ちいソニ!



 その日はデートだった。
 テイルスが「余っちゃったんだ」と言って、遊園地の招待券をくれた。
 GUNの任務続きで疲れ気味だったシャドウに、

「気分転換も時にはいいだろ?」

 と、半ば強引に誘ったソニックだったが、シャドウはいつもの仏頂面でもちゃんと付き合ってくれた。
 ジェットコースターやティーカップ、ミラーハウスに大喜びするソニックを見て、

「何が楽しいのか分からない」

 そう、皮肉っぽくシャドウは笑った。
 シャドウと一緒だから楽しい、などとソニックは説明しなかったが。
 そんな時、いつもの邪魔がふたりの間に割って入った。
 GUNからの通信だった。
 シャドウは表情を硬くして、了解、とだけ返事をした。すまない、と言おうとする前に、ソニックがにこっと笑って手を振った。

「先に帰っててくれ」

 それだけ、告げて、シャドウは遊園地の人ごみにまぎれてゆく。
 …
 が。ソニックはシャドウの後をつけて歩いた。何かを探しているようなそぶりのシャドウは、遊園地から出る様子がない。
 しばらく追い掛けていると、芝居をしているアトラクションの裏口に消えてしまう。その先まで追うことはためらわれたので、ソニックはまたどこかで会えるだろうと、人の少ない方へブラブラと歩いて行く。
 すると。
 黒づくめのスーツを来た4、5人の男たちがヒソヒソと会話を交わしているのを見かけた。
 なんだろう?興味の湧いたソニックがそっと男たちに近づくと、アタッシュケースを交換しているようだった。片方のケースが開かれると、中には札束が並んでいる。

「これで、私と家族の安全は保証されるんだな!?」

 裏返った男の声と、取引相手らしき男の胸から抜かれる硬いもの。
 やばい、アイツ殺される!そう思ったソニックの後頭部を別の衝撃が襲った。
 取引現場を見るのに夢中になっていて、男の仲間が近づくのに気付けなかったのだ。
 脳震盪を起こしてグラグラする身体を引きずられ、ソニックは草むらに放り込まれた。隣には胸を撃ち抜かれて殺された男が転がってる。

「見られたからにはヤるしかありませんぜ? このガキ…撃ち殺してやる!」
「まあ、待て。GUNが開発したこの薬を使おう。肉も骨も溶けて何もなくなるってヤツだ」

 ソニックの頭が持ち上げられ、口に何かを入れられた。
 途端、頭が、体中が燃えるように熱くなり…何も分からなくなった。





「おい、オマエ! 大丈夫か!?」

 うすボンヤリとする意識が揺さぶられる。
 赤い影が必死で呼びかけてくれる。赤い、ハリモグラ…
 目の前が真っ暗だと思ったけれど、どうやら夜遅い時間になってるだけだった。

「あ、あれ…オレ、いきて…」

 喉を通って出る声は心なしか高い。動くことを確かめる為に動かす腕も、なんだか短い。手のひらも、…小さい?
 ハッキリと目覚めた。
 ソニックの身体が小さくなっていた。
 慌てて立ち上がると、後頭部からズキンと激しい痛みが走った。

「あらぁ!?ナックルズ警部、この子怪我してるわ!すぐに手当てを」
「エミー、頼む。…さて、オマエは何故ここに倒れてたか憶えているか?」

 はっとソニックが辺りを見渡すと、意識を失う前に見た男の死体の場所には白線で印が書かれていた。
 あのとき、最後に黒づくめの男は何を言っていた?
 GUNがどうとか…。シャドウは遊園地の中で何を探していた…?

「オレ、何もわからない…。このあたりを歩いてたら、急に頭が痛くなって、それから何も知らない」
「現場を目撃される前に、襲われたということか」
「災難だったわね、可哀想に〜」

 エミーと呼ばれた刑事だろうか、手際よく頭に包帯を巻いてくれた。病院へ行きましょうか?と聞いてくれたけど、それよりも家に帰りたかった。…シャドウの家に。
 ぶかぶかになった靴を引き摺って歩き出そうとすると、迷子らしい子どもの姿に同情したのか、事件と無関係と判断したハリモグラの警部がパトカーで家まで送ってくれることになった。
 道すがら、何度も事件のことを覚えていないか見ていないかと聞かれたが、ソニックはずっと口をつぐんでいた。
 黒づくめの男たちは、GUNの薬を使ったのだ。きっとシャドウが追っていたのもアイツらで、何か大変な事件が起こってるに違いない。
 シャドウの家はGUNが秘密裏に貸与しているマンションで、セキュリティも厳重だったので、警部たちはその入り口でソニックを見送ることになった。
 身体が小さくなったことに不安はあったが、ここまで黒づくめの男たちが追いかけてくるとは思えなかったので、ソニックは急いでシャドウの部屋へ逃げ込んだ。




