白と黒と赤のはなし
恐いロボットさんたちに見つからないように、このままじっと隠れていればいいんです。
そう思って積み上げられた白い石の隙間にいたけれど、昼を過ぎて夕方近くになっても、ロボットさんたちは動くものを見つけては銃を撃ちます。
怖くて動けません。
胸に抱きしめたチーズが、ぴったりと寄り添ってくれなければ、声を出して泣きだしそうでした。
そこに一陣の風が吹きました。
攻撃をするロボットさんが次々と火花を散らして壊れてゆきます。
電子音が悲鳴みたいに聞こえて、それも怖かったんです。
「もう、やめてください!」
とうとう叫んでしまい、目から溢れる涙がぽたりと落ちる、そのわたしの前に立ったのは、黒い影でした。
赤い瞳がとても怒ってるみたいで、怖くてたまりません。
「こんなところで何をしている」
「あ、あの、わたし」
「チャ、チャオチャオー!」
チーズがパタパタ手足を動かすと、しおれかけたお花がぽとりと落ちました。赤い目がそれを追って動いたので、わたしは急いで花を拾おうとしました。
地面に膝をついたとき、黒い風がわたしの目の前を駆け抜けたのです。
「きゃ…ぁっ」
わたしの悲鳴は轟音に消えました。
白い石を押しつぶそうとしている大きな大きなロボットさんの、その振りあげた腕に赤い光がぶつかって、向こう側へ倒れていきます。
怖かった。
でも、赤い光はとてもきれいでした。
白い石の向こう側で、オレンジ色の火柱が上がります。
「エージェント・シャドウ、任務は完了した」
黒い影がわたしを守るように、爆発のとの間に入っていたのです。
通信機のついた腕から赤い血が流れていることに気づいて、また泣きそうになりました。
わたしは急いでポケットからハンカチを出すと、傷のある腕にくるりと巻きました。
「不要だ」
「いいえ。シャドウさんはわたしを守ってくれました!」
「知らない」
「ケンカは嫌いです。暴力で誰かが傷つくのを見たくありません」
ハンカチに赤い色が滲みます。
痛いのはわたしじゃないのに、胸が痛くてたまらないのです。
「でも、もう怖くありません」
ごめんなさい。
ありがとうございます。
そんな想いで、胸の痛みが消えてゆきました。
「…勝手にしろ」
ゆっくりと歩き出した黒い影は、夕宵を背負いながらおうちのある方向へ足を向けてくれたのでした。
クリーム大好きですwww
2010.02.17
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