ジャム(コンフィチュール)

                 

 

 

ジャムは砂糖の脱水効果(静菌効果)と果物のクエン酸、ペクチンを利用した保存性の良い整腸作用、コレステロール低下作用などを有する食品である。ジャムに似たものにヴァレニエがある。
ヴァレニエ
ВареньеVarenye)は東ヨーロッパロシアウクライナベラルーシなど)で見られる果物プレザーヴである。ベリー、果物ナッツ、野菜、花などを砂糖といっしょに
煮て作る。
ジャムに似ているが、柔らかくなるまで煮ることはなく、増粘剤を加える事もない。濃厚だが果物の自然な色をした透明なシロップがある砂糖の代わりに自然の甘味料(蜂蜜や糖蜜)
使ったものもある。ヴァレニエはデザートや
調味料として使用し、トッピング、ピローク(Pirog)、ケーキクッキーフィリング紅茶のお茶うけとして楽しむ。ヴァレニエ自体をデザートとして食べたり、紅茶に砂糖を入れる代わりに、ヴァレニエを舐めながら飲む習慣がある。ヴァレニエをお湯に溶かして飲むこともあるが、紅茶にヴァレニエを入れることは少ない。
ジャムは西ヨーロッパに特有の食品である。

 

砂糖を、料理を作る目的以外に使った(ジャムの?)初期の例を2つ挙げる。

一つはディライト・フォ・レイディーズ(Delightes for Ladies by Sir Hugh Plat London in 1602.)にある。

 

2.普通の砂糖からムスク-シュガーを作る

46粒のムスクを潰す:それをサーセネット(薄い絹織物)、二重にした細かい寒冷紗又は上質カナキン(固く()った糸で目を細かく織った薄地の広幅綿布)に入れる:

鍋の底に並べて煮る:蓋をすると23日でムスクの味とにおいが付く:砂糖を、使った時に追加しておくと同様の効果が得られる。このようなムスク-シュガーは1ポンド2シリングで
売ることができる。

 

砂糖を保存の目的で使った例がニューブックオブクッカリ(A new booke of Cookerie; London Cookerie. London 1615       By John Murrell)にある。

 

一年中キュウリを緑色に保つ方法

キュウリを6つに切って春の水に砂糖、オイルを入れて12

ボイルする。取り出して冷めるまで立てておく。

 

おそらく次のレシピがジャムの最初のレシピであると思われる。

1718:メアリー・イール夫人のレシピ( Mrs. Mary Eales's receipts)から;

チェリージャム.

12ポンドのチェリーを用意してボイルする。ボイルしながら潰してジュースを出す。鍋の底が見えたら砂糖を3ポンド入れて混ぜる。23度ボイルしたらポット又はグラスに入れる。

チェリーは古くから好まれて使われた果物である。ペクチンの少ない果物をジャムにするにはコッドリング(リンゴ)を入れるなどの工夫がみられる。ペクチンが発見されたのは1825年に
アンリ・ブラコノー
Henri Braconnot1780/5/29-1855/1/15、フランスの化学者、薬剤師。キチングリシン、ペクチンなどを初めて単離した。)であり、1920年代になるとリンゴの
搾りかすやかんきつ類の皮から工業的に生産されるようになる。
1910年代はまだペクチンが無い時代で、フローレンス・ダニエルが砂糖を使わない、健康に配慮したジャムを考案している。

 

ヘルシィ・ライフ・クックブック(The Healthy Life Cook Book by Florence DanielSecond Edition1915

 

2. 砂糖を使わないジャム                  

生のフルーツ1ポンドにつきデイツ1/2ポンドを用意する。フルーツを洗い鍋に入れてゆっくりと加熱する。

混ぜてジュースを出す。洗って種を取ったデイツをフルーツの中に入れて弱火で45分間加熱する。

きれいな、熱い、乾いたジャーに急いで入れる。羊皮紙の蓋をすぐに括り付ける。

 

写真はプリザーヴィング・パンでご覧のとおりジャムを作るときに使う。文中”鍋”と訳しているのはこのパンである。

 

 

参考文献

Sir Hugh Plat, Delights for Ladies 1602

John Murrell, A new booke of Cookerie 1615

Mary Eales, Mrs. Mary Eales's Recipes 1718

Florence Daniel, The Health Life Cook Book 1915