かたた、ソニックが勝手に僕の端末を弄っている。
一瞬驚いたが、GUNへのアクセスコードは今朝変わったばかりでそちらの機密が漏れることはないし、ただのネットサーフィンやシャドウ自身の情報ならそう困るようなこともない。
「何を見ている」
「シャドウに関する情報。可愛いじゃないか」
モニターを覗けば、アークで、成長途中にあった幼い個体の写真が何枚か開かれている。
銃器や刃物を扱うには手のひらが小さく、けれど失敗を嫌って何度も訓練を繰り返していた、その写真だ。
「今は可愛くなくてすまないな」
「うーん、そうだな。今は確かに可愛くはない。but...」
モニターから移ってくる視線は、出会ったころから変わらない、挑むような笑み。
妙に艶めいて見える、その彼の、可愛いと言える時期を僕も覗いて見てみたい。
「今のシャドウは、かっ」
続く言葉を封じて。
今日はデスクの上で啼かせてやろうか。
2009.11.03
乱れる呼吸すらシンクロさせて互いに意識を飛ばせる。
肉体の認識も僅かに揺らぐのがカオスコントロールに似ている気がする。
一瞬後には戻ってくる、というのも似ている。
薄く滲んだ汗で体が冷えてゆく。頭に昇っていた血も引いてゆく。
「ソニック・・・なぜキミはボクとセックスするんだ」
「・・・は、今更、だな」
「他にも相手はいるだろう」
そう言いながらも、抱きしめる腕は背のとげを梳くことをやめられない。
胸に顔を押し当て笑っている、キミを手放したくはない。
「オレがお前の立場なら、すぐに狂っちまうだろうなあ」
「ボクがおかしくならないように見張っているわけか」
「もっと利己的な理由さ」
下からぐいと引かれ、キスをねだられる。望み通りに与えてやる。
薄く開いた緑色の瞳は切実な色をしている。
ああ、そうか。
狂っているのは、
「Kiss me, please!」
2009.11.06
叩き潰してやる!
そう、繰り出した手刀の前に、青い棘球が飛び込んでくる。
勢いに弾き飛ばされた殺戮兵器は壁際まで飛んでゆき鉄屑に変わった。
「hey! 仕事が終わったらデートしないか?」
「莫迦! 戦場だぞ」
視界の端にダイオードを点滅させるオートマトン。
接近する軌道を読まれないように障害物の陰を抜ける。
彼はというと、彼らしく攻撃の一瞬前を直線で駆け、僕に目配せる。
「ha!」
足元を緩く蹴飛ばしバランスが崩れる目標。そこに僕が背の棘を叩きつける。
大きく変形した部分から火花が散る。
「南の島へリゾートを楽しみに行ったんじゃなかったのか」
「途中でよーく知った蝙蝠に会ってさ、こっちの方が面白そうだと思ったんだ」
「怪我をしないことが条件だ」
「・・・all-right!」
きゅん、きゅん、建物の壁に反響するマシンの動作音。
僕らは同時に駆けだした。
仕事が終わったら、デートをしよう。
オートマトンていう機械があるんよーw
2009.11.29
ランソニ!
