【ふんしつ6】


「清正、かの件はどうなっている?」
「もう秀吉様の手元に渡ってる。」
「そうか、ならば良い。」
昨晩のしおらしい姿とは一変・・・いつもとなんら変わりない態度で接してくる三成を見て清正は不思議な感覚にとらわれていた。
それはまるであの日の早朝のような・・・・・・・
公私混合ということがよくない事は清正も理解していたのだが、もう少し以前と何か違いがあってもいいだろうと。
「・・・・・三成・・・」
廊下に誰も居ないことを確認した清正は三成の腰にそっと手を回す。
もしかして自分は自分に都合の良い夢でも見たのではなかろうかと・・・・
しかし清正の考えは杞憂に終わる、先ほどまでいつもの表情を崩すことがなかった三成の顔色が変わったのだ。
「っ・・・・・清正・・・・人が来たら・・・・」
「目・・・閉じろ・・・・・・」
清正は三成が言葉どおり大人しく目を閉じたことを確認すると、その口唇に口唇を重ねる。
さすがに人目につく場所では断られるかと思っていた清正だったが、三成の予想外の反応に清正は内心驚いていた。

『・・・清正の気が向いた時で構わない・・・・・俺を清正のものにしてくれ・・・・』

清正は不意にその言葉を思い出す。

(つまり、余程でない限り俺からの行為は拒まないってことなのか?)

ゆっくりと口唇を離した三成の顔を見ながら考え込む。
「・・・・・清正・・・そろそろ離せ・・・・・本当に誰か来る・・・」
「ん、あ・・・・・あぁ・・・・すまん。」
三成の腰から清正が手を離した瞬間廊下の奥から足音が聞こえてくる。
「あぁ、殿・・・・っと、清正さんとお話中でしたか・・・」
足音の主は左近で書簡を手に二人の前に現れる。
「いや、今ちょうど話が終わった所だ・・・・どうした、何か問題でもあったか・・・」
清正の元を離れ、三成がパタパタと左近に駆け寄る、ソコに先ほどの三成の姿は無い。あるのは豊臣家の家臣として働く姿。
清正は二人に別れを告げると、なんとも表現しがたい気持ちを持ったまま、持ち場へと戻るため廊下を歩いていった。


■ □ ■


そんな気持ちを清正は抱えたまま月日は過ぎ、季節が変わる。
「清正・・・・誰か来たら・・・・・・」
「大丈夫だ、この時間なら誰も来ない・・・・」
清正は三成の耳元に囁きながら自分と三成のモノを同時にこすりあげる。
障子の外はまだ明るく、遠くからは人の声も聞こえてくる。
「んっ・・・・清正・・・も・・・・・・・」
「分かった・・・・一緒に・・・・・な?」
深い接吻を交わしながら中心部に溜まった熱を開放する。
二人分の精液は清正が用意した手ぬぐいに包まれた。
荒い呼吸と独特の匂いが場を支配している。
清正はぺたりとその場に座り込んでしまった三成にもう一度口付けると後処理を始めた。
その手際も今は慣れたもので、三成と自分のものを拭ってから汚れが無いかの確認をし、衣類を整えたところで空気を入れ替えるために障子を開けた。
あの日、三成と清正が初めて交わった日から三成は清正の求めるままに身を任せていた。
それは三成が口にしていた通り『清正の気が向いた時』という事に基づいての行為。
三成にとっては清正と一緒に居れるということだけで・・・こうして相手をしてくれているということだけで幸せで、それ以上は何も望まないと。
「じゃあ、先に行ってるからな。」
「分かった・・・俺もしばらくしてから向かう。」
二人の関係がばれないようにと時間差で部屋を出る・・・先に清正が、後から三成が・・・・・それが最近の二人の行動パターン。
清正が居なくなった部屋で、三成は柱に背を預け、ひざを抱えて顔を伏せる。
抱いてもらえるだけでいいのだと、自分を求めてくれるのならばと・・・・
三成も割り切った気持ちを持っているつもりだったが、体を重ねれば重ねるほど思いは大きくなり、それ以上を望んでしまう。
清正は好意を持ってくれてはいるが、自分と同じ意味の好意でないことは三成自身がよく分かっていた。それを承知でこの関係を築いたのだから。
「清正にも同じ気持ちを求めるのは間違っているのだろうな・・・・」
胸の痛みを吐き出すように三成がポツリと言葉を漏らす。
触れ合っている間は感じない孤独と胸の痛み。
去っていく清正の背を見送るだけの時間・・・・
けれど、どれだけ胸に痛みが走ろうと、孤独に囚われようと、三成の中にこの関係を終わらせるという選択肢はなく
「馬鹿だな・・・・・俺は・・・・・・・」
三成は自虐的な笑みを浮かべ、のろのろと立ち上がると清正と同じように部屋を後にする。
そんなことを考えていても仕方ない事だと。


一方、先に部屋を出た清正だったが、部屋に残してきた三成が妙に気になり歩みを止める。
三成と関係を持ってからずいぶんと経つが、最初の頃以来、三成から好きだという言葉も、好きなのだという態度も感じ取れずにいた。
先ほども特に気にした様子もなくいつもとなんら変わりのない態度。
肌を触れ合わせているときは近くに感じているのに、肌が離れれば驚くほど遠くに感じる。
三成が自分のことをまだ好いているのだと実感する為に空いている時間を見ては先ほどのような行為を強いる。
当然三成はそれに応じてくれるのだが、それが自分に寄せている好意からくるものなのか、それともあの言葉に準じてのものなのか・・・・あるいはどちらとも含んだものなのか、清正には判断が付け辛く、こうしていつも逃げるように部屋を先に出ていた。
清正は思っていた・・・もしもまた同じように想いを告げられたのならば自分も同じ気持ちなのだと・・・・そう告げようと・・・・・・・。
「馬鹿だな・・・・・俺は・・・・・・・」
清正も三成と同じように呟く。
最初に三成を振ったのは自分ではないかと・・・同じ好意ではないと線引きをしてしまった人間に対してもう一度想いを告げる人間はあまり例を見ない。
ましてやこうした特殊な関係を持ってしまったのであればそれは尚更。
けれどもしも三成が自分に持つ好意が違うものへと変化していたのならば、自分が想いを告げてしまうことで今の関係が崩れてしまうのではないかと・・・・・・。
「・・・・もしかしてあいつ・・・・・・・・・」
清正はひとつの可能性を思い浮かべる。
実は三成はこの関係を終わらせたいのではないのかと・・・ただ自分から言い出した手前引けなくなっているのかもしれないと。
そうであるならば自分のほうから別れを告げなければならないということを・・・・・もちろんそれは清正の杞憂なのだが、互いの心は知る由も無く。
「俺が・・・あいつに触れなければ良いだけの話だ・・・・・」
自分が求めるから応じるのであって、求めなければ応じることもないのだと。
清正は、今日が最後だと心に決めてゆっくりと歩き出した。



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どこかで見た展開d・・・・ゲフンッゲフンッ
思い違いって大好きなシチュエーションなんです・・・・


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