気まぐれにやってきたのは、あちらでは晴れの日がすっかり珍しくなったから。
 思惑どうりこちらは天気がいい。ちょっと寄り道してから、行くかな。

 今日という日だから、会いたいやつがいる。
 あっちの連中には、ちょっと後ろめたいケド。



+ + + フレグランス + + +



 三人で訪れた頃はちょうどクローバーがたくさん生えていた。
 クリームは花冠をふたつ作った。大好きという気持ちを形にしたかわいいかわいい輪っか。

 その一方を受けとる。まだちいさい女の子のためにひざをつき、冠をさずかった。

「とっても似合ってます!」

 まぶしい笑顔を目にして、こちらもついついほころんでしまう。
 こんなだらしのない顔は見せられないな。

 あいつも、おんなじようにほころんでしまえ。

 かけだす少女。彼女におそろいの冠を渡したくて。

 驚きに見開かれた目が、笑顔で細くなった。
 ブレイズもお姫様から冠をさずかったようだ。

 これで小さな皇家の誕生。つかのまでも、なんだかうれしかった。




 いつしか会った皇女のお付きの人に話をきいた。
 皇女様はご不在で、とある所にいらっしゃると。
 教えられた高原へ一目散に駆けた。

 ていねいに、ていねいに育てられたのがよくわかる。
 たぶんひとりで、不器用なまでに愚直に手入れしたんだ。

 水滴できらきらしている、いちめんの紫色の花畑。

 一輪だけひときわ、きらめいていた。見つけてすぐにかけよる。

 こちらにかまわわず水をやりつづける。そんな彼女に声をかける。

「皇女さまの趣味が土いじりになったってウワサを聞いたんだけど、本当だったんだ」
「花束をプレゼントしてくれる相手がいないのでな」

 ふわりと、心がやわらいだ。笑い声を風にのせ、波立つラベンダーたち。
 彼女は自身にいちばんよく似た花を摘み、こちらにさし出した。

「誕生日だというのに、これくらいしか渡せるものがない」

 受けとり、そのかおりを胸の内へと受け入れる。

「Thanks, Blaze! ...amazing...Amazing!」

 駆けだして、風をおこして、花をゆらして。
 そうしてさらにかおりがあたりにたちこめる。

 もっとかおりにつつまれていたいから。
 こうすることで彼女をより感じられるから。

 手にした花にもういちど鼻を近づけ、かおりを確かめた。






おしまい





「みどりがおか」のRactさんから頂きました!
うちにある「ラベンダー」がブレ面で、
Ractさんの「フレグランス」がソニ面ですね!
なんという、ラッシュ!?(すいません未プレイで…汗)
愛されてるわあwwみんな愛されてて嬉しいわあwwww

ありがとう!
とっても素敵なお話、大好きです!!

2009.08.26


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