「あっ…陛下だめですっ」
揺れる馬上でランスロットはぴんと背筋を伸ばす。
その真後ろで、彼の王の満足そうな吐息を聞く。
ランスロットの尾も天を向き、馬が動くたびに密着した部分からも湿った音が立つ。
「まだいけるだろ?」
ふたりで城下の散歩だなんて言って、この間も農家の厩でもてあそばれた。
馬でなら大丈夫だと思ったのに、まさか同乗してくるなんて。
「あ、あつ…い」
「甲冑だもんな。後で脱がせてやるよ」
「まっ…動かないで」
「コイツが勝手に動くんだぜ」
ぽんぽんと、王が馬の首を叩くと、僅かにスピードを上げて駆けだす。
さらに揺れる。
突かれるタイミングの予想がつかず、ランスロットは気が狂いくるいそうだ。思わず息を大きく吸い込んで。
そこでまた王はランスロットの首を掴んで引く。深く、抉られる。
「声だすとばれるぜ…?」
城までの道は、まだまだ続く。
2010.02.06
簡素な長椅子にランスロットがガクリと沈む。気を失ったがそれでもソニックはランスロットを離しはしなかった。
何度も深く打ち続けると、薄く覚醒して「もう、やめて」とそればかりをつぶやく口をガントレットでおさえる。
その時、
コツコツ、とドアがノックされた。跳ねるほどランスロットが震える。
「ランスロット、いるか?」
パーシヴァルだ。
ソニックを好いているパーシヴァルだ。恐れるように未だ腰を振る王を見ると、口元に意地悪な笑みを浮かべている。
なにも言葉を発せずいると、もう一度ドアを叩かれる。
「いるぜ! ちょっと取り込み中だが…おい、ランスロット、喋れるよな」
「んなっ…ムリです!」
「声でるじゃん。 パーシヴァル、入ってこいよ」
「へいっ…!」
泣きそうな顔のランスロットの悲鳴に快楽を押しつけてやる。
失礼します、と入ってきたパーシヴァルが硬直するのがわかった。
ソニックは涼しい顔でもう一人の部下に笑いかけた。
「何の用だ?」
2010.02.09
「風の騎士様!」
子どもたちに呼ばれ手を振ってまた走る。
村の門ではランスロットが待っていた。ソニックが村で遊んでいる間、仕事をこなしていたのはランスロットの方だ。
村人たちの賛辞を、もの言いたげにしながらも、小さな笑顔で受け取っている。
「ソニック、帰るぞ」
「All-Right.」
村の奥にあった魔物の湧穴を押さえたのはソニックだったが、そのことは村人には伏せたままだ。
手柄を奪うような真似をランスロットは嫌ったが、この物語の為にはそうするべきだとソニックが譲らなかった。
その態度は、誰かとランスロットを重ねているのが明らかだった。
キャメロットへの帰り道、楽しそうに駆けるソニックを、対照的な重い足取りでランスロットが追う。
「ソニッ…… 陛下」
「言うなよ。俺はヒールがやりたいんだぜ?」
悪人、というよりは、身勝手な風のようなソニックに、ランスロットの膝が自然と折れる。胸に手を当て忠誠を誓う。
ソニックは支配者に向かない。そのことは十分承知している。
「それでも、お慕いしております」
「愛してると言われたいな。お前には」
「恐れ多くも、僕のすべてを捧げましょう」
「ランスロット」
その名を呼ばれることが、至上の歓びなのだと。
膝をついたランスロットの耳元で、ソニックは何度も「愛してほしい」と繰り返した。
2010.02.26