出発 御座岬から南下 前編
本船航路
黒潮
シーアンカー
雨の中の帆走
快調な帆走
満天の星
父島入港
滞在 後編
海を見る
おがさわら丸
故障でヒーブツー
鳥島の強風
八丈神湊
大型コンテナ船
大野原島
神津島
追っての快走
目次
南の島に行く  小笠原航海の巻

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 平成19年5月末午前9時、いつも繋いである桟橋をあとに、小笠原へと出発した。
慣れた英虞湾のいかだの間をゆっくりエンジンで走る。
あちこちのいかだで、真珠貝などの養殖の仕事をしている。
いつもの見慣れた風景がつづく、しばらくして湾の出口の御座岬が見えてきた。
舵はオートパオロットにまかして、セールを上げる。
メインセールとジブセールともに一番大きいサイズで上げた。
東からの3mから4mの風にそれぞれのセールが風をはらみ、ヨットは生き返ったように少し傾きぐっと進みだした。
針路は南、180度に向かって帆走する、横からの風で走りやすいのである。
ところでこのヨットは船長1人しか乗っていないのである。
よってすべての仕事を船長がやるのである、ヨットの操船、航路の決定、食事の準備、安全のチェックとやることはいっぱいある。
とりあへず1人なので海に落ちればそれでおしまいになるのである。
どんなにゆれても落ちないようにする、ハーネスと言って2mほどのラインを常に船体の金具に取り付けて、飛ばされても落ちないようにするのである。
このような場所に魚は集まるのだなーと思いつつ、通過していった。
しばらくして左に3隻右に2隻の本船を確認、そろそろ本船航路に入ってきた。
左右を見て相手の距離とスピードをチェック、こちらは約5ノットあいては15ノットぐらい圧倒的に相手は早いのである、ここでエンジンスタートしいつでも回避行動の取れる体制を取る、風まかせでは直前でこちらのスピードが落ちたりして相手の船を混乱させたりする、もし相手がこちらを認識していなければそれでおしまいになる、たとへあいてが見ていなくても逃げられるようにしていなければ生き延びることはできない。
これば小さい船の操船方法である、海では、生き延びなければ自分の主張はできないのである。
一度こちらの針路を変えてスピードの調整をしてこの5隻をかわした。
何回かこれをくり返しどんどん南へ下がっていった。
夕方には本船の数がぐーと減って本船航路を外れつつあることを感じた。
風は強くなって6mから7mの東の風がつづいていた。
風も落ち着いているのでオートパイロットに任してゆっくり昼食をとる、ここしばらくは買ってきたおにぎりとおかずを食べる、本船の航路なので料理する時間はない、見張りは、しっかりとしていないと海の藻屑となる。
食事をしてお茶を飲んでいると前方に波だっている海面を見つけた、海図で確認するとそのあたりだけが浅くなっているところである、下から潮が沸き立っているように波立っている。
日が落ちて暗くなってきた、マストの上の航海灯をつけて走る。
風は一段と吹き上がり10mぐらいになってきたので、メインセールを1ポイントリーフ
(縮帆)にしてジブセールも小さく巻き込んだ。
波もしだいに大きくなってきた、夕食をかき込み、どんよりした空の下を一路南下し続けた。
夜半右から赤の航海灯がきた、前方200mぐらいを横切っていった、大きい5万トンぐらいの船であった
これがさいごの本船であったこれ以後小笠原までは漁船1隻を見たのみであった。
明るくなるにつれ波の大きさがわかるようになった、風もよりつよくなっていて風向は東なのでこのまま南下することにし、ジブをすべて巻き取りメインセールの1ポイントで横からの風の帆走となった。
6時過ぎに前方に一段と険しい波が広がってきた、これが黒潮である。
風と向きが反対になると悪い波ができるのである。
とりあず黒潮を横切って抜けることにし、そのまま南に突っ込んでいった。
風は12mから15mで艇速はあがるが、なみが高く険しいので、ひと波ごとにのりきっていかなければならない、入り口と出口をさがしてできるだけ段差のないところを走るのである。
まちがえれば1mから2mの段差で艇はドシンと落ちる、その衝撃で船体はビリビリ振動するのである、無理をすればマストや船体が破損する可能性がある。
6時から昼12時まで自分で舵を握り真剣に走る。
12時過ぎにやっと波が規則正しくなってきた、やっと黒潮を横切ったのだ。
しばらくそのまま南下し13時過ぎに疲れたので休息をとることにし艇を止めてシーアンカーを流した。
シーアンカーとはナイロン製のパラシュートの形のもので100mぐらいのロープで流す、潮にのって流れるが風にはそんなに流されない。
セールをすべておろして縛り、船内にはいってお茶をのみ、食事をした、揺れは激しくローリングするが船首はななめに風に立ち波を前から受けるので安定するのである
船内の床にオイルスキン(カッパ)のまま横になり眠る。
いやな臭いに眼がさめた、2時間ほど眠ったようである、床下のビルジたまりを調べると燃料の軽油が少したまっていた。
