとはしていた が、本当は世話をしていないことにうんざりしていたそうです。しかし今回のことで彼らは神の愛が具体的に分かり、 クリスチャンに対する誤解が解けたことでしょう。
 すべての村では、家々が破壊されていたり、愛する人を失った人々の泣き声が聞こえてきたりしたのです。ある 人々はかすかな希望をもって、素手で家屋のガラクタをどけて、埋まっている人たちを助けようと必死になっていま した。スタッフの幾人かも家を失ってしまったために、村のこのような光景を見たことで感情的になる場面もありま した。しかしスタッフは偉大な神に信頼していますから、神は自分たちよりも悲惨な状況下にある人々を助けた働き 人たちやその家族を必ず守ってくださるでしょう。
 とくに震源地に近いスンクハニ、ドルカのマティとダディンに住む女性や子どもたちに、食物と毛布の入った箱 を支援できたことに神を感謝します。インドから注文したテントの数は十分ではなかったのですが、乳児を抱えたお 母さんたちに、これを支給できたのです。私たちは2千戸の家族に救援物資を届ける計画を持っています。このよう な災害が起こると、私たちに出来ることの少なさと、ある事柄は私たちの力ではどうにもできないという思いが起こ ります。危機にあるとき、私たちの弱さが浮き彫りになり、自然の前では無力感さえ覚えてしまいます。しかし危機に あってこそ神に期待し、神を信頼する時に、神ご自身が悲劇を勝利に変えてくださることを感謝します。この神は闇 に光を、絶望に希望を、死にいのちを与える方だからです。
 現地スタッフが大きな犠牲を惜しまずに助けに向かった動機は、神が苦しみの中にある人々のただ中で働かれ、触 れてくださっていることを目の当たりにしたからです。トラックが山道を登るのが難しかったある村では、人々が縄 でトラックを引っ張ったのでした。多くのものを失った人々なのに、このように一つとなって助け合う姿を見るの は素晴らしかったことでしょう。ある男性とその家族は乳児をもつ女性にテントを提供しましたが、彼ら自身は屋根 のないところで寝ていたのです。市街にあるAO 事務所の近所にも家を失い、何もかもなくした家族がたくさんい ます。この人たちにAO は地域教会といっしょに救援物資を配りました。クリスチャンが隣人に助けの手を差し伸 べることで、社会に良い影響が及んでおり、キリストの光が必要を抱えている多くの人々に輝いているのです。
 AO がミニストリーを展開しているタパタリ・スラムでは、人々は非常に貧しい生活を送っています。この地区で 家を失った人々や、地震によって心に傷を抱えた人々も、一時しのぎ的な小屋を被災者たちにつくることにしたので す。社会から見下されているこれらの人々が、今やネパールの上流階級にさえ影響を及ぼし、キリストの愛を証して いるのです。今日までAO は、1千家族に救援物資を配り、これから2千家族に達するまで続けていく予定です。テン トも3百家族に配る予定です。次の段階として5百のテントを発注しました。雨季が近づいている中で多くの人々は まだ屋根のないところで寝ているのでテントは緊急に必要とされているのです。深刻なテント不足のために隣国のイ ンドに注文して、それらを陸路によってネパールに早急に配達する予定です。また今後、ホームレス世帯には、亜鉛 メッキのシートを用いた仮設住宅が1千戸必要であることを、協力者たちは語っています。これらのシートは最終的 には再建される住宅の屋根の材料として用いることもできます。
 ネパールは恐れと不安につながれています。この大切な人々がいったいどれほどのものを失ったのかはことばで言い 表すことは出来ないでしょう。私たちは主がご自身を、この民に現してくださり、不安の中にいる人々、最愛の人を失っ た人々、傷ついている人々に恵みと憐れみを注いで下さるように祈っています。すさまじい破壊の中にも、神のいのちと いやしの物語を聞けることを願って祈っています。

 「また、人の益を計り、良い行いに富み、惜しまずに施し、喜んで分け与えるように。またまことのいのちを得るため に、未来に備えて良い基礎を自分自身のために築き上げるように。」Tテモテ6:18-19(新改訳聖書)



アジア・アウトリーチ

アジア・アウトリーチ・ジャパン・・・アジア・リポート No.212

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JULY - SEPTEMBER 2015.

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