バンクーバー/スケルトン



 選手村を出る時、降ってたのは氷雨。
 気温は晴れた日よりも高かったけれど、それでも氷点下には違いない。

「外の競技は大変だな。コンディションが変わっちまう」
「キミは、スケルトンの予選だったか」
「シャドウはホッケーだろ?勝ってこいよ、決勝で当たるんだからさ」

 そんな風に笑って別れたのは朝。
 当然、勝って決勝へのコマを進めた。
 時間に余裕ができたのでトレーニングでもしようかというところで、カナダ・プレイスへマリオが駆けこんできた。

「オゥ、シャドウ!ウィスラー・スライディングセンターで怪我人が出たらしいよ!」
「んなっ!? 誰が・・・」
「ボブスレーはまだ競技中だから、きっとスケルトンだね。クッパを見なかったかい?」
「彼ならまだホッケーの会場に・・・」

 答えながらも気はそぞろ。つま先が勝手に動き出す。
 二重扉を越えてホールの外へ出ると、朝の氷雨はパウダースノーに変わっていた。
 体は寒いと訴えるけれど、頭は混乱して熱いほど。
 除雪された道を走って走ってウィスラーまでたどり着く。
 強風が収まるのを待っているのか、スキージャンプはまだ始まっていなかった。長めのスキーを担いだテイルスとすれ違ったけれど、シャドウはかける言葉も出なかった。
 報道や、応援のチャオたちを避けて走って、ようやくスライディングセンターの医務室の扉を叩くように開いた。

「ソニック!」
「Hey, Shadow. 静かにしろよ。怪我人がいるんだぜ?」

 薄いグリーンのパーテーションの向こうから声がする。影が動くのを待っていられない。
 部屋に掛け込んだ勢いで、パーテーションをがらりと動かした。
 そこにいたのは、苦笑して座ってるソニックと。

「キミじゃ、なかったのか」
「おいおい、ホッとするなよ。よくないだろ? クッパは?」
「マリオが呼びに・・・行った」
「そっか」

 ベッドに寝かされてるのは小さな体。
 クッパjr.だった。
 治療がうまくいったのか、スヤスヤ?時折可愛らしいいびきが聞こえる。

「コースが凍りすぎててさ、ゴール直前で転んじまったんだよ。いいタイムだったのに惜しかった。って、クッパに言ってやらなくちゃな」
「キミは、無理しなかったんだろうな」
「無理せず予選3位のタイムさ。まずまずだろ?」

 部屋の外、廊下の遠くからズシズシと激しい足音が近づいてくる。雄叫びも聞こえる。
 シャドウは医務室を出た方がいいだろう。
 が、その前に、クッパjr.に付き添っているソニックに、一瞬だけど深く口づける。

 クッパjr.には悪いけれど、怪我をしたのがソニックでなくて良かった。

 そう、声に出さず、想いだけを込めたキス。
 ちゃんと通じて、ソニックがヘラリと笑う。

「過保護」

 ばばーん! と医務室の扉が開いた。










クッパとクッパjr.好きーvvv シャドウは早とちりさんなのですw

2009.11.12


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