 普段足を踏み入れたことの無い書斎へ入ると、薬のことが書かれているらしい本やファイルを乱雑に漁る。ソニックの身体を小さくした薬がアークで開発されたモノなら、きっとどこかに資料があるはずだ。
 しばらくすると、密閉された部屋の空気圧が動いた。

「ソニック?帰ってるのか?」

 シャドウの声だ。ほんの数時間離れていただけなのに、酷く会いたくて仕方がない。
 すぐに部屋を飛び出して抱きつきたい!そう考えて、はたと己の姿を見て、ソニックは大いに焦った。
 足音が近づいてくる。が、逃げ隠れする場所もない。

「ソニ………キミは、誰だ!?」

 厳しい詰問が飛んだ。
 シャドウはここにいる小さなソニックが、先ほど別れたソニックと同一人物だとみなしていない。
 悲しい思いに胸が痛むけれど、このまま自分はソニックだ、と言っていいのか大急ぎで思考を巡らせる。
 さっきの黒づくめの男たちはGUNの、シャドウの仲間なんだろうか。敵や危険な派閥の者なんじゃないだろうか。あいつらは危険すぎる、そんな気がする。
 もし、薬で小さくなってしまったと言えば、シャドウはソニックを元に戻そうと、どんなことでもするだろう。GUNを裏切るのだって平気だ。ヤバすぎる場所にだって、絶対に行ってしまう。
 それだけは、嫌だった。

「あの、ええと、シャドウ、ソニックは旅に出ちまったぜ!」
「靴は? 玄関にあったぞ」
「オ、オレが預かったのさ! シャドウの面倒みてくれって頼まれて…」
「キミがボクの面倒を…逆だろう?…ハリの色がソニックによく似ているが、キミはソニックの子供か?」
「子供なわけないだろ!! え…ええと、親戚…だよ」

 こんなウソがよくスラスラ出てくるとソニックは自分に感心しながらも、こんなウソを信じてくれるかシャドウの反応を待っていた。

「ソニックは…いつ旅から戻るか、聞いていないか?」

 シャドウが信じた!ソニックはホッとしていいのか、悲しいのかよくわからなくなってきた。
 ここにいる自分はソニックであってソニックとは認められない。
 いつ、元に戻れるのか、なんて、わからない。ソニックは小さく首を横に振った。

「キミの名前は?」
「え、と…ソニック…」

 シャドウの視線が厳しくなる。ウソや冗談は許してくれる雰囲気ではない。が、ホントの名前を言ってしまったら偽名も浮かばない。

「そ、そっくりだから、ちいさいソニックって呼ばれてる!」
「本当の名は?」
「…ちい、ソニ、でいいや」
「何なんだそれは…ちいソニだと?」

 無事に自己紹介を終えたつもりのソニックがニカッと笑うと、シャドウは軽く額を指で押さえてため息をついた。いつもソニックが無茶なことを言った時に、それを納得させるためのシャドウのポーズだ。
 もうひとつだけ、ため息を落とすと、引っ張りだした本やファイルに埋もれているソニックを、シャドウが抱き上げてくれた。
 シャドウが小さな子供にこんなに優しいなんて、ソニックは今まで知らなかった。

「頭の怪我はどうした?」
「なんでもない。転んだんだ」
「……親戚というのはそういうところが似るのか? アイツとそっくりだ」

 少し緩みかけた包帯の上から後頭部の傷に触れて、シャドウはちいさなソニックを優しく抱いてくれる。
 ウソがばれていても、シャドウは優しいまま、なんて、今まであり得ないことだった。
 猛烈な照れが抱かれているソニックの顔を襲っているなんて、シャドウも知らなかった。



 見た目15歳のシャドウと、
 見た目7歳のソニックの、
 奇妙な日々が始まろうとしていた。















発端は、しる坊さんの「子ソニ書かないんですか?」発言からですwwww

子ソニのネタはここじゃなくても、他に、あっちこっちでやってる人いるじゃん!
子孫ぽいのとか、原因不明とか、子供時代とか!
…そんで、私がやろうと思うと、あのパロしか思いつかなくてwwww
ついつい出来心でwwwww


しる坊さんと、りくどさんが、ちいソニとナコ警部を描いてくださったよ!
てか、無理矢理絵チャ乱入で描いて頂いたというか、すいません!
しる坊さんち→イラスト→ログの3つ目ですvv

popocoさんも描いてくださった!wwwww


うひょー!!
全部で6枚あるの!ブログ直飛びすみません!

2010.01.28


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