エンジンを調べても異常が無い、よくよく調べると、予備のポリタンクの1つにヒビがはいり少しもれていた、量は少ないが臭いがいやなので船内から外へでると、風は15mぐらいで東の風が吹き、海面はなみで真っ白であるが規則正しいのでそんなに苦にならない。
しかし、やはりローリングが激しいのでセーリングすることにした。
ここからシーアンカーの回収をはじめた、回収用の150mのロープをウインチにかけて引き上げていく、30分以上かけて回収、セールをメインセール2ポイントリーフと一段と小さくし、ジブセールをできるだけ小さくストームの半分ぐらいに展開し南にむけてアビーム(横風)で帆走しだした。
帆走しだすと艇は落ち着いてローリングも少なくなり快調になった。
舵もオートパイロットで十分安定していたのでオートにまかして、体を後ろのパルピットにロープで固定しハッチもすべてロックした。
疲れがでてきてウトウトとしだした、なんともいえないいい気持ちで夢うつつでのセーリングで曇天の夕暮れに突っ込んでいった。。
夢心地のなかを帆走していると雨が降り出した、空は雨と日没で真っ暗になりマストの航海灯が光っている。
どんどん雨が降ってきて、ドシャ降りになった、その雨のなかを時々眠たい眼であたりを確認してまたウツラウツラと体を縛ったままで眠るのであった。
しばらくすると風下側にうっそうとしたジャングルが見えだした。
アマゾンの岸辺を帆走しているように思えて岸によらないように、よらないようにと思いつつウツラウツラとしていた。
夜が明けるまで雨はつづき、明るくなると雨は上がった。
波も一段と穏やかになり風も7mぐらいに落ちていた。
生気を取り戻したのでコーヒーを沸かして入れた。
ひさしぶりのコーヒーをゆっくり味わいパンの朝食をとり、リンゴをかじって後セールをフルセールにした、風は5mぐらいで少し北に振れた。
そろそろ東よりに針路を取りたかったので南南東にコースをとった。
昼過ぎには薄日もさし、波も風も落ちてきた。
波は風に比例するので風だけ欲しいがそういう訳にはいかない。
腹もすいてきたのでカレーライスを作ることにした、カレーといってもレトルトである、野菜やジャガイモなども積んではいるが早く食べたいので本格料理は次回にしてご飯類を食べだした。
3日ぐらいで体が海に慣れてきたのだ。
どんなにゆれてももう気持ち悪くはならなかった
海はどんどん穏やかになりスピードも3ノットに落ちた。
波は小さく規則正しく快適になり、食事もデッキに並べて食べられるようになった。
まるで琵琶湖でのセーリングのようになり、日が照りだした、海は青くなり、風はまた北に振れ弱いが針路はほぼ父島に向けられるようになった。
青空もあらわれ、夕日が西に沈むと東の水平線の上のくもが動き出し、まるで動物たちの雲劇場になった。
どんどん変化して形を変える動物たち、夕方の楽しみはどっぷり日が暮れるまで続く、毎日の楽しみになった。
早いめに夕食の準備をし雲劇場をみながら食事をとる、楽しい南の海の娯楽である。


よるはデッキでねそべっていてもゆれなくなり、ハーネスをつけてデッキで、うたた寝が始まった。
音も無く艇はすべり行く、またウトウトとしだすと前方はるかに明かりが見える、航海灯ではない、漁船の漁火だなー、ウトウトとしているとその灯りがしだいに後ろに流れていった。
そしてまたウトウトと眠るのであった。
熟睡の一夜であった
夜が明けると太陽が顔をだした。
暑い、やはりだいぶ南に来たのだ、うみはさらに青くなり日差しは強くなった。
飛び魚が飛び出し、前日よりは少し風が強くなったがたいしたことはない、明日には父島にはいれるかな?
すこし退屈になってきたので、船尾からルアーを流す。
マグロでも釣れんかなー
風が落ちて3ノット以下になればエンジンをかける。
昼からはまた一段と風が落ちたので機帆走で走る。
コーヒーを飲みフルーツはオレンジがそのまま美味しくいただける、バナナやリンゴは悪くなるのでもう食べてしまった。
後は缶詰のフルーツを食べる、もう暑いので冷たいフルーツを食べたいが、冷蔵庫がないので常温のもので我慢する。
それでも夜は涼しくホットコーヒーが美味しい。
夜も動物劇場の後は、晴れ間がでて満天の星、銀河の出場である。
感動的な天の景色に声を失う、自然の芸術には圧倒される。
自然の中に生きているのにその実感のない社会はやはり病んでいるのであろう。
生まれてきて、そして去ってゆく道を示してしるのである。
前夜半から風は前よりになり東南東、セールをいっぱい引き込んで上りいっぱい、クローズホールドで走る。
夜が明けると相変わらず穏やかで少し波のある海面が続く。
GPS(カーナビの船用)で位置を見れば、もう前方に父島が見えそうである。
4時過ぎに前方湿気のもやのなかから黒い島を発見、となりの兄島であった。
すぐに父島が見え出した。
相変わらず風は上りいっぱい、クローズホールドで走る。
午前9時には風は父島の方から吹き、南島まで近づいてタックを返し二見港の入り口を目指す。
湾口で何度かタックをくり返し、間切り間切って湾内へ入った。
島の山頂は雲がかかり、静かな小笠原への入港であった。
11時すぎに桟橋に舫ってお茶を飲む、薄日が射して蒸し暑い午後であった。
前編
前編  御座岬から南下
後編
後編