激しい剣戟、気合いごとに互いに叫ぶ。
目前で何度も火花を散らし、離れてはまた衝撃。
おお、とか、ああ、とか、悲鳴やため息が城壁の上から立ち昇る。
ギリギリと鍔を迫り合わせ、間合いを取ると生きた剣が楽しげに喋る。
「王になってもまだまだヒヨッコだな」
「煩い。ナマクラ剣で最強騎士と渡り合ってるオレがスゴイだろー?」
気が抜けるようなお喋りだが、隙は微塵もない。
最初に会った頃とは比べようもなく強くなった。
だが、ランスロットは彼の弱い部分を知っている。このまま相手を続けていると日が暮れてしまうので、遠慮なくその部分を突かせて貰う。
「賭けの約束は守ってもらう、 ソ ニ ッ ク」
「うっ・・・オレはおま」
刹那、懐へ飛び込み、ガントレットへ一撃を浴びせた。
跳ね上がり飛んでゆくカリバーン。たわけーと遠くなる悲鳴。
兵士たちの歓声と拍手が、庭を取り囲む城壁から大きく沸き上がった。
そのせいで、二人の会話は誰にも聞こえない。
頬を上気させて俯いた王を覗くように跪いたランスロット、・・・だが臣下の表情が勝ち誇っていることに、気づくのは王だけだった。
「あんなところで名前を呼ぶなんて…」
カリバーンかわいそうよねw
2009.12.09
クリスマス前
橋の主塔の天辺から、はるか下の光の帯を眺めている。
いつもなら、耳を澄ませば行き交う車両のクラクションが聞こえるけれど、今夜は強い風の音ばかり。
は、と息を吐けば白く染まり、すぐに掻き消える。
しばらく光が飲み込まれてゆく街を見つめていると、ケーブルを滑る音にその靴から散る火花が現われた。
「Hey, 待ってたぜシャドウ! 昨日の勝負の続きをしようじゃないか」
「チェスで勝てないとわかって、今日は Speed-run か。確かにその方がキミにも勝ち目はあるな」
「セントラルガーデンにあるクリスマスツリー、その星を取った方が勝ちだからな!」
「構わない。が、」
走り出そうと身構えたソニックの、頬にシャドウの手が触れる。
冷たい風の中、そこだけ炎が着いたようになる。
「昨日の分の戦利品は貰っておく」
軽く触れた唇。
離れる緑と赤の瞳は、もう次のゲームの勝利を狙う色になる。
2009.12.11
きぃん
手の中で弾けて飛んだ金色の輪。
やたら物分かりの良くなった顔で、なにもかもわかったような眼で、オレを見るなよ。
伸ばした手に触れる冷たさ、掴めると思ったんだ。
「痛ぇっ!」
ごつんと、後頭部と背中が硬い床に当たった。
まだ、心臓が激しく脈打っている。
落ちた。
オレが落ちたのか。シャドウじゃなくて。
むくりと起きて、半分だけベッドに引っかかった毛布を被ると、薄く覚醒しているシャドウに口づける。
最初から深く抉るように舌を差し入れると、シャドウは息苦しそうに拒絶の手をオレの胸に当ててくる。
「なんだ、キミは、一体!?」
「すっげーヤな夢みた。オレが食おうとしたチリドッグなのに竜巻に食われちまった」
「・・・それで?」
呆れて軽蔑する赤い眼。そう、その眼が好きだ。
もう一度キスをする。身体を摺り寄せ、足を絡ませ、股の間を押しつけて。
シャドウの手が頭のトゲを後ろに撫でつける。
これで涙の跡が知られてしまった。
視界は上下反転し、色付いた獣が再び眠るまで、シャドウは優しく激しくしてくれる。
「チリドッグよりキミの方が美味そうじゃないか」
指を絡ませる。
絶対に、離れるな。
あの夢を見ない、最高のおまじないだ。
2009.12.15
「どうしたんだよ、シャドウ」
会わなかったのは3日程だ。
なのに、出会ってすぐにこの状況。
酷く真剣な顔でソニックを見つめたかと思うと、腕を伸ばして抱きしめてきた。
強く、しかし、時折震える腕に抱かれては、苦笑するしかない。
「任務に、ついてくるとは思わなかった」
「たまたま走ってた先だったのさ」
「あんな戦場に・・・生きた心地がしなかった」
そう、彼が彼自身のために戦うときには心配などしない。
守ろうとしていた誰かのために、なら、どんな無茶なことでもしてしまう。
それが、シャドウのためだったのなら。
楽しげに目を細めたソニックが、不機嫌に歪んだままのシャドウの唇にキスをする。
「・・・何を笑っている?」
「嬉しいからさ」
雪の降る街角で、路上駐車のバンに隠れて、何度も何度もキスをした。
2009.12.21
「何をしている」
「あーコレ? クリスマスにテイルスからもらったんだ」
携帯ゲームだ。小さな画面を覗きこんで、ぽちぽちと操作しては楽しそうに笑っている。
音楽とコンピューター音声の不明瞭すぎる歌。
「シャドウとテイルスはラブラブなんだよな!」
「んなっ!? ありえない! あの子狐が僕の何をわかってるって言うんだ!」
「オレはナックルズと…あ、告白失敗かー!」
シャドウが真顔すぎる顔で、ソニックのゲームを取り上げた。
ぷちんと電源を切ると、
「セーブしてないのにー!」とソニックが怒る。
だけど、シャドウも怒ってる。
「貴様…、今夜は寝かせてやらないからな」
「what!? ええええ? なんで?」
「うるさい」
ソニックはベッドへ引っ張り込まれながら、冗談のわからないヤツだなーと苦笑した。
トモコレ面白そうなんだけど!!wwwww
2009.12.26