ぬくもり



 まだ夜明け前。
 薄く覚醒して周囲を手探ると、ベッドの片方が空白になっていた。
 ぬくもりは残っている。
 どこへ行ったのかと耳を澄ましてみると、遠慮がちにトイレの水を流す音が聞こえた。
 なんだ、生理現象かと、ホッとするのと、可笑しくなってくるのと。
 裸足がカーペットの上を歩いて、音の無い音が近づいてくる。
 毛布を少し開いて、迎えてやった。

「ハラが、壊れた」
「毛布からはみ出して寝てるからだ」
「違う! ヤリっぱなしで寝たからだろ!」
「ああ、」

 確かに。
 ソニックは気を失ったまま、僕は疲れてしまって、後始末も何もしなかった。
 中に放った欲を残したままにしておくのは、受けた側の身体に大きな負担となる。
 だけど。

「あんな深夜に突然押し掛けておいて、こちらの都合も考えずに迫ったのはキミの方だ」
「おまえが疲れて帰ってきた夜はオレが必要なんだって、まだわからないのか」
「君が寂しいだけだろう?」

 そう言いながら、毛布の中に滑りこんできた冷たい身体を抱きしめる。
 足をからませ、手首を捕らえてシーツに縫いつけてやる。

「するなよ。今、酷いから」
「わかっている」

 冷たい胸、冷たい腹、ぴたりと合わせて、熱を与えてやるように。
 冷たい唇もこじ開けて、冷えた舌も食らうように舐める。
 少しずつ、戻る体温。

「ん・・あ、しゃど、・・・するなよ?」

 閉じようとする膝を足で割る、僕の行為に怯えるソニック。
 吐息が温み、赤みが差した頬にもキスをひとつ。
 力の抜けたキミの身体など、僕は自由にできる。どんな抵抗も無意味だ。
 だから、

「もう少し、眠ろう」

 僕は生命の火が燈る身体を、そっと抱きしめる。
 ソニックは、僕の火照りを奪うように胸に顔をうずめた。

「ほら、な」

 クスクスと笑う、その理由が身にしみてわかるよ。
 確かに僕は、キミを欲して止まない。

 願わくば、
 次に目覚める時も、このぬくもりが僕の手の中にありますように。















そにたく、明原 奏さんへの捧げものでした。
高校卒業したかな? おめでとう!


2010.03.25


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