ビュッ!竿が空を斬る。フューーンと糸が走る。放たれた糸は高くなお高く放物線を描き 、やがてゆっくりと蒼い海に吸い込まれる。飛距離120メートルを手元のラインが示す。 仕掛けが底まで沈降する約10秒を待つ。糸フケを取って竿先に目を凝らす・・・。

私の釣歴は20年を越える。最近はこの投げ釣りをする事が多くなった。過去には磯釣り 、船釣り、筏釣り等と対象魚、行く先、天候等によって、その都度選択をしてきた。
 投げ釣りが多くなったのには理由があった。先ず仕掛けが老眼で見えにくくなってきた 。特に夜釣りでは針を掴む、糸を結ぶ等の基本作業はもとより数メートル先の浮きの変 化や竿先の動きを追う ことは困難になってきた。この点、投げ釣りは魚に働きかけて「釣る」と言うより魚が針 に掛かるまで「待つ」釣りでもある。時には何のアタリも無かったが上げてみたら釣れて いたということもよくあり、目や手の動きが多少鈍くても出来る釣りといえる。
その投げ釣りの代表的な対象魚にキスがある。 『パールピンクにキスが炸裂』は釣り雑誌のキャッチコピーでもある。 それほどにキス のアタリは強烈で釣趣をそそり、上げて見るその姿体は真珠色に光り輝き美しい。
 もう一つ積極的な理由があった。投げ釣りのスタイルは帽子、サングラスにベストを着 用、足下はスニーカーで決める。こうしてオジさんも7才は、若返りカッコイイ。そしてサー フキャスティング、燦々の太陽のもと潮風が頬を撫でる。波の向こうに目標のポイントを 定め、足の位置を決め長尺のカーボンロッドを折れよとばかりに力一杯振り抜く。ここに 投げ釣りならではの醍醐味がある。
 こんな私の釣りバカも釣った魚を自慢できる仲間や、美味しいと喜んでくれる魚大好き ファミリーに、支えられてこそのものだと感謝の日々でもある。

窓の外は、いまだ残り雪がちらつく。ガラス窓に当たった雪はスーっと溶けては、水玉に なる。
水温む春も近い。本命の尺ギスを求めて今年こそはとの気持ちが膨らむ。 リールの糸 を巻き換える私の手に力がこもる。
平成13年2月10日
オフタイム 釣り