アムネスティ奈良グループ通信 
第8号  2002年夏 発行

目 次      
全国研修会報告(田森洋樹)
イギリスでのアムネスティ体験記(後編)(西恵美)
私たち奈良グループの紹介


                                  全国研修会報告 
                 
                                                                   
田森 洋樹
 2001年11月24日(土)25日(日)、新庄町の奈良県社会教育センターにおいて、アムネスティ・インターナショナル日本の全国研修会が、研修チームと奈良グループの共催によりおこなわれた。
 講師には、弁護士の杉田時男さん(アムネスティ日本の国際協議委員会委員長)とぺンシルベニア州立大学教授ステファニー・ファリアーさん(USA支部会員・過去にアムネスティの調査団として各国を訪問している)を招き、マンデイト(責務)問題をテーマとして、研修が行われた。

 ファリアーさんから、アムネスティのマンデイト(責務)の変遷の説明があった後、杉田さんが、ダカールで開かれた世界大会でのマンデイト(責務)見直しの報告を行った。
 ダカ−ルの世界大会では、
   * A案:基本的に人権侵害についてはなんでもやろうという立場(フルスペクトラム)
  * B案:(1)表現の自由に対する権利(2)差別されない権利(3)身体と精神が保護される権利
       の三つを活動のコア(核)とする立場、

のふたつの意見がだされた。
 討議の結果、今回はB案をとるが、4年後に根本的に見直すということになった。
ただ、A案B案のいずれにしても、これまでアムネスティが自由権(注1)にほぼ限定した活動をしてきたことに対し、今後は社会権(注2)についても活動するということになり、大幅なマンデイト(責務)の拡大となる。
   (注1)市民的政治的権利、国家から個人の自由を侵害されない権利
   (注2)経済的社会および文化的権利、基本的権利を国家に要求する権利

 マンデイト(責務)を拡大して、今のアムネスティの力量で対応が可能かという疑問がでてくるが、マンデイト(責務)が拡大してもその全てをやるのではなく重要なものを優先してやるので、仕事の量は変らないと、杉田、ファリアー両氏は説明した。

 こうした説明を受けて2日間にわたって分散会を含め討議が行われた。
  ・「重要なもの」の優先順位は誰がつけるのか、
   ・何が重要かは、文化的背景によって意見が異なり、アムネスティ内でも基準を決めるこ とは難しいのではないか
   ・人権侵害はすべて対象と言うなら、たとえば学校でのいじめなども対象にするのか
   しないならその理由をどう説明するのか

などといった疑問もだされた。

 研修会では、この全体討議のほかにも、人権教育、死刑廃止、陪審制度、世界大会報告のテーマ別分科会があり、熱い議論が繰り広げられた。


 イギリスでのアムネスティ体験記  (後編) 
   
 西 恵美
  [奈良G会員]

 私は1999年9月から2000年10月までの1年間、イギリスに滞在しました。そのときボランティアでアムネスティインターナショナルUKのコルチェスターグループに参加しました。
 イギリスはアムネスティの活動の発祥の地で、さすがに認知度は高く、会員数も15万5千人と多く、年々会員は増加しています。テレビドラマでも、町角の日常風景の一つでアムネスティの缶をもって募金活動をしているシーンがあったりします。
 コルチェスターグループがそのとき主に担当していたのは、トルコと中国の良心の囚人の釈放を訴えるハガキかきでした。そのほかの活動の一つに、街頭で手紙の署名を募るものがありました。イギリスの武器輸出の反対キャンペーンの署名を他のボランティア団体(OXFAM)と一緒に募ったとき(写真)には、日本の死刑廃止を訴える総理大臣と法務大臣あての手紙の署名もしてもらいました。通りがかりのひとも、「日本でまだ死刑をやっているとは思わなかった」と署名をしてくれました。イギリスは1965年に戦争犯罪などを除く通常犯罪に対して死刑を廃止し、1998年に全面的に死刑を廃止しています。2001年6月の時点で事実上の死刑廃止国は世界の半分以上の109ヵ国です。現在日本は、通常犯罪に対しても死刑が行われている87ヵ国のうちの一つです。

 どこのボランティアグループもそうだと思いますが、資金集めには苦労していました。古本の寄付を募って古本屋に売ろうとしていましたが、置き場所に困ったり、ガーデンパーティーを企画したり、他のボランティア団体とバザーに参加したりしました。また、週に1度はメンバーの誰かが1時間程町角にたってアムネスティのアピールも兼ねた募金を募っていました。
 一番印象に残ったのは、地域戦略会議という、地域的な特徴を生かしたボランティア活動をするためにはどうしたら良いか、という会議を行ったときでした。ロンドン本部からこの会議のための専門のボランティアを呼び、このコルチェスターという地域で、一番効果的にアムネスティとしての活動をしていくためにはどのような行動をとったら良いか、ということを考えました。
 アムネスティの認知度にもかかわらず、実際の活動は本当に地道な、ひとつひとつ試行錯誤しながらの具体的なものでした。失敗もたくさんありましたがそれ以上にいろんな試みを自由に行っていました。言葉が全然できなくて苦労もしまししたが、言葉以上に学べたものがありました。(終り)







         

RETURN